第6章 業種別・分野別施策
第1節 中小農林水産関連企業対策
1.6次産業化の推進
(1)6次産業化ネットワーク活動交付金【28年度予算:20.3億円】
農林漁業者等が多様な事業者とネットワークを構築して行う新商品開発や販路開拓の取組及び農林水産物の加工・販売施設の整備等を支援した。また、市町村の6次産業化戦略に沿って行う地域ぐるみの6次産業化の取組を支援した。
(2)農林漁業成長産業化ファンドの積極的活用
農林漁業成長産業化ファンドを通じて、農林漁業者が主体となって流通・加工業者等と連携して取り組む6次産業化の事業活動に対し、出資等による支援を実施した。
(3)地理的表示等活用総合対策事業【28年度予算:1.7億円】
地理的表示(GI)保護制度に係る登録申請に対する支援及び普及啓発、GI等を活用した地域ブランド化とビジネス化の支援、我が国のGIマーク及び農林水産物・食品等の海外における知的財産の侵害対策強化に取り組んだ。
(4)農山漁村活性化再生可能エネルギー総合推進事業【28年度予算:1.0億円】
地域主導で再生可能エネルギーを供給する取組を推進し、そのメリットを地域に還元させることを通じて、地域の農林漁業の発展を促進した。
2.中小農林水産事業者向け支援
(1)木材産業等高度化推進資金、林業・木材産業改善資金【28年度予算:700億円】
木材の生産・流通を合理化するため、木材産業等高度化推進資金による融資を行うとともに、林業・木材産業の経営改善等を実施するため、林業・木材産業改善資金を融資した。
(2)木材加工設備導入利子助成支援事業【28年度予算:0.04億円】
木材製品の高付加価値化や経営の多角化等を図るための設備導入とそれに伴う施設・設備廃棄等に必要な資金の借入に対する利子助成を行った。
(3)次世代林業基盤づくり交付金【森林・林業再生基盤づくり交付金[木材加工流通施設等の整備]】
価格・量・品質面において安定的・効率的な供給ができるサプライチェーンを構築するために必要な木材加工流通施設の整備を支援した。
(4)強い農業づくり交付金及び産地活性化総合対策事業による乳業再編整備等への支援【28年度予算:228.4億円の内数】
(施策の目的)
飲用牛乳の消費が低迷する中、酪農家の経営安定に資するために、乳業工場の再編・合理化と衛生管理の向上を図ること等により、中小乳業の経営体質の強化を推進するため。
(施策の概要)
中小乳業の製造販売コストの低減や衛生水準の高度化を図るため、乳業工場の施設の新増設・廃棄、新増設を伴わない場合の乳業工場の廃棄等に対する支援策を措置した。
集送乳の効率化や乳業の再編整備に向けた取組を着実に推進するため、地域における課題の把握・検討、具体的な計画の策定、従業員の合理化への取組等に対する支援策を措置した。
(5)食品の品質管理体制強化対策事業
食品の安全性の向上と消費者の信頼を確保するため、食品の製造管理の高度化に関する臨時措置法に基づき、〔1〕HACCP導入のための施設、設備の整備、〔2〕HACCP導入の前段階の一般衛生管理や品質管理を行うための体制、施設・設備の整備(高度化基盤整備)への金融支援を行った。(食品産業品質管理高度化促進資金)
(6)輸出総合サポートプロジェクト事業【28年度予算:14.8億円】
(施策の目的)
- 2019年に輸出額1兆円とする目標の達成に向けて官民一体となって「農林水産業の輸出力強化戦略」(平成28年5月「農林水産業・地域の活力創造本部」取りまとめ)に沿って、輸出促進の取組を実施。
(施策の概要)
- JETRO等への補助を通じて、輸出に取り組む事業者等に対し川上から川下に至る総合的なビジネスサポートを実施。
- 今後輸出が強く期待される国・地域などで開催される海外見本市にジャパンパビリオンを設置し、事業者等と海外バイヤーが直接商談できる機会を提供。
- 海外の有力なバイヤーを国内商談会に招へいしつつ、卸売市場や産地等への視察を通じて、日本産品の品目の特性や安全性等を理解してもらい、効果的に商談を実施。
