第3章 安定した事業環境の整備
第1節 取引条件の改善
1.下請等中小企業の取引条件の改善
平成28年12月に改正した基準・通達や、自主行動計画に基づく取組の浸透状況を確認する。具体的には、新たに取引調査員を配置して、聴き取り調査の体制をさらに強化し、年間2,000件以上の下請企業ヒアリングを行う。これに加え、発注側も含めて数万社規模の書面でのアンケート調査も行うなど、きめ細かく調査していく。ヒアリング等で問題事案を把握した場合には、必要に応じ個社又は業界団体にフィードバックし、自主行動計画の実行の徹底、改訂などを要請する。(継続)
2.下請代金法の運用強化【29年度予算案:13.9億円の内数】
平成28年12月に改正した下請代金の支払手段に関する通達、及び同日改正された下請代金法に関する運用基準の浸透状況について、様々な機会を捉えて確認していく。
下請取引の適正化、下請事業者の利益保護のため、公正取引委員会と中小企業庁が密接な協力関係の下、下請代金法を執行する。平成29年度においても、公正取引委員会及び中小企業庁が親事業者等に対して書面調査等を実施するとともに、下請代金法違反事実に関する情報提供・申告等を行うための「申告情報受付窓口」により、下請代金法違反に関する情報収集を行い、下請代金法の厳格な運用に努める。さらに、11月に実施する「下請取引適正化推進月間」においては、特別事情聴取を実施し、下請代金法の厳格な運用を図る。また、年末の金融繁忙期に向けた下請事業者の資金繰り確保の点から、親事業者代表者及び関係事業者団体代表者に対し、経済産業大臣、公正取引委員会委員長の連名で、下請代金法に基づく下請取引の適正化の要請文を発出し、同法の周知徹底を図る。(継続)
3.相談体制の強化と下請取引適正化【29年度予算案:13.9億円の内数】
全国48か所に設置する「下請かけこみ寺」において、中小企業の企業間取引に関する相談に対応する。さらに、下請等中小企業の経営者や営業担当者が、親事業者の調達部門への価格交渉を行う上で必要な価格交渉ノウハウについて、事例集やハンドブックの浸透を図るとともに、個別指導やセミナー開催等による広報を行う。
また、下請代金法等の違反行為を未然に防止するため、親事業者の調達担当者等を対象とした講習会を開催し、一層の周知を図るほか、全国で親事業者の取組事例等を紹介し、広く下請代金法等の遵守を呼びかけるシンポジウム等を開催する。さらに、下請適正取引等の推進のためのガイドラインについて、全国で説明会を開催する。(継続)
4.下請中小企業・小規模事業者の自立化支援【29年度予算案:13.9億円の内数】
下請中小企業振興法に基づき、特定の親事業者への取引依存度の高い下請中小企業・小規模事業者が連携して課題解決型ビジネスを行う事業計画の認定を行い、補助金、融資、保証の特例により支援を実施する。また、親事業者の生産拠点が閉鎖又は縮小(予定も含む)された地域における下請中小企業等が行う新分野進出等に対し、補助金により支援を実施する。(継続)
5.下請取引あっせん、商談会による販路開拓支援【29年度予算案:13.9億円の内数】
新たな取引先を開拓したい下請中小企業に対して、「ビジネス・マッチング・ステーション(BMS)」の運用により、自社の希望する業種、設備、技術等の条件に合った製造委託等の受発注情報の提供を行う。また、新たな販路開拓を支援するため、広域商談会を開催する。(継続)
6.下請事業者への配慮要請等【29年度予算案:13.9億円の内数】
平成28年12月に改正した、下請中小企業振興法に基づく振興基準の浸透状況について、様々な機会を捉えて確認していく。加えて、下請事業者への配慮等を行うよう、関係事業者団体の代表者宛てに要請文を発出する。(継続)
第2節 官公需対策
1.「平成28年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」の策定及び周知徹底
毎年度策定する「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」(以下「基本方針」という。)において、国等の新規中小企業者をはじめとする中小企業向け契約目標、中小企業者の受注機会の増大のために実施する措置等を閣議決定する。(継続)
