第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命 

第3節 人材育成の取組

中小企業が人手不足に対処していくためには、第1節や第2節で見た労働投入量を節約するという工夫に加え、人材育成・能力開発を通じて、従業員が生み出す付加価値を向上させていくことが必要となる。本節では、厚生労働省「平成28年度能力開発基本調査」及び(独)労働政策研究・研修機構における調査結果を用いて、中小企業における人材育成の取組を捉えていく。

1 人材育成の取組の現状

〔1〕OJT・OFF-JT・自己啓発費用支援の取組状況

企業による従業員の育成の手段としては、日常の業務に就きながら行われる教育訓練である「OJT」と、業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)である「OFF-JT」がある。また、労働者が職業生活を継続するために、職業に関する能力を自発的に開発し向上させるために行う「自己啓発」に対する費用の支援も方法として考えられる。まずは、OJTとOFF-JTの取組の実態を確認する。

第2-3-15図は、厚生労働省「平成28年度能力開発基本調査」を用いて、企業がOJTとOFF-JTのいずれを重視しているかを、企業規模別に確認したものである。これを見ると、「OJTを重視する」及び「OJTを重視するに近い」の回答で大半が占められており、企業側がOJTを重視していることが示唆されている。他方で、「OFF-JTを重視するに近い」、「OFF-JTを重視する」についても、双方の回答を合わせると20%を超えており、OFF-JTを重視する企業が一定数存在することが見て取れる。

第2-3-15図 企業規模別に見た、重視する教育訓練
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ここで、(独)労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査結果(企業調査)」を用いて、日常の業務の中で、従業員に仕事を効果的に覚えてもらうために行っている取組(以下、「OJT」という。)の内容を、各企業における「うまくいっている」、「うまくいっていない」の評価別に確認する。第2-3-16図を見ると、OJTが「うまくいっている」企業が行っていることとして、「とにかく実践させ、経験させる」が最も回答割合が高くなっていることが見て取れる。また、「仕事のやり方を実際に見せている」や「仕事について相談に乗ったり、助言している」については、OJTが「うまくいっている」と感じている企業の割合が、「うまくいっていない」と感じている企業と比較して高くなっていることが分かる。

第2-3-16図 OJTの実施における効果の実感別に見た、具体的な取組方法
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次に、OFF-JTの取組状況について概観していく。第2-3-17図は、企業側が実施したOFF-JTの内容について見たものである。「新規採用者など初任層を対象とする研修」が、企業規模に関わらず最も高い回答割合となっている。また、「マネジメント(管理・監督能力を高める内容など)」、「新たに管理職となった者を対象とする研修」等、中核人材の育成に係る内容においては、規模が「100~299人」の企業において実施割合が高くなっていることが分かる。

第2-3-17図 企業規模別に見た、実施したOFF-JTの内容
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第2-3-18図は、OFF-JTの実施費用の増減状況について、過去3年間の実績及び今後3年間の見込みを、企業規模別に確認したものである。これを見ると、いずれの規模においても、過去3年間と比べて、今後3年間のOFF-JT実施費用を増加する企業の割合が増えていることが分かる。人材育成・能力開発においてOFF-JTの必要性が増してきているものと推察される。

第2-3-18図 企業規模別に見た、OFF-JT費用における過去3年間の実績及び今後3年間の見込み
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次に、自己啓発の取組について分析を行っていく。第2-3-19図は、従業員の自己啓発実施費用に係る企業側の支援状況について、過去3年間の実績及び今後3年間の見込みを、企業規模別に確認したものである。これを見ると、過去3年間と比べて、今後3年間の自己啓発支援費用を増加する企業の割合が増えていることが分かる。OFF-JTと同様に、人材育成・能力開発における自己啓発の必要性が高まってきていることが示唆されている。

第2-3-19図 企業規模別に見た、自己啓発支援費用における過去3年間の実績及び今後3年間の見込み
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第2-3-20図は、自己啓発を行った者が実施した取組を確認したものである。最も回答が多かったのが、「ラジオ、テレビ、専門書、インターネットなどによる自学、自習」となっている。他方で、「公共職業能力開発施設の講座の受講」、「専修学校、各種学校の講座の受講」、「高等専門学校、大学、大学院の講座の受講」については低い割合にとどまっており、学校等における講座受講といった形の自己啓発は一層の取組の余地があるものと推察される。

第2-3-20図 自己啓発の実施方法
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〔2〕人材育成の課題

人材育成・能力開発を行う際に感じている課題を企業規模別に確認したものが第2-3-21図である。規模が大きくなるほど、「指導を行う人材が不足している」といった、教える側の人材不足の課題を抱える企業の割合が高くなっている。他方で、規模が小さくなるほど、「鍛えがいのある人材が集まらない」といった、教えられる側の人材不足の課題を抱えている企業の割合が高くなっていることが見て取れる。ひとえに人材育成・能力開発における課題といっても、規模によって、抱えている課題に違いがあることが分かる。

第2-3-21図 企業規模別に見た、人材育成・能力開発を行うに当たっての課題
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