- 今後輸出が強く期待される国・地域を中心に、マーケティングやプロモーション、日本産品のPR等をするためのマーケティング拠点(インストア・ショップ)を設置し、事業者の商品を試験販売し、現地の反応をフィードバックした。
(27年度からの変化)
- 輸出に取り組む事業者の商品を試験販売し、現地の反応をフィードバックする「新興市場等におけるマーケティング拠点」を民間事業者等を含めて広く公募するとともに、その設置箇所数を拡充した。また、国内商談会の開催に当たり、海外の有力なバイヤーを招へいして、卸売市場や産地等への視察を通じて日本産品の安全性等の理解を深めてもらうことで、効果的に商談会を開催。
(7)輸出に取り組む事業者向け対策事業【28年度予算:8.4億円】
(施策の目的)
- 2019年に輸出額1兆円とする目標の達成に向けて官民一体となって「農林水産業の輸出力強化戦略」(平成28年5月「農林水産業・地域の活力創造本部」取りまとめ)に沿って、輸出促進の取組を実施。
(施策の概要)
- 水産物、コメ・コメ加工品、花き、畜産物、林産物(木材)及び青果物の品目別輸出団体が、ジャパン・ブランドの確立を目的として、国内検討会の開催や海外マーケット調査、輸出環境課題の解決等の取組を実施。
- 多様な加工品に関する国内の主要な輸出産地・関係事業者等を取りまとめる団体や、地方ブロック規模において複数の品目を取りまとめる団体等が、通年又は長期の安定供給の構築等を目的として、国内検討会、海外マーケット調査や海外での販路開拓の取組を実施。
- 対象国・地域が求める検疫等条件への対応や国際的に通用する認証の取得・更新、品目別の輸出状況に応じた実用的な輸送コストの実現を図るため、最適な輸出モデルの開発・実証を行う取組を実施。
(平成27年度からの変化)
- ジャパン・ブランドの確立に向けた取組のうち、国内検討会の補助率を定額から1/2に、品目別ロゴマークの管理の補助率を定額から3/4に変更。
3.研究開発等横断的分野等における支援
(1)農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業【平成28年度:32.0億円】
農林水産・食品分野の成長産業化を図るため、農林水産・食品分野における産学連携による研究開発を基礎から実用化段階まで継ぎ目なく推進した。
(2)日本公庫による各種融資
〔1〕特定農産加工業者の経営改善、〔2〕特定農林畜水産物の新規用途又は加工原材料用新品種の採用の推進、〔3〕食品製造業者等と農林漁業者等の安定取引関係構築及び農林漁業施設の整備等、〔4〕乳業施設の改善、〔5〕水産加工業の体質強化等の推進に対して融資した。
第2節 中小運輸業対策
1.倉庫業への支援
経済・社会環境の変化の中で高度化・多様化する物流ニーズやトラックドライバー不足に対応するため、物流総合効率化法を改正し、物流の省力化・効率化を図るため、輸送機能と保管機能の連携した倉庫の整備を促進した。
また、倉庫の低炭素化の促進を実施するため、省エネ設備等の導入に対して支援を行った。
2.内航海運暫定措置事業
内航海運暫定措置事業の円滑かつ着実な実施を図るため、同事業に要する資金について政府保証枠の設定による支援措置を講じた。
3.中小造船業・舶用工業対策【28年度予算:(1):0.5億円の内数、(2):160億円(平成25年度予算)、(3):6.4億円の内数、(4):0.9億円】
(1)経営の安定のためのセーフティネットの確保に取り組むほか、〔1〕【経営技術の近代化に向けた講習会を全国8か所で実施するとともに労働災害の防止に向けての統括安全衛生責任者研修会を実施】した。
