第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命

2 中小企業の経営者の高齢化と事業承継

次に、M&Aの売り手の背景にある中小企業の経営者の高齢化と事業承継について見ていく。

〔1〕中小企業の経営者の高齢化

中小企業の経営者年齢の分布について見てみると1995年の経営者年齢のピークが47歳であったのに対して2015年の経営者年齢のピークは66歳となっており、経営者年齢の高齢化が進んでいるといえる(第2-6-2図)。

第2-6-2図 年代別に見た中小企業の経営者年齢の分布
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次に、休廃業・解散企業の経営者年齢構成比について見てみると、経営者年齢の高齢化を背景に、「70代」、「80代以上」の経営者年齢の割合が高くなっていることが見て取れる(第2-6-3図)。こうした企業には、経営者の高齢化や後継者不在により、休廃業・解散を選択した可能性が一定程度考えられる。

第2-6-3図 休廃業・解散企業の経営者年齢構成比の変化
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〔2〕中小企業の事業承継

経営者の高齢化が進む一方で、中小企業の経営者の引退時期は68歳から69歳と推察3され、引退とともに次の経営者(後継者)へ事業を承継していくこととなる。こうした後継者の有無について、(株)帝国データバンクの調査結果を見てみると、経営者が高齢の企業においても、後継者が不在の企業が一定割合いることが分かる(第2-6-4図)。60歳以上の経営者においては、48.7%が後継者不在であることが読み取れる。

3 2017年版中小企業白書では、(株)東京商工リサーチの企業データベースを用いて経営者交代前後の経営者年齢について分析している。それによると、親族内の場合で交代前の平均年齢が69.3歳、親族外の場合で交代前の平均年齢が63.7歳であった。加えて、休廃業・解散企業の経営者年齢の平均年齢が68.4歳であった。

第2-6-4図 社長年齢別に見た、後継者決定状況

こうした後継者・後継者候補のいない企業においては、M&Aも事業承継のために一つの選択肢となっている4。こうした中小企業の事業承継がM&Aを活用する背景の一つとなっているといえる。

4 2017年版中小企業白書では、後継者候補がいない中規模法人では、「事業を継続させるためなら事業の譲渡・売却・統合(M&A)を行っても良い」と考えている割合が33.3%に上り、後継者・後継者候補がいる中規模法人の20.2%に比べて高いことを示している。

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