第3章 中小企業・小規模事業者の雇用環境と人手不足の現状
前章では、中小企業のライフサイクルの動向が我が国の中小企業の生産性に与える影響について分析した。本章では、中小企業の各ライフステージに影響を及ぼす人材不足の状況について、我が国の雇用環境の現状とその背景にある就労、産業等の構造を踏まえながら分析する。
第1部 平成28年度(2016年度)の小規模企業の動向
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第3章 中小企業・小規模事業者の雇用環境と人手不足の現状
前章では、中小企業のライフサイクルの動向が我が国の中小企業の生産性に与える影響について分析した。本章では、中小企業の各ライフステージに影響を及ぼす人材不足の状況について、我が国の雇用環境の現状とその背景にある就労、産業等の構造を踏まえながら分析する。
第1節 我が国の雇用環境
1 我が国の雇用環境概観
はじめに、我が国の人口の推移と年齢別の構成比について確認していく。1950年以降、増加傾向にあった我が国の人口は足下で減少に転じており、年少人口及び生産年齢人口の割合が減少している一方で、高齢者人口の割合が増加していることからも高齢化が加速していることが分かる(第1-3-1図)。今後の人口推移を確認すると、高齢者の中でも特に年齢層の高い75歳以上の人口増加が顕著になることが分かる。
他方で、就業者数の推移を見ると、生産年齢人口が減少する中で、減少傾向が続いていたが、就業率の増加により、足下では4年連続で上昇している(第1-3-2図)。これを年齢と性別ごとに確認すると、ここ20年で、特に60~69歳の高齢者の中でも比較的若い年齢層と、いわゆるM字カーブの谷の部分である、女性の25~44歳の年齢層で労働参加が進んでいることが分かる(第1-3-3図)。
また、労働力人口1に占める完全失業者2の割合を示す、完全失業率について見ると、近年は低下傾向が続いており、足下では22年ぶりの低水準となっている(第1-3-4図)。有効求職者数に対する有効求人数の比率であり、労働市場の需給状況を示す有効求人倍率についても引き続き上昇を続けており、足下では25年ぶりの高水準にある。新規求人倍率、有効求人倍率、正社員の有効求人倍率についても同じく上昇を続けている。
1 労働力人口とは、15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたもの。
2 完全失業者とは、調査期間中に仕事をせず、仕事があればすぐ就くことができ、調査期間中に仕事を探す活動や事業を始める準備をしていたもの。
有効求人倍率について地域別に見ると、2016年の有効求人倍率は、47全ての都道府県で1倍を超えており、全国的に求人数が求職者数を上回っていることが分かる(第1-3-5図)。
就業者数が増加する中で、失業率は低下し、有効求人倍率は全国的に上昇しているなど、我が国の雇用環境は改善していることが分かる。
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