(2)東日本大震災では東北の太平洋側に位置する造船所のほとんどが壊滅的な被害を受けた。地域の基幹産業である水産業を支える地元造船産業の早期復旧・復興を図るため、国土交通省では、中小企業庁等関係省庁と連携し、各種支援制度を活用した支援を行ってきた。地盤沈下等により震災前と同様の操業を行うことが困難となっている造船事業者に対しては、協業化・集約化による本格的な復興のための造船施設の整備を支援する「造船業等復興支援事業費補助金」を平成25年度に創設し、平成26年度末までに、8件、19事業者に対して補助金を交付決定(補助額計114.2億円)の上、復興事業を推進している。平成28年度末までに3件の事業が完了したところ、残り5件の事業の適正な実施を含め、東北造船業の早期復興に向けた支援を行っていく。〔2〕造船業等復興支援事業費補助金
(3)我が国海洋産業の戦略的振興のための海洋資源開発技術、船舶からのCO2を削減する世界最先端の海洋環境技術の技術開発費、我が国海事産業の船舶の建造・運航における生産性向上のための技術研究開発費に対し34件(うち、中小企業の参加するプロジェクトは9件)補助を行った。〔3〕海事産業関連技術研究開発費補助金
(4)平成28年7月に施行された中小企業等経営強化法に基づき、造船業・舶用工業における事業分野別指針を策定し、税制優遇等の支援措置が受けられるよう、本指針に沿って中小企業・小規模事業者が策定した経営力向上計画を31件(平成29年1月末時点)認定した。【税制】
(5) 2015年度に開始した中小造船事業者の地域連携による高校生・大学生を対象とした造船所へのインターンシップや高校教員を対象とした造船教育研究会のトライアル事業を実施し、地域の造船企業と教育機関のネットワーク強化のためのガイダンスを取り纏めた。さらに、新たな取組として、高校生向けの魅力ある造船の教材の作成を行い、造船教育の強化を推進した。
また、造船業において、平成27年4月から平成32年度末までの緊急かつ時限的措置として、即戦力となる技能実習修了者に対して、最大3年間の就労を認める外国人造船就労者受入事業を実施し、平成28年12月末までに約1,900人の外国人材が就労した。〔4〕造船業における人材の確保・育成
第3節 中小建設・不動産業対策
1.地域建設産業活性化支援事業【平成28年度:1.7億円】
社会資本の整備・維持管理や地域の防災・減災など、地域社会を支える中小・中堅建設企業及び建設関連企業(測量業、建設コンサルタント及び地質調査業)に対して、人材開発の専門家や中小企業診断士等の活性化支援アドバイザーが、経営上の課題又は施工管理等の技術的な課題の解決に資する幅広いアドバイスを実施。
また、担い手の確保・育成や生産性向上に資する取組でモデル性の高い案件については、重点支援として専門家の支援チームによる計画策定等の目標達成までの継続支援や計画実行段階の経費の一部支援を実施。
加えて、重点支援の取組や活性化支援アドバイザーの知見等を活かし、生産性向上に資するベストプラクティスの見える化、建設業に応用可能な他産業の生産性向上を参考にした、建設業版「生産管理モデル」の構築を検討し、本事業スキームによる支援にも活用するほか、ベストプラクティス・生産管理モデルに関するセミナー・個別相談会の開催や、オンライン講座等の効率的・効果的な教育手法を開発・試行。
2.建設業における金融支援の実施
(1)地域建設業経営強化融資制度の実施
元請建設企業の資金調達の円滑化を一層図るため、中小・中堅元請建設企業が公共工事請負代金債権を担保に、融資事業者から工事の出来高に応じて融資を受けることが可能となる「地域建設業経営強化融資制度」を実施した。なお、本制度においては、融資事業者が融資を行うにあたって金融機関から借り入れる転貸融資資金に対して債務保証を付すことにより、融資資金の確保と調達金利の軽減を図っている。
(2)下請債権保全支援事業の実施
下請建設企業等の債権保全及び資金調達の円滑化を一層図るため、中小・中堅下請建設企業等が元請建設企業に対して有する工事請負代金債権等をファクタリング会社が保全する場合に、そのリスクを軽減する損失補償を実施し、また、当該下請建設企業等が負担する保証料について助成を行う「下請債権保全支援事業」について、事業期間を延長した。
