第3節 事業承継を契機とした労働生産性の向上
事業承継ガイドライン1によると「後継者の育成期間も含めれば、事業承継の準備には5年~10 年程度を要することから、平均引退年齢が 70歳前後であることを踏まえると、60歳頃には事業承継に向けた準備に着手する必要がある。」となっており、本節においては60歳以上の経営者に着目し、分析を行う。
1 中小企業庁が2016年12月に策定した「事業承継ガイドライン」とは、中小企業経営者の高齢化の進展等を踏まえ、円滑な事業承継の促進を通じた中小企業の事業活性化を図るため、事業承継に向けた早期・計画的な準備の重要性や課題への対応策、事業承継支援体制の強化の方向性等について取りまとめたものである。
また、2017年版中小企業白書によると、小規模事業者の親族内承継による交代後の経営者の平均年齢は47歳となっているため、50歳以下でかつ事業承継後5年未満の企業に着目し、上記の60歳以上の経営者と比較し分析する。
以上のことを踏まえて、事業承継を契機とした労働生産性向上について見ていく。
1 事業承継の意向と後継者
〔1〕年齢階級別に見た自営業主数
第2-4-7図は年齢階級別に見た自営業主数の推移を示している。2017年調査では「70歳以上」の経営者が最も多くなっている。2000年からの推移を確認すると、経営者の高齢化が進んでいることが顕著である。

〔2〕今後の事業承継の意向(60歳以上の経営者)
第2-4-8図は、60歳以上の経営者の、今後の事業承継の意向について見たものである。「承継の意向があり、承継時期等についても決まっている」とする割合は15.1%となっている。「承継の意向があり、承継時期等については検討中」は41.0%、「承継の意向はあるが、承継時期等についてはまだ考えていない」は26.2%となっており、承継の意向がある事業者の中でも、事業承継の準備度合いに差があることが分かる。他方、17.7%の事業者は「承継の意向がなく、廃業を考えている」と回答している。

〔3〕後継者の有無(60歳以上の経営者)
第2-4-9図は、60歳以上の経営者に後継者の有無について聞いている。後継者がいる割合は、69.6%となっている。

〔4〕後継者の有無(経営者年齢別)
第2-4-10図では、60歳以上の経営者に限らず、経営者の年齢別に後継者の有無について見ていく。経営者の年代が上がるほど、後継者がいる割合が増えていることが分かる。

〔5〕具体的な後継者(60歳以上の経営者)
第2-4-11図では、60歳以上の経営者のうち後継者がいる者に、具体的な後継者の属性について聞いている。小規模事業者の後継者は、およそ9割が「子ども」となっている。「子ども以外の親族」も合わせた親族内後継者の割合は95%を占め、小規模事業者においては親族内事業承継が大半であることが分かる。
