第1部 平成29年度(2017年度)の中小企業の動向

第3節 まとめ

本章では、生産性の変化を6類型に類型化し、この10年間における中小企業の生産性の類型がどのように変化をしたかを分析した。その結果、中小企業においては、従業員数の伸び率より付加価値額の伸び率が大きい、労働生産性を向上させた領域〔1〕の「効率的成長」に分類された企業が約21%見られたが、一方で、従業員の減少率より付加価値額の減少率が大きい、労働生産性を低下させた領域〔4〕の「衰退」に分類された企業も約25%存在することが確認された。

次に、アンケート調査をもとに、前半期間から後半期間を経て類型がどのように変化したかを分析した。企業が領域〔1〕の「効率的成長」に向けて変化する際に、どの6類型に分類されているかによって、それぞれ投資行動や経営の取組が異なることが示された。従業員が減少し、付加価値額も減少していた領域〔3〕の「縮小」や領域〔4〕の「衰退」に分類されていた企業においては、IT投資やアウトソーシング、また機械・設備投資や研究開発を行っていること、一方で従業員が増加するものの、付加価値額が減少していた領域〔5〕の「非効率」や労働生産性が低下していた領域〔6〕の「非効率成長」の企業においては、人材育成や業務効率化に取り組んでいることが確認された。

また、機械・設備投資やIT化投資、人材育成、業務効率化等の企業行動は、経営を見据える年数が長期間であるほうが取組を行う割合が高いこと、さらには、取締役会の開催や経営計画の策定、管理会計の取組を行っているほうがこれらの企業行動に取り組む割合が高いことが示された。

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