第2部 中小企業のライフサイクル 

2 まとめ

ここまで、事業展開の方針や、不足している人材の類型によって、人材不足によりもたらされる経営や職場への影響も異なることを確認した。

このような違いは、人材不足の認識に至る状況についても差異があることが背景として推察される。中核人材は各部門の中心的役割や組織の管理を担う人材であり、複数の労働人材を指揮する立場にあるが、企業においてはそれらを担う人材の数が少なく、そうした人材が不足することは、新事業展開や成長の機会を失うとともに、日々の企業経営にも直接的な影響が生じることから、その不足感はすぐに切実なものとして認識される。これに対し、労働人材に関しては、中核人材に比べて相対的に代替性があり、短期的には長時間労働等で対応可能であるが、人材不足の度合いが増してくると、労働環境の悪化が深刻化し、更に人材の確保が困難になり、事業活動の継続の観点からも経営に影響が生じるといった認識のされ方になると考えられる。

中核人材、労働人材共に、人材不足は中小企業の経営や職場環境に望ましくない影響をもたらすこととなるため、中小企業は、自らが目指す事業展開の方針を達成するために、よりよい職場環境を整え、的確に求める人材を確保し、定着を図ることが重要である。

コラム2-4-1

「中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会」取りまとめ

多様な求職者(女性・高齢者等)から選ばれる職場づくりや生産性向上による人手不足対応について、実態と政策課題を抽出・分析し、必要な政策を検討するために、2016年10月21日に「中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会」が立ち上げられた。当研究会は2017年3月3日までに計5回開催され、実際の事例の紹介や人手不足対応に関する意見等、活発な検討がなされた。

例えば、一日一時間といった「プチ勤務」を可能とすることで、フルタイムの勤務が難しい専業主婦・主夫にも勤務が可能となり人材確保に成功した事例や、急な休暇希望にも対応できることを求人広告に明示するなど、柔軟な働き方について訴求効果が高い情報の明示により人材確保に成功した事例の紹介があった。また、求職者は企業の長所のみを重視しているのではなく、企業の短所や欠点をうまく伝えることは、求職者に親しみやすい印象を与え、かえって効果的なこともあるとの意見や、働き手にとっての魅力は何かと問われるとスムーズに回答できず、自社の特徴や魅力を働き手目線で捉え直していない中小企業も多いとの意見、さらには、人手不足に対応するには、多様な働き手に活躍してもらうための採用・定着面での工夫、及び生産性の向上といった人に頼らない形での工夫の二つの方策があり、それらを上手く組み合わせることが重要といった意見が出された。このように、事例分析を通じて、研究会では様々な角度からの検討がなされた。

これらの意見や100を超える中小企業の実例から、ポイントとなる考え方を抽出し、人手不足対応のガイドラインとして、2017年3月に研究会の報告書が取りまとめられた。具体的には、経営課題や業務を見つめ直し、業務についての生産性や求人像を見つめ直し、働き手の立場にたって人材募集や職場環境の整備を考えるという三つのステップの重要性が事例とともに記されている。

コラム2-4-1〔1〕図 中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会概要(大臣懇談会で使用)
コラム2-4-1〔2〕図 中小企業・小規模事業者の人手不足への対応研究会の事例(その1)
コラム2-4-1〔3〕図 中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会の事例(その2)
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