平成28年度において講じた中小企業施策

平成28年度において講じた中小企業施策

第1章 被災地の中小企業へのきめ細かな支援

第1節 資金繰り支援

1.政策金融事業【28年度予算:157億円の内数】【財政投融資】

東日本大震災及び熊本地震により被害を受けた中小企業・小規模事業者への資金繰り支援として、株式会社日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という。)(国民生活事業及び中小企業事業)・株式会社商工組合中央金庫(以下「商工中金」という。)において、「東日本大震災復興特別貸付」及び「平成28年熊本地震特別貸付」(平成28年6月制度開始)を継続的に実施している。本制度の運用開始後、平成28年12月末までの貸付実績は、東日本大震災復興特別貸付が、約29万7千件、約6兆357億円、平成28年熊本地震特別貸付が、約1万2千件、約1,650億円となった。また、東日本大震災においては、原発事故に係る警戒区域等の公示の際に当該区域内に事業所を有していた中小企業・小規模事業者や、地震・津波により事業所等が全壊・流失した中小企業・小規模事業者に対しては、県の財団法人等を通じ、実質無利子化する措置も平成23年度に創設(平成23年8月22日より措置)しているところ、平成28年度も引き続き実施した。

2.マル経・衛経融資の貸付限度額・金利引下げ措置の拡充【財政投融資】

東日本大震災及び、平成28年熊本地震により直接又は間接的に被害を受けた小規模事業者に対し、無担保・無保証・低利で利用できる日本公庫によるマル経・衛経融資の貸付限度の拡充や金利の引下げを実施した。(東日本大震災型の平成28年度の実績は、マル経融資で503件、1,680百万円、衛経融資で4件、7百万円(平成29年1月末時点)。平成28年度熊本地震型の平成28年度の実績は、マル経融資で38件、157百万円、衛経融資の実績はなし(平成29年1月末時点)。)

3.信用保証事業【28年度補正予算184億円の内数】

東日本大震災により被害を受けた中小企業等を対象に、既存の一般保証や災害関係保証、セーフティネット保証とは別枠の新たな保証制度を平成23年度に創設。平成27年度も、特定被災区域内において引き続き実施した(100%保証。保証限度額は無担保8,000万円、最大2億8,000万円。)。本制度の運用を開始した平成23年5月23日から平成28年12月末までの保証承諾実績は、129,773件、2兆6,361億円であった。

また、平成28年4月に発生した熊本地震においては、九州全域でセーフティネット保証4号(平成28年4月14日より順次発動)を発動したほか、熊本県全域(平成28年4月26日発動)では災害関係保証も発動した。両制度の平成28年12月末までの保証承諾実績は、6,538件、1,067億円であった。

4.原子力災害に伴う「特定地域中小企業特別資金」

原子力発電所事故の被災区域に事業所を有する中小企業等が福島県内において事業を継続・再開する場合に必要な事業資金(運転資金・設備資金)を長期・無利子、無担保での融資を行った。

第2節 二重債務問題対策

1.「産業復興相談センター」及び「産業復興機構」による事業再生支援【28年度予算:25.6億円】

平成23年度に、被災各県の中小企業再生支援協議会の体制を拡充して「産業復興相談センター」を設立するとともに、債権買取等を行う「産業復興機構」を設立することで、東日本大震災により被害を受けた中小事業者等の事業再生支援を強化した。平成28年度には、事業者への相談体制を拡充させるため、福島県いわき市に常設窓口を新たに開設。各県の産業復興相談センターにおいては、平成29年2月28日までに5,594件の事業者からの相談に対応しており、そのうち対応を終了したものは5,444件となった。主な実績としては、金融機関等による金融支援について合意した案件は1,029件、うち債権買取は333件となった。

2.「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構」による事業再生支援

被災事業者の二重ローン問題に対応するため、東日本大震災事業者再生支援機構では旧債務に係る返済負担の軽減等の支援を実施した。東日本大震災事業者再生支援機構では、平成24年3月5日の業務開始以来これまでに2,502件の相談を受け付けており、そのうち687件の事業者に対して、債権買取等の再生支援を行う旨の決定をした(平成29年2月末現在)。また、株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法に基づき、平成28年12月20日に主務大臣の認可を受けて、支援決定期間を平成30年2月22日まで1年間延長した。

