第2部 中小企業のライフサイクル 

2 廃業に関する検討状況及び課題

ここからは、廃業予定の企業について取り上げる。経営者や従業員が培ってきた事業をやめるという選択は、重大な決断といえる。経営者がそういった選択を考えている背景について分析していく。

第2-2-115図は、組織形態(中規模法人・小規模法人・個人事業者)別に廃業の意向について見たものである。廃業の意向は、個人事業者で最も高く26.0%に上り、小規模法人が7.9%と、小規模事業者ほど廃業する意向を持っている割合が高い傾向にある。

第2-2-115図 組織形態別に見た、廃業の意向
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〔1〕中規模法人の廃業に関する検討状況及び課題

はじめに、廃業を考えている中規模法人の特徴について見ていく。第2-2-116図は、直近の売上高経常利益率を廃業意向の有無別に見たものである。廃業意向がある企業では、廃業意向がない企業に比べて、経常赤字に陥ってしまっている企業の割合が35.2%と高く、収益力が落ち込んでいる企業が多いことが分かる。

第2-2-116図 廃業意向別に見た、売上高経常利益率
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次に、第2-2-117図は、廃業意向の有無別に見た自己資本比率であるが、「債務超過」が14.8%と廃業意向のない企業に比べて多いものの、他方で自己資本比率が50%以上の企業も29.5%おり、財務面から見ると健全な企業も一定割合いることが分かる。

第2-2-117図 廃業意向別に見た、自己資本比率
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こうした企業が廃業を考えている理由を見たものが、第2-2-118図である。上述のとおり、収益力が悪化している企業が多いこともあり、「業績が厳しい」という回答が最も多く、「後継者を確保できない」、「会社の将来性がない」、「もともと自分の代でやめるつもりだった」が続く。事業自体の悪化や会社の将来性に不安がある一方で、後継者難を廃業理由にあげる者も33.3%いる。

第2-2-118図 廃業を考えている理由
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次に、こうした廃業を考えている中規模法人が事業の引継ぎを検討するため必要な支援について確認する。第2-2-119図は、廃業意向のある中規模法人が事業の引継ぎを検討するために必要な支援や解決策について見たものである。「後継者の確保」が46.0%と最も多く、「事業の一部の譲渡・売却・統合」と合わせると、「事業の承継」に向けた担い手の確保が求められている。他方で、「本業の強化・業績改善」といった事業の立て直しを必要としている経営者も38.1%いるため、経営改善に向けた取組を支援することも重要である。

第2-2-119図 事業の引継ぎを検討するために必要な支援や解決策
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第2-2-120図は、廃業する上で理想的なタイミングについて見たものである。72.6%の企業が、累積黒字が確保できているタイミングに廃業したいと考えている。借入れ等の負債が重くなる前に、廃業することを希望していることが推察される。

第2-2-120図 廃業する上で理想的なタイミング
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第2-2-121図は、廃業を考えている時期について見たものである。具体的な時期を考えている企業に関しては、「5年超」が最も多く22.1%おり、廃業に関しても長いスパンで検討されているとうかがえる。他方で、「未定」と回答する企業が45.5%と最も多いため、こうした企業の中には廃業ではなく事業の引継ぎを検討できる者も多いと考えられる。

第2-2-121図 廃業を考えている時期
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特に、廃業を検討している中規模法人では、第2-2-119図で見たとおり事業の引継ぎを行う上でも「本業の強化や業績改善」といった事業の立て直しが必要な企業もある一方、「後継者の確保」や「事業の一部の譲渡・売却・統合(M&A)」といった支援を必要とする者もいる。廃業を考えつつも事業の継続について一定の望みがある場合には、早期に周囲や支援機関に相談し、助言を得ながら何らかの形で次世代に経営資源を引き継ぐことを検討するべきではないだろうか。