3.建設業の海外展開支援【28年度予算:0.7億円】
中堅・中小建設企業の海外進出を支援するため、経営者層を対象とした海外進出戦略セミナーを国内5ケ所において開催し、訪問団をベトナム及びミャンマーに派遣した。そのほか、ベトナムでの海外見本市出展支援や国内での海外建設実務セミナーの開催、海外建設・不動産市場データベース等を通じた最新情報の発信等の取組みを行った。
4.中小不動産業者に対する金融措置
中小不動産事業者の信用を補完し金融を円滑化するため、中小不動産事業者の協業化円滑資金や地域再生のための事業資金等に対する債務保証事業を継続実施した。
5.地域型住宅グリーン化事業【28年度予算:110.0億円】
地域における木造住宅の生産体制を強化し、環境負荷の低減を図るため、資材供給、設計、施工などの関連事業者からなるグループによる、省エネルギー性能や耐久性等に優れた木造住宅・建築物の整備に対して支援を行う。
6.木造住宅施工技術体制整備事業【28年度予算:5.1億円】
新規大工技能者の育成や大工技能者の技術力の向上に資するリフォーム技術講習等の取組に対する支援を行う。
第4節 生活衛生関係営業対策
1.生活衛生営業対策【28年度予算:10.3億円】
理美容業、クリーニング業、飲食店営業などの生活衛生関係営業の経営の健全化、衛生水準の維持向上及び利用者又は消費者の利益の擁護を図り、もって安心・快適な生活環境づくりを衛生的観点から推進するため、生活衛生同業組合及び連合会、全国生活衛生営業指導センター、都道府県生活衛生営業指導センターに対して補助を実施する。平成28年度においては、生活衛生関係営業者の経営改善を支援するため、生産性向上に資する取り組み事例を収集し取りまとめるとともに、業態、規模、地域性に応じたきめ細やかな経営相談、経営指導等を行うモデル事業(生活衛生関係営業生産性向上等モデル事業)などを重点的に実施した。
2.生活衛生関係営業者に関する貸付【28年度予算:25.0億円】
生活衛生関係営業の資金繰り支援を行うことで公衆衛生の向上及び増進を図るため、株式会社日本公庫(生活衛生資金貸付)において、低利融資を行った。平成28年度においては、耐震化に係る運転資金の貸付内容の拡充等を行い、平成28年度補正予算においては、熊本地震により被災した生活衛生関係営業者等の資金繰り支援、雇用の維持・拡大を図る企業や経営支援を受ける企業に対し貸付利率の引下げ、インバウンド対応に係る資金の貸付利率の引下げを実施した。
第5節 環境・エネルギー対策
1.中小企業等の温室効果ガス削減量等を認証する制度(J-クレジット制度)における手続等支援【28年度予算:4.4億円】
○J-クレジット制度は、中小企業等の設備投資による温室効果ガスの排出削減量等をクレジットとして認証する制度であり、制度運営や事業計画の作成支援等を実施した。
○また、本事業では、カーボンフットプリント(CFP)制度で「見える化」された、製品・サービスのCO2排出量をクレジットにより埋め合わせるカーボン・オフセットの仕組みの基盤整備を実施し、J-クレジット制度の下で創出されるクレジットの需要開拓も推進した。
○本事業により、中小企業等の省エネ設備投資等を促進し、クレジットの活用による国内での資金環流を促すことで環境と経済の両立を図った。
2.環境・エネルギー対策資金(公害防止対策関連)【財政投融資】
中小企業の公害対策を促進するため、公害防止設備を導入する事業者に対して日本公庫による特別利率による融資を行う制度である。平成28年度においては、必要な見直しを行い、措置期間を平成29年3月31日まで延長した。
平成28年度における融資実績は、大気汚染関連が8件、221百万円、水質汚濁関連が3件、106百万円、産業廃棄物・リサイクル関連が42件、2,952百万円となった(平成29年1月末時点)。
3.公害防止税制【税制】
公害防止税制は、中小企業を含む事業者の公害防止対策に対する取組を支援するため、公害防止用設備(汚水又は廃液処理施設)に係る課税標準の特例及び、公害防止用設備を取得した場合の特別償却等の措置であり、平成28年度も引き続き措置を講じた。
