平成29年度において講じようとする小規模企業施策

平成29年度において講じようとする小規模企業施策

平成26年6月20日に成立した小規模企業振興基本法においては、小規模事業者の事業の持続的発展との基本原則にのっとり、小規模企業の振興に関する施策を講じる際の四つの基本方針を定めている。


<基本方針>

  1. 国内外の多様な需要に応じた商品の販売又は役務の提供の促進及び新たな事業の展開の促進を図ること。
  2. 小規模企業の経営資源の有効な活用並びに小規模企業に必要な人材の育成及び確保を図ること。
  3. 地域経済の活性化並びに地域住民の生活の向上及び交流の促進に資する小規企業の事業活動の推進を図ること。
  4. 小規模企業への適切な支援を実施するための支援体制の整備その他必要な措置を図ること。

これら四つの基本方針の実現に向け、「小規模企業振興基本計画(平成26年10月3日閣議決定)」において、四つの目標を設定している。

(1)需要を見据えた経営の促進

(2)新陳代謝の促進

(3)地域経済の活性化に資する事業活動の推進

(4)地域ぐるみで総力を挙げた支援体制の整備


以下では、上記四つの目標に取り組むために、平成27年度において講じた小規模企業施策を紹介していく。


第1章 需要を見据えた経営の促進

<小規模企業振興基本計画における目標(1)>

(1)需要を見据えた経営の促進
-顔の見える信頼関係をより積極的に活用した需要の創造・掘り起こし-


小規模企業は、人口減少や生活様式の変化などの我が国経済社会の構造変化による需要の減少に直面している。加えて、資金、人材、商品開発力などの経営資源の制約から、価格競争力や販売力が弱く、構造変化の影響を受けやすいという性質を有している。

他方で、顔の見える信頼関係に基づいた取引が強みであるため、大企業が応えきれていないニーズを捉え、価格競争に巻き込まれない様々な商品・サービスを開発・提供することにより、国内外の新たな需要を開拓する潜在的な対応力を有している。さらに、ITの普及に伴い、規模が小さな企業であってもこれまでの商圏を越えて活躍する可能性は拡大している。こうした小規模企業の構造変化への“潜在的な対応力”を最大限に発揮するため、自らの強みを把握した上での需要の創造や掘り起こし、ITのさらなる活用、新たな商品・サービスの開発・提供など、需要を見据えた計画的な経営を促進する。

第1節 生産性向上・技術力の強化

1.戦略的基盤技術高度化支援事業【29年度予算:130.0億円】

中小ものづくり高度化法の計画認定を受けた中小企業・小規模事業者が大学、公設試等の研究機関等と連携して行う研究開発等に関する取組を支援する。また、中小企業等経営強化法に基づいて認定された異分野連携新事業分野開拓計画に従って行う中小企業・小規模事業者が、産学官連携して行う新しいサービスモデルの開発等を支援する。(継続)

2.産業技術総合研究所における中堅・中小企業への橋渡しの取組【産業技術総合研究所運営費交付金の内数】

国立研究開発法人産業技術総合研究所において、地域の中堅・中小企業のニーズ等を把握している公設試験研究機関に産総研のイノベーションコーディネータを配置する等の全国規模の連携体制を構築し、地域企業の有する革新的な技術シーズを事業化につなぐ「橋渡し」機能の強化に取り組み、中堅・中小企業等の研究開発を支援する。(継続)

3.中小企業のものづくり基盤技術の高度化に向けた総合支援

中小ものづくり高度化法に基づき、高度化指針に沿った特定研究開発等計画について認定を行い、計画が認定された中小企業・小規模事業者に対して戦略的基盤技術高度化支援事業や、融資、保証の特例等により総合的な支援を実施する。(継続)

4.研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)【税制】

平成29年度税制改正において、中小企業者等について、試験研究費の総額に応じて税額控除を認める「総額型」を試験研究費の増加割合に応じた税額控除率(12%~17%)とする仕組みへ見直す(大企業は6%~14%)とともに、試験研究費の増加割合が5%を超える場合には税額控除の上限を10%上乗せする措置を講ずる。さらに、税額控除の対象となる試験研究費に、第4次産業革命型の「サービス開発」を支援対象に追加する。また、特別試験研究費(大学、国の研究機関、企業等との共同・委託研究等の費用)の総額に係る税額控除制度、試験研究費の額が平均売上金額の10%相当額を超える場合に、その超過額に一定の割合を乗じた額を控除できる制度等を引き続き講じる。(継続)

