第4章 災害からの復旧・復興
第1節 資金繰りの支援
1.政策金融事業【29年度予算:139億円の内数】【財政投融資】
東日本大震災及び熊本地震により被害を受けた中小企業・小規模事業者への資金繰り支援として、日本公庫(国民生活事業及び中小企業事業)・株式会社商工組合中央金庫(以下「商工中金」という。)において、「東日本大震災復興特別貸付」及び「平成28年熊本地震特別貸付」(平成28年6月制度開始)を平成29年度も引き続き実施する。また、東日本大震災においては、原発事故に係る警戒区域等の公示の際に当該区域内に事業所を有していた中小企業・小規模事業者や、地震・津波により事業所等が全壊・流失した中小企業・小規模事業者に対しては、県の財団法人等を通じ、実質無利子化する措置も平成23年度に創設(平成23年8月22日より措置)しており、平成29年度も引き続き実施する。(継続)
2.マル経・衛経融資の貸付限度額・金利引下げ措置の拡充【財政投融資】
東日本大震災及び平成28年熊本地震により直接又は間接的に被害を受けた小規模事業者に対し、無担保・無保証・低利で利用できる日本公庫によるマル経・衛経融資の貸付限度の拡充、更なる金利引下げを引き続き実施する。(継続)
3.信用保証事業
東日本大震災により被害を受けた中小企業等を対象に、既存の一般保証や災害関係保証、セーフティネット保証とは別枠の新たな保証制度を平成23年度に創設。平成29年度も、特定被災区域内において引き続き実施する(100%保証。保証限度額は無担保8,000万円、最大2億8,000万円。)。
また、平成28年4月に発生した熊本地震においては、九州全域でセーフティネット保証4号(平成28年4月14日より順次発動)を発動したほか、熊本県全域(平成28年4月26日発動)では災害関係保証も発動した。平成29年度も、被害状況を調査のうえ必要に応じて実施する。(継続)
4.原子力災害に伴う「特定地域中小企業特別資金」
原子力発電所事故の被災区域に事業所を有する中小企業等が福島県内において事業を継続・再開する場合に必要な事業資金(運転資金・設備資金)を長期・無利子、無担保での融資を行う。(継続)
第2節 二重債務問題対策
1.「産業復興相談センター」及び「産業復興機構」による事業再生支援【29年度予算:13.9億円※】
平成23年度に被災各県の中小企業再生支援協議会の体制を拡充して設立した「産業復興相談センター」と、債権買取等を行う「産業復興機構」において、引き続き、東日本大震災により被害を受けた中小事業者等の事業再生支援を実施する。(継続)
(※)東日本大震災復興特別会計分。被災県6県のうち、青森・茨城・千葉の中小企業再生支援協議会・産業復興相談センターについては、平成29年度予算より一般会計へ移行。
2.「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構」による事業再生支援
被災事業者の二重ローン問題に対応するため、東日本大震災事業者再生支援機構では旧債務に係る返済負担の軽減等の支援を実施する。(継続)
3.再生可能性を判断する間の利子負担の低減
東日本大震災及び原子力発電所の事故による被害を受けた中小企業者や小規模事業者等が産業復興相談センターを活用した事業再建に取り組む際に、金利負担を軽減することにより、早期の事業再生の実現を図ることを目的とする事業。具体的には産業業復興相談センターによる再生計画策定支援の期間中に発生する利子を補填するもの。平成23年度に創設。平成29年度も引き続き実施する。(継続)
4.被災中小企業復興支援リース補助事業の実施
被災中小企業の二重債務負担の軽減を図るため、東日本大震災に起因する設備の滅失等により債務を抱えた中小企業に対し、設備を再度導入する場合のリース料の10%を補助する。(継続)
第3節 工場等の復旧への支援
1.中小企業組合等共同施設等災害復旧事業
○東日本大震災【29年度予算:210億円】
東日本大震災に係る被災地域の復旧及び復興を促進するため、
〔1〕複数の中小企業等から構成されるグループが復興事業計画を作成し、地域経済や雇用維持に重要な役割を果たすものとして県から認定を受けた場合に、計画実施に必要な施設・設備の復旧にかかる費用に対して、国が1/2、県が1/4の補助、
〔2〕商工会等の中小企業者のための指導・相談施設等の災害復旧事業にかかる費用に対して、国が1/2の補助を実施し、被災した中小企業等のグループ等の施設の復旧等に対して支援を行う。(継続)
2.施設・設備の復旧・整備に対する貸付け
○東日本大震災
東日本大震災により被害を受けた中小企業者が、県から認定を受けた復興事業計画に基づいて、その計画を実施するために必要な施設・設備の復旧・整備を行う場合に、中小機構と県が協力して、必要な資金の貸し付けを行う。(継続)
○熊本地震
熊本地震により被害を受けた中小企業者が、県から認定を受けた復興事業計画に基づいて、その計画を実施するために必要な施設・設備の復旧・整備を行う場合に、中小機構と県が協力して、必要な資金の貸し付けを行う。(継続)
3.仮設施設整備事業・仮設施設有効活用等助成事業【29年度:6.5億円の内数】
本格的な復興の段階に至っていない地域で事業再開を行うなど、仮設施設によらざるを得ない案件を対象として整備を引き続き行っていく。また、仮設施設の有効活用を図るため、本設化、移設、解体・撤去を行う被災市町村に対して費用を助成。(継続)
4.事業復興型雇用確保事業
被災地での安定的な雇用を創出するため、産業施策と一体となって雇用面から支援を実施する。(継続)
また、一定の範囲内で住宅支援費助成を行うことができるよう制度の拡充を行う。(新規)
第4節 その他の対策
1.特別相談窓口等の設置
