第3章 小規模事業者の設備投資による労働生産性の向上
本章では小規模事業者の設備投資の状況及び設備投資による労働生産性の向上について分析していく。一者当たりの設備投資額は小さな小規模事業者であるが、設備投資がどのように役立っているかを明らかにしていく。
第1節 小規模事業者の設備投資の現状
はじめに、小規模事業者の設備投資の現状について時系列で見ていく。中小企業庁「中小企業実態基本調査」を活用して、中規模企業、小規模事業者(法人)、小規模事業者(個人)に分けて分析していく。
1 小規模事業者の設備投資の推移
〔1〕設備投資実施企業数の推移
設備投資実施企業数の推移について見てみると、2012年以降、小規模事業者(法人)の設備投資実施企業数は増加傾向にある(第2-3-1図)。また、小規模事業者(個人)の設備投資実施企業数はすう勢的に低下傾向となっていたが、直近1年間で約1.4万者増加している。

〔2〕設備投資実施率の推移
設備投資実施率の推移について見てみると、直近では小規模事業者(法人)の設備投資実施率は増加傾向にある(第2-3-2図)。

〔3〕設備投資実施額の推移
設備投資実施額の推移について見てみると、小規模事業者(法人)の設備投資額は2012年以降、増加傾向となっている。他方で、小規模事業者(個人)については低調な状況が続いている(第2-3-3図)。

〔4〕小規模事業者(法人)の投資種類ごとの設備投資額の推移
続いて、設備投資額の推移を投資の種類ごとに詳しく分析していく。第2-3-4図は、小規模事業者(法人)の投資種類ごとの設備投資額の推移を見たものである。直近4年間は「機械装置」、「船舶、車両運搬具、工具・器具・備品」が増加傾向にある。

〔5〕中規模企業(法人)の投資種類ごとの設備投資額の推移
第2-3-5図は、中規模企業(法人)の投資種類ごとの設備投資額の推移を見たものである。直近4年間は「建物・構築物」、「機械装置」、「船舶、車両運搬具、工具・器具・備品」が増加傾向である。

〔6〕小規模事業者(法人)の投資目的別の設備投資額の推移
第2-3-6図は、小規模事業者(法人)の投資目的別の設備投資額の推移を見たものである。足元で最も多い目的は「既存事業部門の売上増大」となっている。次いで「既存建物・設備機器等の維持・補修・更新」が多い。また、直近3年間は「省力化、合理化」が増加傾向となっている。

〔7〕中規模企業(法人)の投資目的別の設備投資額の推移
第2-3-7図は、中規模企業(法人)の投資目的別の設備投資額の推移を見たものである。最も多い目的は「既存建物・設備機器等の維持・補修・更新」となっているが、近年「省力化・合理化」、「新規事業部門への進出・事業転換・兼業部門の強化など多角化」等は増加傾向となっている。

〔8〕設備投資実施企業一者当たりの設備投資額推移
設備投資実施企業一者当たりの設備投資額で見ると、中規模企業に比べ小規模事業者は低い水準になっている(第2-3-8図)。特に小規模事業者(個人)は額が小さくなっている。
