第3章 地域経済の活性化に資する事業活動の推進
<小規模企業振興基本計画における目標(3)>
(3)地域経済の活性化に資する事業活動の推進
-地域のブランド化・にぎわいの創出-
地域に根差して事業活動を行う小規模企業の活力向上には、個々の事業者の支援のみでなく、地域全体が面的に活性化することが必要である。同時に、小規模企業の事業が活性化することにより、地域が活力を取り戻すという側面もあり、小規模企業の振興と地域経済の活性化は表裏一体である。多様な機能を有する地域のコミュニティが持続し、地域を活性化するためには、地域に存在する魅力を掘り起こし、面的・横断的に捉え、創造的な発想・取組により、地域の魅力を内外に対して広く浸透させていくことが重要である。これにより、地域のブランド化を進め、にぎわいを創出する。その際、国の関係省庁、地方公共団体及び支援機関等が適切に連携を図ることにより、効果を高める。
これらの取組により、小規模企業とともに持続・発展する地域づくりを進める。
第1節 地域資源の活用
1.小規模支援法による経営発達支援計画の認定
小規模支援法に基づき、全国の商工会・商工会議所が市町村や地域の金融機関等と連携して、地域ぐるみで小規模事業者を支援する体制の整備を全国各地で進めるため、商工会・商工会議所が策定する「経営発達支援計画」について、第4回認定までに、累計1,127件(1,303単会)の認定を行った。
2.(再掲)小規模事業対策推進事業【28年度予算:51.5億円の内数】
改正小規模支援法に基づき認定を受けた「経営発達支援計画」に沿って商工会・商工会議所が取り組む伴走型の小規模事業者支援を推進し、小規模事業者の需要を見据えた事業計画の策定や販路開拓等を支援(採択数:659件)した。
また、地域の小規模事業者による全国規模の市場に向けた事業展開を促進するため、商工会・商工会議所等が事業者と協力して進める、特産品開発や観光開発及びその販路開拓等の事業(調査研究事業:61件、本体事業(1年目:86件、2年目:24件)に対し、幅広い支援を行った。
3.ふるさと名物支援事業【28年度予算:10.0億円】
中小企業・小規模事業者が、地域資源の活用や農林漁業者との連携により行う、新商品・新サービスの開発、販路開拓を支援した。また、地域資源の活用や、農林漁業者との連携により行う商品開発等に取り組む事業者に対して、一般社団法人等が行う消費者嗜好に関する情報提供、マッチング支援などの取組を支援した。
4.(再掲)JAPANブランド育成支援事業【28年度予算:10.0億円の内数】
中小企業の海外販路開拓の実現を図るため、複数の中小企業が連携し、自らが持つ素材や技術等の強みを踏まえた戦略の策定や、当該戦略に基づいて行う商品の開発や海外見本市への出展等の取組を支援した。
5.伝統的工芸品の指定
伝統的工芸品産業の振興に関する法律(以下「伝産法」という。)に基づき、伝統的工芸品への指定の申出があった工芸品について調査、検討を行った後、産業構造審議会の意見を聴いて、以下の3品目について、伝統的工芸品の指定を行った。
- 愛知県「尾張仏具」、長崎県「長崎べっ甲」、沖縄県「南風原花織(はえばるはなおり)」平成29年1月26日指定
6.伝統的工芸品産業振興関連補助事業【28年度予算:12.5億円】
伝統的工芸品産業の振興に関する法律(以下「伝産法」という。)に基づき、伝統的工芸品産業の振興のため以下の支援を行った。
〔1〕産地の製造協同組合等が実施する以下の事業に対する補助
- 後継者育成事業
- 原材料確保対策事業
- 意匠開発事業
- 連携活性化事業
- 産地プロデューサー事業 等
〔2〕伝産法第23条に基づく一般社団法人・一般財団法人が実施する以下の事業に対する補助
- 人材確保および技術技法継承事業
- 産地指導事業
- 普及推進事業
- 需要開拓事業 等
また、伝統的工芸品の産地ブランド化推進として、伝統的工芸品の産地への観光客誘致・海外販路開拓を後押しするため、伝統的工芸品の産地にデザイナー等の外部人材等を招聘する取組を支援。
7.伝統的工芸品の普及・推進事業
伝統的工芸品に対する国民の理解を増進するため、毎年11月を「伝統的工芸品月間」とし、伝統的工芸品月間国民会議全国大会の開催等の普及・啓発事業を実施。平成28年度においては、福井県で全国大会を開催した。
第2節 商店街・中心市街地の活性化
1.地域商店街の活性化に向けた総合的支援