全国の日本公庫、商工中金、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会、中小機構地域本部及び経済産業局に設置している特別相談窓口において東日本大震災等による被災中小企業者等からの経営・金融相談等にきめ細かく対応する。(継続)
2.中小企業電話相談ナビダイヤルの実施
どこに相談したらよいか困っている中小企業のために、一つの電話番号で最寄りの経済産業局につながる「中小企業電話相談ナビダイヤル」を実施する。(継続)
3.官公需における被災地域等の中小企業者に対する配慮
毎年度策定する「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」(以下「基本方針」という。)において、東日本大震災及び平成28年熊本地震の被災地域等の中小企業・小規模事業者に対する配慮等を盛り込むとともに、以下の周知を行う。(継続)
(1)経済産業大臣から各府省等の長、都道府県知事、全市町村の長及び東京特別区の長に対し、文書により「基本方針」の趣旨を説明するとともに、中小企業・小規模事業者の受注機会の増大に努めるよう要請する。
(2)地方における「基本方針」の周知徹底を図るための全国説明会(官公需確保対策地方推進協議会)を全都道府県で開催する。
(3)「官公需契約の手引」を作成し、国等の機関、地方公共団体の機関及び商工関係団体等に配布する。
4.被災者雇用開発助成金【29年度予算:0.3億円】
東日本大震災による被災離職者等の方を、ハローワーク等の紹介により、継続して1年以上雇用することが見込まれる労働者として雇い入れる事業主に対して、助成金を支給する。また、対象労働者を10人以上雇い入れる事業主に対して助成金を上乗せする。(継続)
5.放射線量測定指導・助言事業【29年度予算:0.3億円】
今後、避難指示区域の見直し・解除とともに被災企業の事業再開や被災地への企業立地の進展が見込まれる。こうした動きを踏まえ、風評被害対策として、被災企業に対して、国からの委託を受けた民間団体等が、工業品等の放射線量や放射性物質の種類・量の測定、検査及び指導・助言を行う。(継続)
6.福島県等復興産学官連携支援事業【29年度予算:1.1億円】
東日本大震災、原子力災害により、未だ風評の影響が残る主に福島県を対象として、被災企業と大学、公的研究機関、大手企業等との連携の機会を提供し、試作品製作等を支援することにより、商品開発、販路開拓を促進する。(継続)
7.原子力災害対応雇用支援事業【29年度予算:18.7億円】
原子力災害の影響を受けた福島県内の被災者の一時的な雇用の場を確保し、生活の安定を図るための事業を実施する。(継続)
8.被災地の人材確保対策事業【29年度予算:9.8億円】
被災地に若者や専門人材等の幅広い人材を呼び込むとともに、企業に人材確保・定着・育成等のノウハウを提供し、人材獲得力の向上を図る事業を実施する。また、人材獲得に成功している好事例を地域に広める取組を実施する。(新規)
9.福島イノベーション・コースト構想 地域復興実用化開発等促進事業【29年度予算:69.7億円】
ロボット技術など福島イノベーション・コースト構想の重点分野(※)について、地元企業との連携等による地域振興に資する実用化開発等の費用を支援する。(新規)
※廃炉、ロボット、エネルギー、環境・リサイクル、農林水産業、医療機器等の分野を言う。
10.中小・小規模事業者の事業再開等支援事業【29年度予算:112.0億円(基金)】
福島県の原子力被災12市町村で被災した中小事業者の自立を集中的に支援し、当該地域における働く場の創出や、買い物をする場などまち機能の早期回復を図るため、事業再開等に要する設備投資等の費用の一部を補助。平成29年度からは、地元での再開が困難な帰還困難区域の事業者への支援等を拡充する。(継続)
11.原子力災害被災地域における創業等支援事業【29年度予算:2.1億円】
福島県の原子力被災12市町村のまち機能の回復やそれを通じた被災事業者の自立に向け、新規創業や12市町村外からの事業展開等に際して必要となる設備投資等に対する補助を行うとともに、投資の活性化に向けた環境の整備を行う。(継続)
12.生活関連サービスに要する移動・輸送手段の確保支援事業【29年度予算:2.3億円】
福島県の原子力被災12市町村において、地元商店による共同配達や医療サービス等に必要な移動・輸送手段の支援を行う。(継続)
13.人材マッチングによる人材確保支援事業【29年度予算:5.0億円】
福島県の原子力被災12市町村において、人材コーディネーターが被災地の事業者が求める人材ニーズをきめ細かく把握し、12市町村内外からの人材の呼び込みを進めるべく、これらニーズを求職者に幅広く共有し、マッチング支援を行う。(継続)
14.6次産業化等へ向けた事業者間マッチング事業【29年度予算:3.8億円】
事業者の販路開拓や新ビジネス創出等のため、事業者間マッチング等を行った。具体的には、事業者間のマッチングに加え、マッチング後の事業が円滑に進むように専門家による指導等により事業者をサポートを行う。(継続)
15.官民合同チーム個別訪問支援事業【29年度予算:82.0億円(基金)】
官民合同チームにおける、専門家による訪問、相談支援体制を強化。カウンセラー、コンサルタント、中小企業診断士等の専門家を交えたチームを構築し、事業再開、承継・転業、生活再建等の課題について、事業者に寄り添ったコンサルティング支援を実施。平成29年度からは、対象を市町村に拡大。(継続)
16.地域の伝統・魅力等の発信支援事業
福島相双復興官民合同チームにおける、福島県の原子力被災12市町村の被災事業者に対する相談支援体制を強化。カウンセラー、コンサルタント、中小企業診断士等の専門家を交えたチームを構築し、事業再開、承継・転業、生活再建等の課題について、事業者に寄り添ったコンサルティング支援を行う。(継続)