2 従業員数過不足DIの比較
前項では、人口減少し高齢化が進む中で、規模の小さい企業は特に求人を増やしているがなかなか雇用に結びついていない状況であることが分かった。本項では、小規模事業者と中規模企業を比較して、従業員の過不足の推移を見ていく。
〔1〕従業員数過不足DI(全産業)
小規模事業者は2010年の第三四半期以降人手不足の状況が続いており、人手不足感は徐々に強まってきている(第2-1-5図)。2013年以降は小規模事業者よりも中規模企業の方が従業員の不足感が強くなった。中小企業全体で人手不足感が強まってきていることが分かる。

〔2〕従業員数過不足DI(建設業)
建設業は、2011年より小規模事業者の人手不足感が徐々に強まっており、直近まで不足超の状態が続いている(第2-1-6図)。2013年以降は小規模事業者よりも中規模企業の方が従業員の不足感が強い状況が続いている。また、建設業は他の業種に比べ人手不足感の程度が強い傾向がある。

〔3〕従業員数過不足DI(製造業)
製造業においても2011年の第三四半期より不足に転じ、以降、徐々に小規模事業者の人手不足感が深刻化している(第2-1-7図)。直近1年程度は小規模事業者よりも中規模企業の方が従業員の不足感が強い。

〔4〕従業員数過不足DI(小売業)
小規模事業者において2007年以降は人手不足の状況が継続している(第2-1-8図)。小売業について直近4年程度は、小規模事業者に比べ中規模企業の方が従業員の不足感が強まってきている。

〔5〕従業員数過不足DI(サービス業)
サービス業において、小規模事業者は2010年以降徐々に人手不足感が強まってきている(第2-1-9図)。また、直近6年程度は小規模事業者に比べ中規模企業の方が従業員の不足感が強い。

ここまで各業種の人手不足感について、「中小企業景況調査」より見てきたが、いずれの業種も小規模事業者の人手不足感は強まってきている。また、小規模事業者と中規模企業を比べた場合、直近では中規模企業の方が、人手不足感が強まっている。この背景として、後述するように、小規模事業者においては、人手不足の状況に対して、経営者の労働時間を増やすことで対応する傾向にあることも要因の一つにあると考えられる。小規模事業者を含む中小企業全体として人手不足の状況がひっ迫してきているといえる。