5.中小企業技術革新制度(SBIR制度)に基づく支援

新産業の創出につながる新技術開発のための特定補助金等の指定、支出の目標額、特定補助金等を利用して開発した成果の事業化支援措置等の方針の作成等により、引き続き国の研究開発予算の中小企業・小規模事業者への提供拡大、及び技術開発成果の事業化を図る。さらに、技術開発成果の事業化を促進するため、特定補助金等の採択企業の技術力をPRするデータベースや株式会社日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という。)による低利融資等の事業化支援措置を中小企業・小規模事業者等に周知し、利用促進を図るとともに、特定補助金等への多段階選抜方式の導入拡大を図る。(継続)

6.異分野連携新事業分野開拓

中小企業等経営強化法に基づき、異分野の中小企業が連携し、その経営資源(技術、販路等)を有効に組み合わせて行う新商品・新サービスの開発・販売等の事業計画に対して認定を行い、補助金による支援を行うとともに、融資、保証の特例などにより総合的な支援を実施する。(継続)

7.医工連携事業化推進事業【29年度予算:34.5億円】

医療機器開発支援ネットワークを推進し、開発初期段階から事業化に至るまでの切れ目ない支援として伴走コンサルを実施する。また、ものづくり中小企業や医療機関等の連携による医療機器開発を促進するため、平成29年度は開発・事業化事業において40件程度の医療機器実用化を支援する。(継続)

8.企業活力強化資金(ものづくり法関連)【財政投融資】

中小商業者・サービス業者等の経営の近代化及び流通機構の合理化、中小企業者のものづくり基盤技術の高度化の促進並びに下請け中小企業の振興を図るため、日本公庫が必要な資金の貸付を行う。(継続)

9.中小企業等経営強化法

引き続き、中小企業等経営強化法に基づいて経営力向上計画を策定し認定された企業に対し、固定資産税の軽減措置や、日本公庫の融資制度(設備資金については基準利率から金利を0.9%引下げ)等、税制面や金融面での支援を行う。さらに、固定資産税の軽減措置については、平成29年度税制改正にて、地域・業種を限定した上で、その対象に、器具・備品と建物付属設備を加えることとした。(継続)

10.中小企業経営強化税制【税制】

中小企業等経営強化法の計画の認定を受けた中小企業が経営力向上設備等を取得した場合に、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超の法人の税額控除は7%)ができる措置。平成29年度税制改正において新たに創設される。(新規)

第2節 IT化の促進

1.IT活用促進資金【財政投融資】

平成29年度からは、セキュリティ投資が進んでいないことに鑑み、IT投資と同時に情報セキュリティ対策を講じる者に対して、低利での融資を実施する。(継続)

第3節 販路・需要開拓支援

1.小規模事業対策推進事業【29年度予算:49.4億円】

小規模支援法に基づき認定を受けた「経営発達支援計画」に沿って商工会・商工会議所が取り組む伴走型の小規模事業者支援を推進し、小規模事業者の需要を見据えた事業計画の策定や販路開拓等を支援する。

また、地域の小規模事業者による全国規模の市場に向けた事業展開を促進するため、商工会・商工会議所等が事業者と協力して進める、特産品開発や観光開発及びその販路開拓等の事業に対し、幅広い支援を行う。(継続)

2.各種展示会や商談会等による販路開拓支援【中小機構交付金の内数】

中小企業・小規模事業者が農商工連携や地域資源活用等により開発した商品・サービス等について、独立行政法人中小企業基盤整備機構(「以下「中小機構」という。)が展示会や商談会等の開催を通じて、販路開拓・拡大を支援する。(継続)