地域商店街活性化法に基づき、商店街活性化事業計画を国が認定した商店街等について、支援措置を講じた。
2.全国商店街支援センターによる人材育成等
中小企業関係4団体が共同で設立した「全国商店街支援センター」において、人材育成、ノウハウ提供等の支援を行った。
3.中心市街地活性化協議会運営支援事業【中小機構交付金の内数】
中心市街地活性化協議会の設立・運営にあたって、中小機構に設置された中心市街地活性化協議会支援センターを中心に、各種相談対応、HPやメールマガジンでの情報提供、交流会の開催によるネットワーク構築支援等を行った。平成28年度(平成29年1月末時点)は358件の相談対応を実施した。
4.中心市街地商業等活性化アドバイザー派遣事業【中小機構交付金の内数】
中心市街地活性化協議会等が抱える様々な課題に対応するため、中小機構に登録された商業活性化に関する各分野の専門家を派遣した。平成28年度(平成29年1月末時点)は29地域に専門家を派遣した。
5.中心市街地商業活性化診断・サポート事業【中小機構交付金の内数】
中心市街地活性化協議会等が行う中心市街地における商業活性化の取組を支援するため、中小機構における専門的ノウハウを活用し、セミナー等の企画・立案支援・講師の派遣や、個別事業の実効性を高めるための助言・診断・課題整理・情報提供等を行った。平成28年度(平成29年1月末時点)は16地域でセミナーを開催し、19地域へ助言等を実施した。
6.(再掲)企業活力強化資金【財政投融資】
中小商業者・サービス業者等の経営の近代化及び流通機構の合理化、中小企業者のものづくり基盤技術の高度化の促進並びに下請中小企業の振興を図るため、日本公庫が必要な資金の貸付を行った。平成28年度(平成29年1月末時点)の貸付実績は、11,510件、952億円となった。
7.商店街・まちなかインバウンド促進支援事業【27年度補正予算:10.0億円】
商店街等における、外国人観光客の買物需要等を取り込むための環境整備等の取組を支援した。平成28年度には、商店街インバウンド促進支援事業において43件、中心市街地活性化事業において6件採択した。
8.地域・まちなか商業活性化支援事業【28年度予算:20.3億円】
商店街等における子育て・高齢者支援サービスの提供や空き店舗への店舗誘致、中心市街地における複合商業施設の整備などの取組を支援した。平成28年度には、地域商業自立促進事業において、調査分析事業を41件、支援事業を28件採択し、中心市街地再興戦略事業において、調査事業を3件、先導的・実証的事業を3件、専門人材活用支援事業を15件採択した。
9.中心市街地活性化のための税制措置【税制】
中心市街地活性化法の改正により創設した「特定民間中心市街地経済活力向上事業」に基づいて行われる、〔1〕建物及び建物附属設備、構築物の取得に対し、5年間30%の割増償却制度、〔2〕不動産の取得に対し、その不動産の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率を1/2とする措置を講じた。
10.商店街・まちなか集客力向上支援事業【28年度補正予算:15.0億円】
商店街・中心市街地の中長期的な成長基盤の構築につながる、外国人観光客による需要を取り込むために行う施設整備等の事業や、消費喚起に向けた商店街での高いセキュリティを有するIC型ポイントカードの導入等に対して支援を行った。(新規)
第3節 その他の地域活性化
1.地域の企業立地の促進
企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律(平成19年法律第40号)に基づき、地域が自らの特色を活かした企業立地を促進し、地域産業活性化を目指す取組を支援するため、工場立地法の特例措置、日本公庫を通じた中小企業向け低利融資、企業立地に係る地方交付税措置を実施した。また、同法は施行後10年以内に、法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすると規定しているため、産業構造審議会地域経済産業分科会を開催し、見直しに向けた検討を行った。
2.地域経済循環創造事業交付金【28年度予算:16.1億円】
産学金官の連携により、地域の資源と資金(地域金融機関の融資)を活用して、雇用吸収力の大きい地域密着型企業の立ち上げを支援するため、民間事業者等が事業化段階で必要となる経費について、地方公共団体が助成を行う場合、その助成に要する経費の一部を交付する。