4.エネルギー使用合理化等事業者支援補助金【28年度予算:515.0億円】
工場・事業場単位での省エネ設備・システムへの入替、製造プロセスの改善等の改修による省エネや電力ピーク対策・事業者間の省エネ対策を行う際に必要となる費用を補助した。その際、省エネ法に基づくベンチマーク制度等、省エネ法との連携を強化し、より高い水準の省エネの取組を重点的に支援した。
5.中小企業等の省エネ・生産性革命投資促進事業【27年度補正予算:442.0億円】
導入する設備ごとの省エネ効果等で簡易に申請が行える補助制度を創設した。高効率の省エネ設備への更新等を重点的に支援し、中小企業等の事業の生産性や省エネ性能を向上させ、競争力の強化につなげた。
6.エネルギー使用合理化特定設備等導入促進事業費補助金【28年度予算:27.0億円】
省エネ法に基づくトップランナー機器等、省エネ設備の導入を促進するため、民間金融機関等から融資を受ける事業者に対し、利子補給を行った。事業の実施に当たっては地域金融機関等との連携を強化し、省エネに積極的に取り組む地域の中小・中堅企業等の省エネ投資を後押しした。
7.省エネルギー対策導入促進事業【28年度予算:7.5億円】
中小・中堅事業者等に対し、省エネ・節電ポテンシャルの診断等を無料で実施するとともに、具体的な診断事例や省エネ技術などを広く情報発信し、横展開を図った。また、診断事業によって提案された省エネの取組を促進するため、中小企業等の経営状況を踏まえ、各地域できめ細かな省エネ相談を実施するプラットフォームを19箇所に構築した。
8.環境関連投資促進税制【税制】
青色申告書を提出する個人及び法人が省エネや再エネの導入拡大に資する設備を取得等した場合には、初年度においてその取得額の30%の特別償却又は7%の税額控除(中小企業者等のみ)ができる税制措置について、平成28年度税制改正において、地熱発電、木質バイオマス発電設備等の追加及び太陽光発電設備のうち認定発電設備に該当するものの除外など、対象資産の見直しを行った上で、適用期限を2年延長した。
9.地域低炭素投資促進ファンド事業【28年度予算:60.0億円】
一定の採算性・収益性が見込まれるものの、リードタイムや投資回収期間が長期に及ぶこと等に起因するリスクが高く、民間資金が十分に供給されていない再生可能エネルギー事業等の低炭素化プロジェクトに民間資金を呼び込むため、これらのプロジェクトに対し、「地域低炭素投資促進ファンド」からの出資を行った。
10.エコリース促進事業【28年度予算:18.0億円】
低炭素機器の導入に際して多額の初期投資費用(頭金)を負担することが困難な中小企業等に対し、リース料総額の一部を補助することによって、頭金なしの「リース」の活用を促進し低炭素機器の普及を図った。
11.エコアクション21
「エコアクション21」は、平成28年12月末時点で認証・登録事業者数は7,716となった。中堅・中小事業者等の環境経営の有効性を高め、企業価値向上に資するよう、エコアクション21ガイドライン改訂の検討を引き続き実施した。また、大手企業のバリューチェーンでのエコアクション21導入を目的とした実証に着手するとともに、エコアクション21の仕組みを基礎に、CO2削減に特化した環境マネジメントシステム導入支援事業を開始し、本年度は157社の中堅・中小企業が新たに環境マネジメントシステムを導入した。
第6節 知的財産対策
1.特許出願技術動向調査【28年度予算:9.0億円の内数】
日本の産業界における研究開発戦略や知的財産戦略の立案に活用できる特許出願動向に関する調査を行った。平成28年度は、「スマートマニュファクチャリング」等の社会的に注目を集めている技術分野や「GaNパワーデバイス」等の日本が強みを有す技術分野に関連する16テーマについて調査を実施した。そして、調査結果を特許庁ホームページ等を通じて積極的に情報発信している。
