第1部 平成29年度(2017年度)の小規模事業者の動向

3 投資

中小企業の経営環境が良好に推移している一方で、中小企業の設備投資について見てみると、リーマン・ショック後の2009年に大きく落ち込んだ後、しばらく伸び悩んでいたが、2013年に入ると緩やかに投資額が伸びはじめている(第1-1-10図)。ただし、足下の中小企業の設備投資の増加は、設備年齢の上昇を背景とした更新投資の増加が中心と考えられる。

第1-1-10図 企業規模別設備投資の推移
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続いて中規模企業と小規模事業者の設備投資の推移について、財務省「法人企業統計調査年報」を用いて確認すると、中規模企業と小規模事業者で設備投資の額に差はあれど、おおむね同様の動きで推移していた(第1-1-11図)。ところが、足下について見ると、中規模企業の設備投資額は引き続き伸びている一方で、小規模事業者については2014年度をピークに減少傾向で推移しており、中規模企業との差が広がりつつある様子がうかがえる。

第1-1-11図 中規模企業・小規模事業者の設備投資の推移
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次に設備を新設してからの経過年数を示す設備年齢の推移を確認する。中小企業と大企業の設備年齢がほぼ同水準だった1990年度の設備年齢指数をそれぞれ100としてその推移を見てみると、足下の2016年度において大企業の設備年齢指数は148.6と1990年度から約1.5倍老朽化しているのに対し、中小企業の設備年齢指数は194.1と約2倍老朽化しており、大企業よりも設備の老朽化が進んでおり、中小企業の設備投資が限定的なものに留まるが故に設備年齢の差も埋まらないことが分かる(第1-1-12図)。

第1-1-12図 企業規模別設備年齢の推移(指数)
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ここで設備の不足感を見るべく企業規模別に製造業の生産・営業用設備判断DIの推移を確認すると、製造業は中規模企業、小規模事業者ともに2009年をピークに以降は徐々に設備の過剰感が解消され、足下の2017年に入るとかえって不足感が強まる状況となった。小規模事業者について見ると、中規模企業に比べ全体的に不足感が強く、2013年第2四半期以降は一貫して設備が「過剰」と答えた割合を「不足」と答えた割合が上回っている。2017年に入ると、中規模企業と小規模事業者の差はほぼ無くなり、全体的に設備の不足感が強まっていることが分かる(第1-1-13図)。

第1-1-13図 中規模企業・小規模事業者の生産設備DIの推移(製造業)
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中小企業が設備投資の実施を判断する上では、自社の事業について将来的な成長を見通せることが重要であるが、事業の見通しは業界全体の成長見通し(期待成長率)にも影響を受けるものと考えられる。そこで、期待成長率と設備投資の関係について見ていく。第1-1-14図は、中小企業の設備投資営業キャッシュフロー比率と期待成長率の推移を見たものであるが、投資の積極性を示していると考えられる設備投資営業キャッシュフロー比率は、期待成長率に連動して推移していることが分かる。期待成長率は1992年以降緩やかに減少した後、足下では横ばいで推移しており、設備投資が力強さに欠ける要因の一つとして、期待成長率の低迷によって中小企業が事業の先行きを見通せないことがあると考えられる。

第1-1-14図 中小企業の設備投資営業キャッシュフロー比率と期待成長率の推移
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また、IT関連指標として中小企業のソフトウェア投資額及び投資比率について見ていくと、ソフトウェアを除く設備投資全般が伸び始めた2013年以降も中小企業のソフトウェア投資額は数年横ばい傾向にあったが、2016年後半から緩やかに伸び始め、また、投資比率について見ても大幅に伸び始めていることが分かる(第1-1-15図)。ただし、足下のソフトウェア投資額については大企業の3分の1に満たず、また投資比率については大企業の2分の1程度であり、大企業との差は依然として存在する。

第1-1-15図 ソフトウェア投資額・ソフトウェア投資比率の推移
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