また、平成28年度より、地元高校生など地域の将来を担う若者のアイデアを活用した創業を支援する次世代コラボ創業支援事業を創設し、次世代が地域に愛着をもち、定着することを促進する。
3.企業の地方拠点強化税制【税制】
地方創生のためには、東京一極集中を是正し、地方に良質な雇用を創出することが必要である。このため、企業の本社機能等(事務所、研究所、研修所)の東京23区から地方への移転や地方における拡充をした場合に、計画の認定を受けた企業のオフィス等に係る建物等の取得等について、取得価額の15%の特別償却(移転型事業の場合には、取得価額の25%)又は取得価額の4%の税額控除(移転型事業の場合には、取得価額の7%)の選択適用、その地方拠点において雇用した者に対する雇用促進税制の特例を講じる措置、及び企業の地方拠点強化に係る地方交付税による減収補?措置を引き続き講じる。また、平成28年度税制改正において、雇用促進税制の特例措置について、一定の調整措置を講じた上で、雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度と併用できることとした。
4.地域中核企業創出・支援事業【28年度予算:20.5億円】
地域中核企業候補が新分野・新事業等に挑戦する取り組みを支援し、その成長を促すため、支援人材を活用して、全国大の外部リソース(大学、協力企業、金融機関 等)とのネットワーク構築を支援した。さらに、地域中核企業の更なる成長のため、支援人材を活用して、事業化戦略の立案/販路開拓等をハンズオン支援した。また、国際市場に通用する事業化等に精通した専門家であるグローバル・コーディネーターを組織化した「グローバル・ネットワーク協議会」を設立し、グローバル市場も視野に入れた事業化戦略の立案や販路開拓等を支援した。
5.連携中枢都市圏の取組の推進【28年度予算:1.3億円の内数】
連携中枢都市圏の形成を支援するため、国費による委託事業を実施した。また、圏域全体の経済成長のけん引、高次都市機能の集積・強化及び生活関連機能サービスの向上に資する取組を支援するため、連携中枢都市圏ビジョンを策定した連携中枢都市及び連携市町村の取組に対して、地方財政措置を講じた。平成29年1月末時点で、17圏域で連携中枢都市圏が形成されている。
6.地域中核企業支援貸付制度【28年度予算:財投計画額70.0億円】
地域の中核を担い地域経済へ一定の影響力を有する中堅中小企業が、新分野への進出等のイノベーションの取組や戦略的な経営改善の取組を行う場合に、商工中金が地域中核企業支援貸付制度により、長期・一括返済・成功払いによる融資を行った。平成28年度の実績は、48件、54億円となった(平成29年1月末現在)。
7.地方を訪れる外国人旅行者向け消費税免税制度の拡大のための税制措置【税制】
平成28年度税制改正において、外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充として、免税販売の対象となる購入下限額の引下げや、商店街区内の大規模小売店舗を設置している者が商店街の組合員である場合、大規模小売店舗とこの商店街区を一つの特定商業施設として、免税手続カウンターの設置を認める措置等を講じた。
8.地域連携支援貸付制度【28年度予算:財投計画額30.0億円】
地域資源を活用する事業協同組合・企業連携体が、新事業展開、地域資源活用、連携・再編等の取組を行う場合に、商工中金が地域連携支援貸付制度により、長期・一括返済・成功払いによる融資を行った。平成28年度の実績は、26件、22億円となった(平成29年1月末現在)。
9.観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等事業
地域の観光産業等の高度化を図るため、観光地の目指す具体的なビジョン及びビジネスモデルを含んだマスタープランの策定や、
スタジアム・アリーナを核としたまちのにぎわいづくりに関する計画策定等に取り組んでいる。
10.国際化に対応した地域における消費単価向上支援事業【27年度補正予算:1.0億円】
地域への来訪と消費が期待される外国人旅行客の属性を特定し、彼らが求める新たなサービスの検討・試行や、彼らの消費マインドを活性化する統一感のある街並み(サービス・スケープ)の創出によって、地域の商業・サービス集積を高度化する取組を支援した。