2.外国出願補助金(中小企業等外国出願支援事業)【28年度予算:6.3億円】
中小企業等による戦略的な外国出願を促進するため、都道府県等中小企業支援センター等及び全国実施機関としてJETROを通じて、外国への事業展開等を計画している中小企業に対して、外国への出願に要する費用(外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費用等)の一部を助成した。
3.知的財産権制度に関する普及【28年度予算:0.8億円】
知的財産権制度に関する知見・経験のレベルに応じて、知的財産権制度の概要や基礎的知識について説明する初心者向けと、特許・意匠・商標の審査基準や、審判制度の運用、国際出願の手続等、専門性の高い内容を分野別に説明する実務者向け説明会を開催した。
平成28年度は、47都道府県において初心者向け説明会を63回、全国の主要都市で実務者向け説明会を62回実施した。
4.中小企業等海外侵害対策支援事業【28年度予算:1.3億円】
中小企業の海外での適時適切な産業財産権の権利行使を支援するため、JETROを通じて、模倣品に関する調査から模倣品業者に対する警告・行政摘発手続等に要する費用を補助し、本件の採択件数は20件であった。また、海外で現地企業等から知財権侵害で訴えられた場合の弁護士への相談費用や訴訟に要する費用を補助し、本件の採択件数は2件であった。さらに、28年度からは新たに、海外で現地企業等から自社のブランドの商標や地域団体商標を冒認出願された際の異議申立や無効審判請求、取消審判請求等冒認商標を取消すために要する費用の補助を開始し、本件の採択件数は10件であった。
5.特許戦略ポータルサイト【28年度予算:0.1億円の内数】
特許庁ホームページ内の特許戦略ポータルサイトでは、パスワード交付申込みのあった出願人に対し、インターネットを通じて、自社の直近10年間の特許出願件数、審査請求件数、特許査定率等のデータが掲載された「自己分析用データ」を提供した。
6.中小企業向けの特許料等の軽減
積極的に研究開発を行う中小企業等に対し、審査請求料や特許料(第1年分から第10年分)を半額に軽減する措置を引き続き実施した。
また、中小ベンチャー企業・小規模企業等に対し、審査請求料、特許料(第1年分から第10年分)、国際出願に係る手数料(調査手数料、送付手数料、予備審査手数料)を1/3に軽減する措置及び国際出願手数料や取扱手数料の2/3に相当する額を交付する措置を実施した。
7.早期審査・早期審理制度
出願人や審判請求人が中小企業・小規模事業者の場合、「早期審査に関する事情説明書」や「早期審理に関する事情説明書」を提出することにより、通常に比べ早期に審査又は審判を受けられるようにした。平成28年度の早期審査の申請件数は15,582件、早期審理の申請件数は187件に上った(平成29年1月末現在)。
8.中小企業の知財に関するワンストップサービスの提供(知財総合支援窓口)【28年度予算:INPIT交付金の内数】
中小企業等が企業経営の中で抱える知的財産に関する悩みや課題に対し、その場で解決を図るワンストップサービスを提供するため、「知財総合支援窓口」を都道府県ごとに設置し、窓口に支援担当者を配置している。また、専門性が高い課題等には知財専門家を活用し解決を図るほか、よろず支援拠点等の中小企業支援機関等との連携を通じて、中小企業等の知財活用の促進を図る。平成28年度からは事業の実施主体を(独)工業所有権情報・研修館とすることで、同館の営業秘密・知財戦略相談窓口や海外展開知財支援窓口との連携強化を図るほか、職務発明規程に関する支援を行う専門家の更なる拡充、標準化に関するアドバイスを提供する日本規格協会(JSA)との連携、地理的表示保護制度等の農林水産業に係る知的財産の相談にも対応するなど、支援内容の一層の拡充を図るとともに、支援対象を中堅企業まで拡大することにより支援体制を強化した。