また、基本方針を周知徹底するために以下の取組を実施する。
(1)経済産業大臣から各府省等の長、都道府県知事、全市町村の長及び東京特別区の長に対し、文書により「基本方針」の趣旨を説明するとともに、中小企業・小規模事業者の受注機会の増大に努めるよう要請する。
(2)地方における「基本方針」の周知徹底を図るための全国説明会(官公需確保対策地方推進協議会)を全都道府県で開催する。
(3)地方において新規中小企業者からの調達を推進するための取組に関する情報の共有や連携方策を協議する会議(新規中小企業者調達推進協議会)を開催する。
(4)「官公需契約の手引」を作成し、国等の機関、地方公共団体等の機関及び商工関係団体等に配布する。
2.中小企業・小規模事業者の受注機会増大のための「官公需情報ポータルサイト」【29年度予算案:13.9億円の内数】
中小企業・小規模事業者が官公需に関する受発注情報を入手しやすくするため、国等や地方公共団体がホームページで提供している発注情報等を中小企業・小規模事業者が一括して入手できる「官公需情報ポータルサイト」を運営する。(継続)
第3節 消費税転嫁対策
1.消費税転嫁状況監視・検査体制強化等事業【29年度予算:28.5億円】
消費税の円滑かつ適正な転嫁を行うため、全国に転嫁対策調査官を配置。併せて、消費税の転嫁拒否等の行為に関する情報を収集するため、公正取引委員会と合同で中小企業・小規模事業者全体に対して大規模な書面調査を実施するなど、転嫁拒否行為等の監視・取締りを行う。(継続)
第4節 消費税軽減税率対策
1.中小の小売事業者等に対するレジの導入・システム改修等支援
消費税軽減税率制度の実施にあたり混乱が生じないよう、事業者の準備が円滑に進むように支援を行う。具体的には、〔1〕中小小売事業者等に対して、複数税率に対応したレジの導入等の支援を行うとともに、〔2〕複数税率への対応ができない電子的な受発注システムを用いている中小小売事業者・卸売事業者等に対して、システム改修の支援を行う。(継続)
2.消費税軽減税率対応窓口相談等事業【29年度予算:19.4億円】
消費税軽減税率制度を円滑に実施するため、中小企業団体等と連携して、講習会・フォーラムの開催、相談窓口の設置や巡回指導型専門家派遣を通じたきめ細かいサポート、パンフレット等による周知等を行う。また、消費税転嫁対策窓口相談等も併せて実施する。(継続)
第5節 資金繰り支援、事業再生支援
1.セーフティネット貸付【財政投融資】
セーフティネット貸付のうち経営環境変化対応資金は、社会的、経済的環境の変化の影響等により、一時的に売上高や利益が減少している等の影響を受けている中小企業・小規模事業者に対して、7億2,000万円(日本公庫(中小企業事業)、商工中金)、4,800万円(日本公庫(国民生活事業))の範囲内で融資を実施するものである。平成29年度は、中小企業・小規模事業者の資金繰りを支援するため厳しい業況にある中で認定支援機関等の経営支援を受ける場合や雇用の維持・増加の取組みを行う場合に金利の優遇措置を行う。(継続)
2.(再掲)小規模事業者経営改善資金融資事業(マル経融資)【29年度予算:42.5億円の内数】【財政投融資】
小規模事業者を金融面から支援するため、商工会、商工会議所、都道府県商工会連合会の経営指導を受けている小規模事業者に対して、日本公庫が無担保・無保証・低利で融資を行う。(継続)
3.(再掲)小規模事業者経営発達支援融資事業【29年度予算:42.5億円の内数】【財政投融資】
事業の持続的発展に取り組む小規模事業者を支援するため、経営発達支援計画の認定を受けた商工会・商工会議所による経営指導を受ける小規模事業者に対し、日本公庫が低利で融資を行う。(継続)
4.資本性劣後ローンの推進【29年度予算:161.3億円の内数】【財政投融資】
資本性劣後ローンとは、中小企業・小規模事業者に対して、リスクの高い長期・一括償還の資金(資本性資金)を供給し、財務基盤を強化することで、民間からの協調融資を呼び込み、中小企業・小規模事業者の資金繰りを安定化する日本公庫の融資制度である。平成29年度も引き続き実施していく。(継続)
