第2部 中小企業のライフサイクル

第4節 新たな潮流

1 第4次産業革命と我が国の対応

〔1〕第4次産業革命のインパクト

近年、IoT28、ビッグデータ、AI(人工知能)、ロボット等(以下、「新技術」という。)の革新が注目されている。自然や社会のあらゆる活動、情報がデータ化され、ネットワークで連携することによりリアルタイムでの情報のやり取りが可能となっている。また、集めた大量のデータを分析することで、これまでになかった新しいサービス、新しい価値が生まれることが期待されている。中小企業が新技術を活用するに当たっての課題も指摘されており、十分に対策をした上での活用が必要となる。本節では、このような先進的な技術の可能性と課題の両面について分析する。

28 IoTとは「Internet of Things:モノのインターネット」の略で、あらゆるモノがセンサーや無線通信等を介してインターネットにつながる仕組みのこと。

〔2〕第4次産業革命による新たな成長と産業構造・就業構造の変革

IoT等の新技術の活用により、これまで実現不可能と思われていた社会の実現が可能になる一方で、産業構造や就業構造が劇的に変わる可能性がある29。具体的には、大量生産・画一的サービスから、個々の二-ズに合わせた製品・サービスのカスタマイズ化が進んでいき、新たな付加価値の源泉は「データ」となる。データの取得、ビッグデータ化、分析、利活用のサイクルを回し潜在需要を獲得する企業・産業が成長していく一方で、達成できない企業・産業は厳しい状況となる。これまで業種、企業、事業の壁に隔てられ、囲いこまれてきたデータ・技術・人・資金を従来の壁を越えて融合させていくところで、新たな価値が生み出される可能性がある。このため、従来の同業種間での再編から、全く別の業種との再編や相互参入が生まれ、結果として、産業の壁を越えた大きな再編が起きる可能性がある。

29 経済産業省 産業構造審議会 新産業構造部会「新産業構造ビジョン」

第4次産業革命の基盤となる技術の進歩により、人に求められる仕事の内容、役割が変化し、一人一人の働き方や社会全体の就業構造にも大きな影響を及ぼす。AIやロボットの活用により定型労働のみならず非定型労働においても省力化が進み、人手不足解消の手段となることが期待される。また、AIやロボットを使いこなす業務や、人が直接関わることに価値がある業務等が新たに生まれる可能性もある。こうした状況下では、予見が難しいため急激な産業構造の変化が起こる可能性がある一方で、中小企業にとってもグローバルに成長する新たなチャンスにもなり得る。

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