第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命

3 M&A実施企業の実態

以下では、「成長に向けた企業間連携等に関する調査8」のアンケート調査結果(以下、「アンケート結果」という。)を用いて、M&A実施企業の実態について見ていく。

8 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が2017年11月に中小企業30,000社を対象に実施したアンケート調査(回収率14.9%)。本調査では、サービス業で売上高5億円以上、その他業種で売上高10億円以上を対象としており、比較的規模の大きい企業の調査結果であることに留意が必要である。

〔1〕M&Aの実施状況

はじめに、過去のM&Aの実施状況について見てみると、中小企業において実際にM&Aを実施したことがある企業の割合は、11.6%と現状多くはないことが分かる(第2-6-11図)。

第2-6-11図 M&Aの過去の実施状況
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次に、M&Aの実施件数について見ると、「1件」が最も多いものの、複数回実施している企業が約4割を占めている(第2-6-12図)。

第2-6-12図 M&Aの実施件数
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直近のM&Aの実施時期について見ると、「2015年以降」が最も多く、足もとでM&Aが盛んになっていることがうかがえる(第2-6-13図)。前項で見た各種データの傾向と整合的である。

第2-6-13図 M&Aの実施時期
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次に、M&Aの実施形態について見ていくと、事業譲渡が41.0%と最も多く、次いで株式譲渡が40.8%となっている(第2-6-14図)。M&Aを事業譲渡で実施した理由について見てみると、「取得したい資産や従業員、取引先との契約を選別できた」や「簿外債務の引継ぎや想定外のリスクを回避できた」と回答する者が多く、M&Aのリスクをコントロールする手法として、活用されていることがうかがえる。

第2-6-14図 M&Aの実施形態
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続いて、M&A資金の調達方法について見ていくと、「会社の自己資金」が49.5%と最も多く、次いで「金融機関からの借入」が42.3%となっている(第2-6-15図)。買収企業(事業)が当初想定どおりの収益確保ができないこと(下振れ)を懸念し、あえて金融機関からの借入を行わず、自己資金で行う企業も多いと推察される。

第2-6-15図 M&A資金の調達方法
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次に、M&Aの実施目的を実施時期別に見ていく(第2-6-16図)。「売上・市場シェアの拡大」が最も多く、次いで「事業エリアの拡大」となっており、付加価値向上を企図してM&Aを行う企業が多いことがうかがえる。他方で、実施時期の違いに着目すると、「2009年以前」では「経営不振企業の救済」を挙げる企業の割合が高く、「2015年以降」では「新事業展開・異業種への参入」を挙げる企業の割合が高くなっている。

第2-6-16図 M&Aの実施時期別に見た、M&Aの実施目的
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〔2〕M&Aをした相手先の状況

ここからは、M&Aの相手先について見ていく。はじめに、M&Aの相手先を見付けたきっかけについて見ていくと、「第三者から相手先を紹介された」という割合が42.3%を占めており、その内訳を見ていくと、「金融機関」や「他社(仕入先・協力会社)」、「専門仲介機関」が多いことが見て取れる(第2-6-17図)。他方で、「相手先から直接売り込まれた」という企業も30.2%おり、「自社で相手先を見付けた」という企業と合わせると、相対でのM&Aの実施も多いことが分かる。

第2-6-17図 M&Aの相手先を見付けたきっかけ
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次に、M&Aの相手先の経営者年齢について見ていくと、「60歳代」が48.5%と最も多く、「70歳以上」と合わせると67.2%を占めている(第2-6-18図)。

第2-6-18図 M&Aの相手先の経営者年齢
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この相手先の経営者年齢別に、相手先のM&Aの目的を見ていくと、相手先経営者の年齢が「60歳代」や「70歳以上」の場合、「事業の承継」を目的とする割合が最も高くなっている(第2-6-19図)。経営者が高齢となり、後継者不在の企業でM&Aが活用されていることがうかがわれる。他方、経営者年齢が「40歳代以下」の場合は、「事業の成長・発展」を目的としてM&Aを行う割合が他の年代よりも高くなっており、事業承継ではなく企業の成長戦略としてM&Aが活用されていることがうかがえる。

第2-6-19図 M&Aの相手先経営者年齢別に見た、相手先のM&Aの目的
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