(注)期限一括償還型の貸付であって、融資を受けた中小企業・小規模事業者が法的倒産となった場合に貸付金の償還順位を他の債権に劣後させる制度。毎期の決算の成功度合いに応じて金利を変更する等の制度設計とすることにより、当該劣後ローンは、金融検査上自己資本とみなすことが可能となっている。
5.(再掲)中小企業・小規模事業者経営力強化融資保証【29年度予算:17.0億円】【財政投融資】
認定支援機関の支援を前提とした、日本公庫による創業または事業拡大・新分野開拓等を行う中小企業・小規模事業者に対する低利融資(女性・若者・シニア創業者は基準金利-0.4%)等を整備することで、経営力の強化を図る。(継続)
6.借換保証の推進
信用保証協会が、複数の借入債務を一本化し、足下の返済負担の軽減を図るため、平成29年度も借換保証を引き続き実施する。(継続)
7.セーフティネット保証
取引先の倒産、自然災害、取引金融機関の経営合理化等により経営の安定に支障を生じている中小企業者等に信用保証協会が一般の保証枠とは別枠での保証を実施するものである(原則100%保証。保証限度額は無担保8,000万円、最大2億8,000万円)。(継続)
8.信用保証協会による経営支援事業【29年度予算:13.0億円】
信用保証協会の利用者又は利用予定している創業(予定)者、経営改善等に取り組む中小企業・小規模事業者に対して信用保証協会が地域金融機関と連携して、専門家派遣をはじめとした経営支援を実施し、資金繰り支援と一体となった支援を実施する。(継続)
9.認定支援機関による経営改善計画策定支援事業
自らでは経営改善計画の策定ができない中小企業・小規模事業者の経営改善を促進するため、中小企業等経営強化法に基づく認定支援機関(税理士・弁護士・地域金融機関等)が中小企業・小規模事業者等に対して行う経営改善計画の策定支援やフォローアップに要する費用の一部(2/3)を補助する。平成29年度からは資金繰実績表等の早期の経営改善計画を策定を支援する取組を行う。(継続)
10.中小企業再生支援協議会【29年度予算61.1億円の内数】
各都道府県の商工会議所に設置した中小企業再生支援協議会において、収益性のある事業を有しているが、財務上の問題も抱えている中小企業・小規模事業者等に対し、窓口相談による課題解決に向けたアドバイスや、関係金融機関等との調整も含めた再生計画の策定支援を行う。(継続)
11.中小企業承継事業再生計画(第二会社方式)
産業競争力強化法に基づき、中小企業承継事業再生計画の認定を行い、その計画に従った事業の承継を行う場合に、許認可承継の特例措置及び金融支援を実施する。(継続)
12.中小企業再生ファンド
再生に取り組む中小企業の再生計画上、資金繰り支援、経営支援や必要な資金供給等を実施するため、中小機構と地域金融機関、信用保証協会等が一体となって、地域内の中小企業の再生を支援する地域型ファンドや広域的に中小企業の再生を支援する全国型ファンドの組成の促進・活用に取り組む。(継続)
13.「経営者保証に関するガイドライン」の利用促進等【29年度予算:1.0億円】
平成25年12月5日に公表された「経営者保証に関するガイドライン」の利用促進を図るため、平成25年度に中小機構地域本部等に設置した相談窓口と、ガイドラインの利用をご希望の方への専門家派遣窓口について、引き続き実施する。また、公的金融機関における経営者保証によらない融資・保証制度についても、引き続き実施する。また、融資慣行として浸透・定着を図る観点から、広く実践されることが望ましい取組事例を継続的に収集し、引き続き公表する。また、中小企業・小規模事業者等を主な対象としてガイドラインの周知を図るための広報も引き続き実施する。(継続)
14.金融行政における中小企業・小規模事業者に対する経営支援の強化等
金融行政方針に基づき、金融機関に対し、担保・保証に過度に依存することなく、取引先企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価(事業性評価)することを通じて、企業に有益なアドバイスとファイナンスを行うよう促す。(継続)
15.低保険料率の農林水産業関係法人向け貿易保険の新設
保険料率が低く、中小企業が利用しやすい「中小企業輸出代金保険」の対象を農林水産業関係法人等に拡大した新保険の活用促進を図る。(継続)
16.沖縄の中小企業金融対策【財政投融資】