3.再生可能性を判断する間の利子負担の軽減

東日本大震災及び原子力発電所の事故による被害を受けた中小企業者や小規模事業者等が産業復興相談センターを活用した事業再建に取り組む際に、金利負担を低減することにより、早期の事業再生の実現を図ることを目的とする事業、具体的には産業復興相談センターによる再生計画策定支援の期間中に発生する利子を補填するもので平成23年度に創設した。本施策については、平成28年度も引き続き実施した。

4.被災中小企業復興支援リース補助事業

被災中小企業の二重債務負担の軽減を図るため、東日本大震災に起因する設備の滅失等により債務を抱えた中小企業に対し、設備を再度導入する場合のリース料の10%を補助した。

第3節 工場等の復旧への支援

1.中小企業組合等共同施設等災害復旧事業

○東日本大震災【28年度予算:290億円】

東日本大震災に係る被災地域の復旧及び復興を促進するため、

〔1〕複数の中小企業等から構成されるグループが復興事業計画を作成し、地域経済や雇用維持に重要な役割を果たすものとして県から認定を受けた場合に、計画実施に必要な施設・設備の復旧にかかる費用に対して、国が1/2、県が1/4の補助、

〔2〕商工会等の中小企業者のための指導・相談施設等の災害復旧事業にかかる費用に対して、国が1/2の補助

を実施し、被災した中小企業等のグループ等の施設の復旧等に対して支援を行った。

○熊本地震【28年度補正予算:1003.5億】

熊本地震に係る被災地域の復旧及び復興を促進するため、

〔1〕複数の中小企業等から構成されるグループが復興事業計画を作成し、地域経済や雇用維持に重要な役割を果たすものとして県から認定を受けた場合に、計画実施に必要な施設・設備の復旧にかかる費用に対して、国が1/2、県が1/4の補助、

〔2〕商工会等の中小企業者のための指導・相談施設等の災害復旧事業にかかる費用に対して、国が1/2の補助、

〔3〕激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和37年法律第150号)に基づき、事業協同組合等が行う共同施設の災害復旧事業にかかる費用に対して、国が1/2、県が1/4の補助、

〔4〕商店街における、被災したアーケードの撤去・改修、共同施設の改修・建替え、街路灯等の設備の改修等に要する費用に対して、国が1/2、県が1/4の補助

を実施し、被災した中小企業等のグループ等の施設の復旧等に対して支援を行った。

※〔1〕及び〔2〕については、28年度予算を繰り越して29年度においても引き続き公募等を実施する。

2.施設・設備の復旧・整備に対する貸付け

○東日本大震災

東日本大震災により被害を受けた中小企業者が、県から認定を受けた復興事業計画に基づいて、その計画を実施するために必要な施設・設備の復旧・整備を行う場合に、独立行政法人中小企業基盤整備機構(「以下「中小機構」という。)と県が協力して、必要な資金の貸し付けを行った。

○熊本地震

熊本地震により被害を受けた中小企業者が、県から認定を受けた復興事業計画に基づいて、その計画を実施するために必要な施設・設備の復旧・整備を行う場合に、中小機構と県が協力して、必要な資金の貸し付けを行った。

3.仮設工場仮設店舗整備事業【28年度予算:8.3億円の内数】

東日本大震災の被害を受けた中小企業者等の早期事業再開を支援するため、中小機構が仮設工場や仮設店舗等を整備し、被災市町村を通じて原則無償で貸し出す事業を実施しており、平成29年1月末までに6県52市町村588箇所に施設を設置している。また、平成26年4月より仮設施設の本設化、移設、撤去に要する費用の助成事業を実施しており、平成29年1月末までに38件の助成を実施している。

4.事業復興型雇用創出事業【28年度予算:40.6億円】

被災地での安定的な雇用を創出するため、産業施策と一体となって雇用面から支援を実施した。

第4節 その他の対策

1.特別相談窓口等の設置

全国の日本公庫、商工中金、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会、中小機構地域本部等及び経済産業局に特別相談窓口を設置し、東日本大震災等の被災中小企業者等からの経営・金融相談に応じた。

2.中小企業電話相談ナビダイヤルの実施

どこに相談したらよいか困っている中小企業のために、一つの電話番号で最寄りの経済産業局につながる「中小企業電話相談ナビダイヤル」を実施した。

3.官公需における被災地域等の中小企業者に対する配慮【28年度予算:9.9億円】

「平成28年熊本地震」に関し、被災地域の中小企業・小規模事業者に対する官公需における配慮について、4月27日付で中小企業庁長官名にて各府省等あて要請文書を発出するとともに、その後、毎年度策定する「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」にも盛り込んだ。また、引き続き、東日本大震災の被災地域等の中小企業・小規模事業者に対する配慮等を同基本方針に盛り込み、周知徹底を図った。

