第2章 中小企業・小規模事業者の生産性向上支援
第1節 生活性向上・技術力の強化
1.戦略的基盤技術高度化・連携支援事業【28年度予算:139.7億円】
中小ものづくり高度化法の計画認定を受けた中小企業・小規模事業者が大学、公設試等の研究機関等と連携して行う、研究開発等に関する取組を支援した。
また、中小企業等経営強化法に基づいて認定された異分野連携新事業分野開拓計画に従って行う中小企業・小規模事業者が、産学官連携して行う新しいサービスモデルの開発等を支援した。
2.研究開発型ベンチャー企業等のイノベーション創出支援事業【28年度補正予算:15.0億円の内数】
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)において、中堅・中小企業等が、革新的な技術シーズを事業化に結びつける「橋渡し研究機関」の能力を活用して行う共同研究等を支援した。
3.産業技術総合研究所における中堅・中小企業への橋渡しの取組【産業技術総合研究所運営費交付金の内数】
国立研究開発法人産業技術総合研究所において、地域の中堅・中小企業のニーズ等を把握している公設試験研究機関に産総研のイノベーションコーディネータを配置する等の全国規模の連携体制を構築し、地域企業の有する革新的な技術シーズを事業化につなぐ「橋渡し」機能の強化に取り組み、中堅・中小企業等の研究開発を支援した。
4.中小企業のものづくり基盤技術の高度化に向けた総合支援
中小ものづくり高度化法に基づき、高度化指針に沿った特定研究開発等計画について認定を行い、計画が認定された中小企業・小規模事業者に対して戦略的基盤技術高度化支援事業や、融資、保証の特例等により総合的な支援を実施した。
5.研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)【税制】
中小企業・小規模事業者等による研究開発投資について、試験研究費の額の12%相当額の税額控除ができる措置(税額控除限度額は当期の法人税額の25%)及び特別試験研究費(大学等との共同・委託研究や中小企業者からその有する知的財産権の設定又は許諾を受けて行う試験研究)の20%又は30%相当額の税額控除ができる措置(税額控除限度額は当期の法人税額の5%)を講じた。上記に加え、〔1〕試験研究費が過去3年平均より5%超増加する等の場合に、その増加した試験研究費に試験研究費の増加割合(上限30%)を乗じた額を控除できる制度又は〔2〕試験研究費の額が平均売上金額の10%相当額を超える場合に、その超過額に一定の割合を乗じた額を控除できる制度のいずれかを選択して適用できる措置(税額控除限度額は当期の法人税額の10%(平成28年度末まで))を講じた。
6.中小企業技術革新制度(SBIR制度)に基づく支援
新産業の創出につながる新技術開発のための特定補助金等の指定、支出の目標額、特定補助金等を利用して開発した成果の事業化支援措置等の方針の作成等により、引き続き国の研究開発予算の中小企業・小規模事業者への提供拡大、及び技術開発成果の事業化を図った。さらに、技術開発成果の事業化を促進するため、特定補助金等の採択企業の技術力をPRするデータベースや日本公庫による低利融資等の事業化支援措置を中小企業・小規模事業者等に周知し、利用促進を図るとともに、特定補助金等への多段階選抜方式の導入拡大を図った。
7.異分野連携新事業分野開拓
中小企業等経営強化法に基づき、異分野の中小企業が連携し、その経営資源(技術、販路等)を有効に組み合わせて行う新商品・新サービスの開発・販売等の事業計画に対して認定を行い、補助金による支援を行うとともに、融資、保証の特例などにより総合的な支援を実施する。
8.医工連携事業化推進事業【平成28年度予算:35.0億円】
医療機器開発支援ネットワークを推進し、開発初期段階から事業化に至るまでの切れ目ない支援として、約350件の伴走コンサルを実施した。また、ものづくり中小企業や医療機関等の連携による医療機器開発を促進するため、実証事業において43件の医療機器実用化を支援した。(継続)
9.企業活力強化資金【財政投融資】
中小商業者・サービス業者等の経営の近代化及び流通機構の合理化、中小企業者のものづくり基盤技術の高度化の促進並びに下請中小企業の振興を図るため、日本公庫が必要な資金の貸付を行った。平成28年度(平成29年1月末時点)の貸付実績は、11,510件、952億円となった。
10.革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金【28年度補正予算:763.4億円】
国際的な経済社会情勢の変化に対応し、足腰の強い経済を構築するため、経営力向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産性プロセスの改善を行うための中小企業・小規模事業者の設備投資等の一部を支援した。
11.中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業【28年度予算:54.7億円】
中小企業・小規模事業者が抱える様々な経営課題に対応するワンストップ相談窓口として、各都道府県に「よろず支援拠点」を設置し、一歩踏み込んだ専門的な助言を行うとともに、特に高度・専門的な経営課題に対応するために専門家派遣を実施した。(事業開始から平成28年12月までに47.8万件の相談対応)。
12.中小企業等経営強化法
中小企業等経営強化法に基づき、中小企業が策定し認定された経営力向上計画に記載されている新規の機械装置(160万円以上で、生産性が1%向上(10年以内に販売開始)等)を取得した場合に課される固定資産税の課税標準を、3年間に渡り1/2に軽減する措置を講じた。さらに、経営力向上計画の認定を受けた中小企業者に対する日本公庫の融資制度の創設(設備資金については基準金利から金利を0.9%引下げ)等、金融面での支援措置を講じた。