9.営業秘密に関するワンストップ支援体制の整備(「営業秘密・知財戦略相談窓口~営業秘密110番~」)【28年度予算:INPIT交付金の内数】
平成27年2月2日に独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)に新設した「営業秘密・知財戦略相談窓口~営業秘密110番」においては、知財総合支援窓口とも連携して、主に中小企業を対象に特許としての権利化、営業秘密としての秘匿化を含むオープン・クローズ戦略等の具体的な知的財産戦略に加え、秘匿化を選択した際の営業秘密の管理手法、また営業秘密の漏えい・流出等に関する相談に専門家が対応した。特に営業秘密の漏えい・流出事案や情報セキュリティ対策、サイバーアタックについても、相談内容に応じて、警察庁や独立行政法人情報処理推進機構(IPA)とも連携して対応可能な体制を継続した。加えて、営業秘密・知財戦略セミナーの開催やeラーニングコンテンツ等による普及・啓発活動も実施した。
10.新興国等知財情報データバンク【28年度予算:0.01億円の内数 INPIT交付金の内数】
新興国等でのビジネスに関わる我が国の企業の法務・知財担当者等を対象に、各国の知財情報を幅広く提供することを目的とする情報発信ウェブサイトであり、新興国等を対象に出願実務、審判・訴訟実務、ライセンス実務情報、統計・制度動向等の情報を提供している。平成28年度は、引き続き、更なる掲載記事の拡充を行った(平成29年1月末現在:掲載記事数1765件)。
11.海外知的財産プロデューサー派遣事業【28年度予算:INPIT交付金の内数】
独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)において、海外での事業内容や海外展開先の状況・制度等に応じた知的財産戦略策定等、海外における事業展開を知的財産活用の視点から支援するため、海外での事業展開が期待される有望技術を有する中小企業等に対して、知的財産マネジメントの専門家(海外知的財産プロデューサー)を派遣している。
平成28年度は、7人の海外知的財産プロデューサーにより、262者(平成29年1月末現在)の支援を行った。
12.出張面接審査・テレビ面接審査【28年度予算:0.2億円】
全国各地の中小・ベンチャー企業等の方々への支援を目的として、全国各地の面接会場に審査官が出張する面接審査、及び、インターネット回線を利用し出願人自身のPCから参加できるテレビ面接審査を実施した。また、地域の中小企業やベンチャー企業、研究施設等が集まるリサーチパークや大学等といった企業等集積地域を対象に、出張面接審査と特許権に関するセミナーを同時に開催する「地域拠点特許推進プログラム」を開始した。
13.中小企業等特許情報分析活用支援事業【28年度予算:1.4億円】
中小企業等における効果的な研究開発や権利化等の知財活用を促進するため、中小企業に加えて、地方公共団体、公設試験研究機関、商工会や商工会議所等も対象とした「研究開発」、「出願」及び「審査請求」の各段階のニーズに応じた包括的な特許情報分析支援を行った。
14.知財金融促進事業【28年度予算:1.0億円】
中小企業の保有する特許等の知的財産を評価することが困難な金融機関のために、融資を検討している中小企業が保有する特許・商標等の知的財産権を活用したビジネスについてわかりやすく説明した「知財ビジネス評価書」を提供する等、金融機関からの知財に注目した融資につなげる包括的な取組みを行った。ビジネス評価書の作成支援件数は150件。
15.日本発知財活用ビジネス化支援事業【28年度予算:3.6億円】
中堅・中小企業や地域団体商標取得団体の知的財産を活用した外国でのビジネス展開の促進を支援するため、JETROを通じて以下の取組を行った。
〔1〕優れた知財を保有する我が国企業等のライセンスビジネスのパートナー候補を、調査によってリストアップし、〔2〕及び〔3〕の商談機会で活用する。