3.販路開拓コーディネート事業【中小機構交付金の内数】

中小企業者等が新商品・新技術・新サービスについて、首都圏・近畿圏におけるテストマーケティング活動の実践を通じ、新たな市場への手がかりを掴むとともに、販路開拓の力をつけることを中小機構に配置されている商社・メーカー等出身の販路開拓の専門家(販路開拓コーディネーター)が支援する。(継続)

4.販路開拓サポート支援事業【中小機構交付金の内数】

中小機構が、自ら主催する展示会またはそれらの同時開催展等に出展する企業に対し、バイヤーの招聘や販路開拓のアドバイス等を行うことにより、マッチングを促進し、中小・ベンチャー企業の販路開拓を支援する。(継続)

5.新事業創出支援事業【中小機構交付金の内数】

中小機構の全国10支部・事務所にマーケティング等に精通した専門家を配置し、中小企業新事業活動促進法、中小企業地域産業資源活用促進法、農商工等連携促進法に基づく事業計画の策定により、新事業に取り組む中小企業等に対して一貫してきめ細かな支援を行う。(継続)

6.J-GoodTech(ジェグテック)【中小機構交付金の内数】

中小機構が、優れた製品・技術・サービス等を有する日本の中小企業の情報をウェブサイトに掲載し、国内大手メーカーや海外企業につなぐことで、中小企業の国内外販路開拓を支援する。(継続)

第4節 海外展開支援

1.日本の中堅・中小企業とのグローバルアライアンス支援

日本の中堅・中小企業と外国企業との投資提携等を支援すべく、独立行政法人日本貿易振興機構(以下「JETRO」という)、中小機構、株式会社商工組合中央金庫(以下「商工中金」という。)、中小企業投資育成株式会社等の関係機関が連携したマッチング等の事業を引き続き推進する。(継続)

2.中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業【29年度予算:23.9億円】

中小企業・小規模事業者の海外展開を支援するため、JETROと中小機構が連携して、海外の市場動向や規制等の情報提供、実現可能性調査(F/S)、輸出体制の構築等を通じた企業発掘から、国内外の展示会出展支援や海外バイヤー招へい等を通じた海外販路開拓支援、経済連携協定に基づく原産地証明制度等の普及啓発等、現地進出後の支援まで海外展開の様々な段階におけるニーズに応じた施策によって戦略的に支援を行っていく。また、海外子会社の経営に課題を抱えている企業に対して、事業再編計画の策定等を支援する。(継続)

3.JAPANブランド育成支援事業【29年度予算:13.5億円の内数】

中小企業の海外販路開拓の実現を図るため、複数の中小企業が連携し、自らが持つ素材や技術等の強みを踏まえた戦略の策定や、当該戦略に基づいて行う商品の開発や海外見本市への出展等の取組を支援する。(継続)

4.海外展開・事業再編資金【財政投融資】

経済の構造的変化に適応するために海外展開または海外展開事業の再編を行うことが経営上必要な中小企業、もしくは海外展開事業の業況悪化等により、本邦内における事業活動が影響を受けている中小企業の資金繰りを支援するため、日本公庫による融資を実施していく。(継続)

5.海外子会社の資金調達支援等

中小企業経営力強化支援法に基づき、日本公庫が新事業活動促進法の経営革新計画の承認等を受けた中小企業者の海外子会社等の現地金融機関からの借入れに対して債務保証を実施する。(継続)

6.グローバルニッチトップ支援貸付制度【財政投融資】

特定分野に優れ、世界で存在感を示す中堅・中小企業(グローバルニッチトップ企業)やその候補となる中堅・中小企業等の戦略的な海外展開を支援するため、商工中金がグローバルニッチトップ支援貸付制度により、長期・一括返済・成功払いによる融資を行う。(継続)

7.技術協力活用型・新興国市場開拓事業【29年度予算:41.7億円の内数】

我が国企業の新興国市場獲得支援のため、以下3事業を実施。(継続)

〔1〕経営・製造・オペレーション等に従事する開発途上国の管理者・技術者等に対し、日本への受入研修、専門家派遣による指導等を支援する。

〔2〕中堅・中小企業において課題となっている海外展開を担う「グローバル人材」の不足を解決するため、日本の若手人材の海外インターンシップ派遣及び、日本企業への外国人のインターンシップ受入を実施する。