沖縄振興開発金融公庫を活用した沖縄の中小企業対策は、日本公庫が行う業務・取組について、同様に行うとともに、沖縄の特殊事情を踏まえ独自の貸付制度の拡充を実施する。(継続)
第6節 経営安定対策
1.中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済制度)
取引先企業の倒産に伴う連鎖倒産を防止するための共済金の貸付を行う倒産防止共済制度について、引き続き、制度への加入促進や共済金の貸付けを着実に実施する。(継続)
2.経営安定特別相談事業
全国の主要な商工会議所及び都道府県商工会連合会に設置されている「経営安定特別相談室」による相談事業を円滑に実施するため、日本商工会議所及び全国商工会連合会の実施する指導事業等を引き続き支援する。(継続)
3.中小企業BCP(事業継続計画)普及の促進
中小企業・小規模事業者の緊急時の事業継続力の強化と企業価値の向上を図るため、BCPの普及・定着の促進に係る取組を引き続き実施する。また、中小企業・小規模事業者自らが策定したBCPに基づき防災施設等の整備を行う者に対して、日本公庫において低利融資を引き続き実施する。(継続)
4.ダンピング輸入品による被害の救済【29年度予算:0.65億円】
貿易救済措置のうちAD措置は、他国企業から我が国に対するダンピング輸入により、国内産業が損害を受けた際に、国内産業からの申請を受けて政府が調査を実施した上で関税の賦課により、公正な市場競争環境を確保する措置である。平成28年度9月に開始した中国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対するAD調査について、国際ルール及び国内法令に基づき公正且つ適切に進めていく。また、企業等への説明会やWTO協定整合的に調査を行うための調査研究を実施する。(継続)
第7節 財政基盤の強化
1.法人税の軽減税率【税制】
年所得800万円以下の部分に係る法人税率(19%)を15%に引き下げる措置。平成29年度税制改正において適用期限を2年間延長する。(継続)
2.中小企業投資促進税制【税制】
機械装置等を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円超の法人を除く)ができる措置。平成29年税制改正において、対象設備の見直しを行ったうえで適用期限を2年間延長する。(継続)
3.少額減価償却資産の損金算入の特例制度
少額減価償却資産(取得価額30万円未満のもの)を取得した場合、年間300万円を限度に、全額損金算入することができる措置(従業員1,000人超の法人を除く)。(継続)
4.欠損金の繰越控除・繰戻還付
欠損金の繰越控除は、当期の事業年度に生じた欠損金を繰り越して翌期以降の事業年度(繰越期間:9年間)の所得金額から控除することができる措置。また、欠損金の繰戻還付は、当期の事業年度に生じた欠損金を1年繰戻し、法人税額の還付を請求することができる措置。(継続)
5.商業・サービス業・農林水産業活性化税制【税制】
商業・サービス業等を営む中小企業が商工会議所等の経営改善指導に基づき設備を取得した場合、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円超の法人を除く)ができる措置。平成29年度税制改正において適用期限を2年間延長する。(継続)
6.交際費等の損金不算入の特例
交際費等を支出した場合、〔1〕定額控除限度額(800万円)までの損金算入、〔2〕支出した接待飲食費の50%までの損金算入を選択適用できる措置。(継続)
7.中小企業投資育成株式会社による支援
中小企業投資育成株式会社において、中小企業の自己資本の充実を促進し、その健全な成長発展を図るため、株式、新株予約権、新株予約権付社債等の引受けによる投資事業及び経営相談、事業承継支援等の育成事業を実施する。(継続)
第8節 人権啓発の推進
1.人権啓発【29年度予算:1.9億円】
健全な経済活動の振興を促進するため、事業者を対象とした人権啓発のためのセミナー等の啓発事業を実施する。また、小規模事業者等が多く、特に重点的な支援が必要な地域又は業種に係る小規模事業者等の活性化のため、経営等の巡回相談事業及び研修事業を実施する。(継続)