第3節 職場環境の整備と多様な人材の活用
本節では、第2節で課題として多く挙げられていた人材確保について、小規模事業者が対応していくための方策を見ていく。少子高齢化や労働力人口不足という状況下で、小規模な事業者の人手不足が深刻化している。地域経済を支える小規模事業者が持続的な経営を行っていくためには、小規模企業ならではの強みを活かして人材の採用・定着に取り組むとともに、多様な人材を活用していくことが重要となる。また、必要な人材が確保できない場合や、自社だけで対応が難しい場合には、外部の経営資源を活用する、すなわちアウトソーシングをうまく活用することも有効である。このため本節では、人材確保の状況、多様な人材の活用状況について分析していく。加えて、人材不足への対応策として、アウトソーシングの活用について取り上げる。人材が不足している状況下においても、アウトソーシングの活用により人材不足を補って成長している小規模事業者も存在する。本節では、こうした人材確保以外の手段による人材不足への対応を分析し、小規模事業者の今後の成長に向けた考察を行う。
1 人材確保に向けた取組
〔1〕採用活動と定着状況
まず、小規模事業者における採用活動の実施状況から見てみる。第2-3-22図を見ると、直近3年間においては、中規模企業では、97.7%の企業が採用活動を実施しているのに対して、小規模事業者では、67.7%となっており、定期的な採用活動を行っていないことが分かる。
続いて、採用した人材が、質・量共に期待どおりの人材であったか、そして、その人材が定着に至ったかどうかを見てみる(第2-3-23図)。まず、採用した人材が期待どおりの人材であった割合は42.4%となっている。そして、その人材が定着したかどうかを見てみると、約9割の事業者で、おおむね3年以上定着していることが分かる。小規模事業者においては、第2-3-22図で見たとおり、採用活動は6割程度であるものの、採用できた人材に対しては、約4割の事業者が期待どおりであり、かつ、定着率も高い傾向にある。
〔2〕定着に向けた取組
第2-3-23図で見たとおり、小規模事業者においては、一旦採用に成功すると定着率は比較的高い傾向にある。こうした人材確保に成功している企業はどのような取組を行っているのだろうか。第2-3-24図で、人材確保の成否別に人材の定着に向けて有効だと認識する取組について見てみると、「能力や適性に応じた昇給・昇進」は、成否によらず、回答割合が高い項目となっている。他方で、「時間外労働の削減・休暇制度の利用促進」や「勤務時間の弾力化」等は、人材確保成功企業と人材確保不成功企業15の間で回答に差がつく傾向にある。勤務形態に柔軟性をもたらすことが、人材確保の定着に向けて、有効な取組であることが示唆される。
続いて、第2-3-25図で、人材確保の成否別に、職場環境や経営者の振る舞いの違いを見てみる。同図を見ると、人材確保の成否で回答に差が生じている項目として、「所定労働時間内で仕事を終える雰囲気がある」や「従業員間のコミュニケーションが活発」、「業務量・業務負担が公平」等が挙げられる。人材確保に成功している小規模事業者では、労働時間や業務の采配に配慮をしていることや従業員内で良好な関係を保たれていることが特徴として挙げられる。