〔3〕開発途上国の社会課題を解決する製品・サービスの開発等に、開発途上国現地の大学・研究機関・NGO・企業等と共同で取り組む日本企業への補助を行う。

8.民間連携ボランティア制度の活用及び帰国JICAボランティアとのマッチング【29年度予算:1.6億円】

国際協力機構においては各企業のニーズに合わせ,社員を青年海外協力隊・シニア海外ボランティアとして途上国に派遣する民間連携ボランティア制度を活用し,グローバル社会で活躍できる人材の育成に努める。また,帰国したJICAボランティアの就職支援の一環として,特定の途上国を熟知した人材と企業が必要とする人材のマッチング促進を行う。(継続)

9.中小企業の貿易保険利用における企業信用調査料の減免措置

中小企業の貿易保険を活用した輸出支援のため、貿易保険を利用する際に必要な取引先の信用情報の提供について、株式会社日本貿易保険(以下NEXIという)がその費用を負担する措置を引き続き講じる。(継続)

10.中小企業による貿易保険の利用促進のための普及・広報活動(動画・漫画作成等)

貿易保険の紹介動画及び漫画冊子を引き続き、各展示会や説明会で公開、漫画冊子を配布し、貿易保険の普及啓発を行う。(継続)

11.中小企業による貿易保険の利用促進のための普及・広報活動(セミナー・相談会等)

中小企業による貿易保険の利用を促進するため、中小企業向けのホームページを刷新。引き続き、全国でNEXIが主催するセミナーや個別相談会を開催するとともに、中小企業関係機関等が主催するセミナーや提携地方銀行等の行員勉強会などにNEXIから講師を派遣し、貿易保険の普及啓発を行う。(継続)

12.貿易保険へのアクセス改善

中小企業の海外展開を支援するため、NEXIは、平成23年12月に地方銀行11行との提携による「中小企業海外事業支援ネットワーク」を発足した。提携機関は年々拡大し、また、平成25年には信用金庫も提携を行うことで信金ネットワークを構築。引き続き充実を図る。(継続)

13.安全保障貿易管理の支援

外国為替及び外国貿易法に基づく安全保障貿易管理の実効性向上のための説明会の開催や、中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業との連携による専門家派遣等を通じ、輸出や技術提供を行う中小企業における安全保障貿易管理に係る自主管理体制の整備を支援する。(継続)

14.BOPビジネスの推進【JETRO交付金】

途上国の成長市場を日本企業の成長戦略として取り組むことができるよう、BOP/ボリュームゾーン・ビジネスを推進する。具体的に、JETROでは、現地コーディネーターの活用などを通じ、事業フェーズに応じた一貫支援を行い、企業の個別支援を実施する。また、BOPビジネスを考える日本企業を対象とした国内相談会・商談会の他、受容性調査を通じたマーケティング支援、現地でのマッチング支援などを行い、BOP/ボリュームゾーン・ビジネスへの積極的な参入を促進する。さらに、アフリカに拠点を設立することを目指す企業を支援するための実証事業を継続して実施する。(継続)

15.基礎調査,案件化調査,普及・実証事業(中小企業製品・技術とODAのマッチング事業)【29年度予算:1,530億円の内数】

ODAにより、日本の中小企業等の優れた製品・技術等を途上国の開発に活用することで、途上国の開発と日本経済の活性化の両立を図ることを目的としている。(継続)

16.中小企業等の海外展開支援(中小企業製品を活用した機材供与)【29年度予算:1631億円の内数】

途上国政府の要望や開発ニーズに基づき、日本の中小企業の製品を供与することを通じ、その途上国の開発を支援するのみならず、中小企業の製品に対する認知度の向上等を図るもの。(継続)

17.新輸出大国コンソーシアム【28年度補正予算:1001.3億円の内数】

中堅・中小企業等の海外展開を支援するため、JETRO、中小機構、NEDO、金融機関などの支援機関を幅広く結集したコンソーシアムを設立。このコンソーシアムでは、専門家が企業に寄り添い、各種支援策を活用しつつ、技術開発から市場開拓まで、総合的に支援する。(継続)

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