第2節 IT化の促進
1.サービス等生産性向上IT導入支援事業【28年度補正予算:100億円】
中小企業等の経営力を向上させるため、中小企業等の生産性向上に係る関連施策とも連携しつつ、バックオフィス業務等の効率化や新たな顧客獲得等の付加価値向上に資するITツール、アプリ等の導入を支援した。
2.経営力向上・IT基盤整備支援事業【28年度補正予算:13.0億円】
中小企業者等の業種の垣根を越えた企業間の電子データ連携に関する調査を行うとともに、ITを活用して経営力向上を図る取組事例を紹介する相談会等を開催。
3.IT活用促進資金【財政投融資】
中小企業の生産性向上に寄与するIT活用を促進するため、日本公庫による融資を着実に施した(平成28年度の実績は2,331件、258億円(平成29年1月末時点)。
第3節 取引条件の改善
1.下請等中小企業の取引条件の改善
下請等中小企業の取引条件改善に幅広く取り組むため、平成27年12月に下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議(以下、「連絡会議」という)を設置した。連絡会議設置以降、大企業・中小企業双方に対する大規模な調査・きめ細かなヒアリングを行ったところ、金型の保管コストの押しつけや手形払いといった様々な課題が明らかになったことから、平成28年9月15日には、対策パッケージとして「未来志向型の取引慣行に向けて」を公表した。これに基づき、平成28年12月14日、下請中小企業振興法(以下「下請振興法」という。)に基づく振興基準、下請代金の支払に関する通達を見直すとともに、公正取引委員会による下請代金支払遅延等防止法(以下「下請代金法」という。)に関する運用基準の改正に協力し、関係法令の運用を強化した。また、基準等改正を踏まえ、産業界では7業種12団体で自主行動計画を策定することとした。さらに、下請適正取引等の推進のためのガイドライン(以下「下請ガイドライン」という。)を改訂し、親事業者と下請事業者の連携・協力に係るベストプラクティスを追加した。
2.下請代金法の運用強化【28年度予算:9.9億円の内数】
平成28年12月14日、下請代金の支払手段に関する通達を改正するとともに、公正取引委員会による下請代金法に関する運用基準の改正に協力し、法令の運用を強化した。改正した運用基準については、同日に改正した下請振興法に関する振興基準、下請代金の支払手段に関する通達とあわせて、業界団体約870団体(平成28年12月20日付)・親事業者約21万社(平成29年1月6日付)に対して、経済産業省、公正取引委員会の連名で、今般の改正内容の周知徹底、法令遵守に向けた社内体制の整備等を指導するよう要請した。
下請取引の適正化、下請事業者の利益保護のため、公正取引委員会と中小企業庁が密接な協力関係の下、下請代金法を執行した。公正取引委員会及び中小企業庁が親事業者等に対して書面調査等を実施するとともに、下請代金法違反事実に関する情報提供・申告等を行うための「申告情報受付窓口」により、下請代金法違反に関する情報収集を行い、下請代金法の厳格な運用に努めた。さらに、11月に実施する「下請取引適正化推進月間」においては、特別事情聴取を実施し、下請代金法の厳格な運用を図った。
3.相談体制の強化と下請取引適正化【28年度予算:9.9億円の内数】
全国48か所に設置した「下請かけこみ寺」において、中小企業等の企業間取引に関する相談に対応した。また、下請代金法等の違反行為を未然に防止するため、親事業者の調達担当者等を対象とした講習会を開催し、一層の周知を図るほか、全国で親事業者の取組事例等を紹介し、広く下請代金法等の遵守を呼びかけるシンポジウム等を開催した。さらに、下請ガイドラインについて、全国で説明会を開催した。
4.下請中小企業・小規模事業者の自立化支援【28年度予算:9.9億円の内数】
下請振興法に基づき、特定の親事業者への取引依存度の高い下請中小企業・小規模事業者が連携して課題解決型ビジネスを行う事業計画の認定を行い、補助金、融資、保証の特例により支援を実施した。また、親事業者の生産拠点が閉鎖又は縮小(予定も含む)された地域における下請中小企業・小規模事業者が行う新分野進出等に対し、補助金により支援を実施した。
5.下請取引あっせん、商談会による販路開拓支援【28年度予算:9.9億円の内数】
新たな取引先を開拓したい下請中小企業・小規模事業者に対して、「ビジネス・マッチング・ステーション(BMS)」の運用により、自社の希望する業種、設備、技術等の条件に合った製造委託等の受発注情報の提供を行った。また、新たな販路開拓を支援するため、広域商談会を8会場で開催した。
6.下請事業者への配慮要請等【28年度予算:9.9億円の内数】
平成28年12月14日、下請振興法に基づく振興基準を改正した。改正した振興基準については、同日に改正された下請代金法に関する運用基準、下請代金の支払手段に関する通達とあわせて、業界団体約870団体(平成28年12月20日付)・親事業者約21万社(平成29年1月6日付)に対して、経済産業省、公正取引委員会の連名で、今般の改正内容の周知徹底、法令遵守に向けた社内体制の整備等を指導するよう要請した。
また、平成28年12月20日、こうした下請取引の適正化に積極的に取り組む親事業者たる中小企業等の資金繰りに重大な支障が出ないよう、窓口における親身な対応、適時適切な貸出等に努めるよう、政府系金融機関に配慮を要請した。
7.価格交渉サポート事業等【27年度補正予算:4.0億円の内数】
下請等中小企業の経営者や営業担当者が、親事業者の調達部門への価格交渉を行う上で必要な価格交渉ノウハウについて、事例集やハンドブックを作成するとともに、個別指導やセミナー開催等による広報を行った。また、下請ガイドライン作成業種ごとに、同ガイドラインのフォローアップや浸透に向けた取組の強化等を行った。