第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命

第4節 まとめ

本章では第1節において、中小企業において深刻化する人手不足の現状について概観した。中小企業では各業種にわたり人手不足感が強くなってきており、求人難が各企業の経営課題として占める割合が増えてきている。そして、特に規模の小さい企業において人材の充足率が低くなっていることが見て取れた。

第2節においては、このような人手不足の背景として、我が国の生産年齢人口の減少や少子高齢化といった構造的な問題が存在することを確認した。そのため、人手不足の状況は今後も継続すると予想されるものの、この状況下において、女性・シニアといった多様な人材の労働力人口が増加することで、生産年齢人口の減少分を緩和しているということが分かった。人手不足の状況が続く中において、女性・シニアの活用が今後ますます重要となってくることが推察される。

他方で、労働力としての女性・シニアを掘り起こすためには、企業側が柔軟な勤務体系の提供や、求人の年齢幅を広げるなどの工夫を行うことが必要と分かった。このような取組により、今後、労働力人口を一層増やすことで人手不足に対応していくことが期待される。

そして、第3節においては、人手不足の状況下における中小企業の対応について概観した。中小企業では、人手不足感が強い企業ほど、女性・シニアの活用を積極化しており、そのような企業では勤務時間の柔軟化等の職場環境の整備に力を入れていることが見て取れた。また、人手不足感が強い企業においては、既存の考えに捉われずに、女性・シニアの業務範囲を拡大していることも分かった。

人手不足の中、企業側が希望する人材を十分に確保することは、非常に難しい状況となってきているものの、各中小企業が女性・シニア等の潜在的な労働力の掘り起こしや、既存従業員の働き方の工夫を行うことにより、人手不足の解消、そして我が国全体の労働力人口の増加に寄与することが期待されよう。

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