第1章 小規模事業者の人手不足と業務の見直し
第1部では、小規模事業者の業況は回復傾向だが大企業や中規模企業に比べて利益等が伸び悩んでいること、小規模事業者には多様性があること、小規模事業者の中にも大企業を上回る労働生産性を有している者がいることを示した。
第2部では、小規模事業者の人手不足の状況を概観した上で、小規模事業者の労働生産性向上に向けた取組について、ITの利活用、設備投資、企業間連携及び事業承継に分けて見ていく。深刻化する人手不足下で付加価値を維持・向上させるためには、小規模事業者でも生産性向上を図ることが必要である。第1部でも用いた、「小規模事業者等の事業活動に関する調査」の結果をもとに、各種統計を併用しながら分析する。
人口減少や高齢化等の構造変化の中で、小規模事業者の人手不足感は高まっている。本章では、小規模事業者が人手不足にどのように対応し、厳しい状況の中でやり繰りをしているのかを明らかにする。加えて、業務を効率化するための経営者の意向も確認していく。
第1節 小規模事業者の人手不足の状況
本節では、人手不足の状況について全体感を示した上で、小規模事業者と中規模企業の従業員数過不足DIの比較を行い、小規模事業者の人手不足感を見ていく。
1 人手不足に関連する統計
〔1〕年齢別人口推計の推移
はじめに、我が国の総人口の推移及び年齢別構成比を確認する(第2-1-1図)。我が国の総人口は1950年以降増加を続けていたが、2010年を境に減少に転じ、今後も減少傾向が続くことが予想される。将来的には74歳以下の人口は減少を続け、75歳以上の人口増加が顕著になっていくことが予想される。

〔2〕事業所規模別新規求人数の推移
事業所の規模別に求人数の推移を確認する(第2-1-2図)。これを見ると、2009年に全ての従業者規模で求人数が落ち込んだあと、比較的規模が小さい企業において求人数を増やしていることが分かる。

〔3〕従業者規模別雇用者数の推移
従業者規模別の企業の雇用者数の推移について、直近の20年間で従業者規模が1~29人の企業と500人以上の規模の企業について着目して見ると、当初は両者の雇用者数はともに横ばいで推移していたが、2000年代に入るにつれて従業者規模が1~29人の企業の雇用者数は減少傾向に、500人以上の企業は増加傾向に転じ、2014年以降は雇用者数が逆転している(第2-1-3図)。年々規模の大きな企業に人が流れていることが推察される。

〔4〕従業員規模別高校卒業者の充足率の推移
続いて、従業員規模別に見た、高校卒業者の充足率の推移を確認する(第2-1-4図)。5年間でいずれの規模の企業においても高校卒業者の充足率は減少傾向にあるが、特に従業員が29人以下の企業については充足率の減少が著しく、足下では求人数の5分の1程度しか充足できていないことが分かる。