4.被災者雇用開発助成金【28年度予算:2.2億円】

東日本大震災による被災離職者等の方を、ハローワーク等の紹介により、継続して1年以上雇用することが見込まれる労働者として雇い入れる事業主に対して、助成金を支給する。また、対象労働者を10人以上雇い入れる事業主に対して助成金を上乗せする。

5.放射線量測定指導・助言事業【28年度予算:0.3億円】

今後、避難指示区域の見直し・解除とともに被災企業の事業再開や被災地への企業立地の進展が見込まれる。こうした動きを踏まえ、風評被害対策として、工業品等の放射線量や放射性物質の種類・量の測定、検査及び指導・助言を行った。

6.福島県等復興産学官連携支援事業【28年度予算:1.0億円】

東日本大震災、原子力災害により、未だ風評の影響が残る福島県、宮城県を対象として、被災企業と大学、公的研究機関、大手企業等との連携の機会を提供し、試作品製作等を支援することにより、商品開発、販路開拓を促進した。

7.原子力災害対応雇用支援事業【28年度予算:42.4億円】

原子力災害の影響を受けた福島県内の被災者の一時的な雇用の場を確保し、生活の安定を図るための事業を実施した。

8.震災等対応雇用支援事業

被災地における被災者の一時的な雇用の場を確保し、生活の安定を図るための事業を実施した。

9.商店街震災復旧等事業(商店街にぎわい創出事業)【28年度予備費:11億円の内数】

熊本地震により被災した地域(熊本県)の商店街による商店街のにぎわいを取り戻すための事業の実施にかかる費用に対して支援を行った。

10.福島イノベーション・コースト構想 地域復興実用化開発等促進事業【28年度予算:69.7億円】

ロボット技術など福島イノベーション・コースト構想の重点分野(※)について、地元企業との連携等による地域振興に資する実用化開発等の費用を支援した。(新規)

※廃炉、ロボット、エネルギー、環境・リサイクル、農林水産業、医療機器等の分野を言う。

11.中小・小規模事業者の事業再開等支援事業【28年度予算:74.0億円(基金)】

福島県の原子力被災12市町村で被災した中小事業者の自立を集中的に支援し、当該地域における働く場の創出や、買い物をする場などまち機能の早期回復を図るため、事業再開等に要する設備投資等の費用の一部補助を行った。

12.原子力災害被災地域における創業等支援事業【28年度補正予算:1.5億円】

福島県の原子力被災12市町村のまち機能の回復やそれを通じた被災事業者の自立に向け、新規創業や12市町村外からの事業展開等に際して必要となる設備投資等に対する補助を行うとともに、投資の活性化に向けた環境の整備を行った。

13.生活関連サービスに要する移動・輸送手段の確保支援事業【28年度予算:1.4億円】

福島県の原子力被災12市町村において、地元商店による共同配達や医療サービス等に必要な移動・輸送手段の支援を行った。

14.人材マッチングによる人材確保支援事業【28年度予算:5.0億円】

福島県の原子力被災12市町村において、人材コーディネーターが被災地の事業者が求める人材ニーズをきめ細かく把握し、12市町村内外からの人材の呼び込みを進めるべく、これらニーズを求職者に幅広く共有し、マッチング支援を行った。

15.6次産業化等へ向けた事業者間マッチング事業【28年度予算:3.7億円】

事業者の販路開拓や新ビジネス創出等のため、事業者間マッチング等を行った。具体的には、事業者間のマッチングに加え、マッチング後の事業が円滑に進むように専門家による指導等により事業者をサポートを行った。

16.地域の伝統・魅力等の発信支援事業【28年度予算:0.5億円】

福島県の原子力12市町村の地域の魅力や伝統工芸品や特産品(地元の農・商工産品)等を国内外に発信するため、展示会への出展等を行う事業者等へ支援を行った。

17.官民合同チーム個別訪問支援事業【28年度予算:82.0億円(基金)】

福島相双復興官民合同チームにおける、福島県の原子力被災12市町村の被災事業者に対する相談支援体制を強化。カウンセラー、コンサルタント、中小企業診断士等の専門家を交えたチームを構築し、事業再開、承継・転業、生活再建等の課題について、事業者に寄り添ったコンサルティング支援を行った。

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