〔2〕専門家による国内でのセミナー・研修や、海外での複数回にわたる個別面談などを通じて、海外でのライセンスビジネスにつなげるビジネスモデル構築やブランド戦略策定を支援し、イベント等商談機会を提供する。
〔3〕国内外での展示会出展、商談会参加等を通じ、ビジネスパートナー候補との商談機会の提供等の支援を実施する。
〔4〕技術流出の予防を目的として、知財専門家による助言等を実施する。
〔5〕有望な知財を保有する我が国の中堅・中小企業や地域団体商標取得団体の魅力を技術流出に配慮しながら海外に多言語で発信する。
16.地域中小企業知的財産支援力強化事業【28年度予算:2.0億円】
中小企業の様々な課題や地域特性等に応じたきめ細かな支援により中小企業の知財保護・活用を促進するため、意欲の高い地域の支援機関等から先導的・先進的な知財支援の取組を経済産業局を通じ募集し、28年度に新設された国として一律に解決が困難な重点課題の解決を重視した取組への支援を含め、26件の取組を支援した。
17.海外知財訴訟保険補助事業【28年度予算:0.6億円】
中小企業等が海外知財訴訟への対抗措置を取ることができるようにするため、全国規模の中小企業等を会員とした団体を運営主体とする知財訴訟費用を賄う海外知財訴訟保険制度を創設した。
中小企業等を会員とする全国団体に補助金を交付し、海外知財訴訟保険の掛金の1/2を補助する。掛金負担を軽減することで、中小企業の加入を促進した。
18.地方創生のための事業プロデューサー派遣事業【28年度予算:1.0億円の内数】
新規事業として、地方における事業化機能拡充のため、潜在ニーズを掘り起こして事業を構想し、金融機関を含む地域ネットワークを構築・活用しながらシーズのマッチングから事業資金調達、販路開拓までを含めた事業創出環境整備を支援する「事業プロデューサー」を3機関に1名ずつ計3名派遣した。
19.特許情報の提供
特許情報について、高度化、多様化するユーザーニーズに応えるべく、「特許電子図書館」を刷新し、新たな特許情報提供サービス「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」の提供を平成27年3月より開始している。J-PlatPatは使いやすいインターフェースを備え、国内の特許、実用新案、意匠、商標の公報の検索や、経過情報の照会機能等を有している。平成28年7月には、日米欧中韓の五大特許庁への出願に加えてPCT国際出願等の特許出願の手続や審査に関連する情報(ドシエ情報)を、ユーザーが一括把握できるサービス(ワン・ポータル・ドシエ(OPD))をJ-PlatPatにおいて開始した。
また、外国特許文献、特に急増する中国・韓国特許文献を日本語で調査できるように「中韓文献翻訳・検索システム」の提供を平成27年1月より、ASEAN等の日本企業の進出が著しい諸外国の特許情報を照会する「外国特許情報サービス(FOPISER)」の提供を平成27年8月より、それぞれ開始している。
なお、いずれのサービスもインターネットを介して無料にて提供している。
第7節 標準化の推進
1.中堅・中小企業等における標準化の戦略的活用の推進
「日本再興戦略2016」(平成28年6月2日閣議決定)、知的財産推進計画2016に基づき「新市場創造型標準化制度」を活用して、中堅・中小企業から提案のあった案件について、平成28年度時点で規格を5件策定した。さらに、自治体・産業振興機関、地域金融機関、大学・公的研究機関(パートナー機関)と一般財団法人日本規格協会が連携し、地域において標準化の戦略的活用に関する情報提供・助言等を行う「標準化活用支援パートナーシップ制度」のパートナー機関数を平成28年度時点で118機関に拡大し、全国47都道府県に設置した。また、同制度の下、中堅・中小企業等向けに、標準化に関する戦略的活用について、平成28年度末時点で147件のセミナーを実施した。さらに、JETROと試験・認証機関との連携を推進し、中小企業等の海外認証等取得に向けた支援体制を強化した。