〔2〕小規模事業者の廃業に関する検討状況及び課題

ここからは、小規模事業者の廃業に関する検討状況及び課題について見ていく。前述のとおり、小規模事業者では中規模法人に比べ、廃業を検討している者の割合が高い。こうした背景にある点を分析していく。

第2-2-122図は、小規模事業者が廃業を考えている理由について見たものである。組織形態を問わず最も多いのが、「後継者を確保できない」であるが、個人事業者の場合は「もともと自分の代限りでやめるつもりだった」との回答が続き、小規模法人では「会社や事業の将来性がない」が続いている。

第2-2-122図 廃業を考えている理由(小規模法人・個人事業者)
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廃業を考えている小規模事業者が、事業の引継ぎを検討するために必要な支援や解決策について見たものが、第2-2-123図である。「後継者の確保」が最も多い一方、「本業の強化・業績改善」と回答した者が次に多くなっている。後継者難だけではなく、事業自体の収益力が弱体化しており将来性が見通しにくい状況に陥っていて、廃業を検討している事業者もいると推察される。

第2-2-123図 事業の引継ぎを検討するために必要な支援や解決策(小規模法人・個人事業者)
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小規模事業者が実際に廃業をする上で問題になりそうなことを聞いたものが第2-2-124図である。組織形態を問わず、「廃業後の生活費の確保」が最も多く、個人事業者では「廃業後の自分の生きがい」が挙げられ、経営者個人のその後の生活に対する悩みが多くなっている。他方で、小規模法人では「借入れなどの負債の整理」や「役員や従業員の生計の維持」といった金銭面での課題も多くなっている。

第2-2-124図 廃業する上で問題になりそうなこと(小規模法人・個人事業者)
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次に、廃業する上で理想的なタイミングについて見たものが第2-2-125図である。個人事業者、小規模法人ともに、赤字が解消せず廃業できないとする者も一定割合いる一方、累積黒字が確保できているうちに廃業したいと考える事業者が多い。事業が悪化し、借入れ等が重くなる前に廃業したいという小規模事業者が多いことが分かる。

第2-2-125図 廃業する上で理想的なタイミング(小規模法人・個人事業者)
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実際に、廃業を考えている時期について見たものが、第2-2-126図である。具体的な時期を考えている企業に関しては、「5年超」が最も多く個人事業者で15.3%、小規模法人で21.7%おり、廃業に関しても長いスパンで検討されているとうかがえる。他方で、「未定」と回答する企業が6割を超えており、こうした小規模事業者の中には事業の引継ぎを検討できる者もいると考えられる。

第2-2-126図 廃業を考えている時期(小規模法人・個人事業者)
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こうした廃業を考えている小規模事業者が、自社の事業や資産を他社に譲ることについて見たものが、第2-2-127図である。小規模法人では、「譲りたいと思う」、「できれば譲りたいと思う」と回答した割合が「譲りたくない」を上回っているものの、個人事業者では逆の結果となっており、個人事業者では廃業後の事業や資産の譲渡に抵抗感が強いことが見て取れる。

第2-2-127図 廃業に際して自社の事業や資産を他社に譲ることについて(小規模法人・個人事業者)
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廃業を検討している企業は、事業の引継ぎ、円滑な廃業のいずれの選択をするにも、周囲から適切な助言を得ることが重要と考えられる。第2-2-128図は、廃業意向のある小規模事業者の過去の相談相手について見たものである。廃業意向のある小規模事業者では、「商工会・商工会議所」、「親族、友人・知人」に相談している割合が高く、小規模法人ではこれらに続いて「顧問の公認会計士・税理士」が42.1%と多くなっている。こうした、小規模事業者の相談相手になっている周囲が、必要な支援ができる専門家を紹介するなどの助言を行うことが重要である。

第2-2-128図 廃業意向の小規模事業者の相談相手
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特に、廃業を検討している小規模事業者では、第2-2-123図で見たとおり事業の引継ぎを行う上でも「本業の強化・業績改善」等、事業の立て直しが必要な事業者も多く、「後継者の確保」に関しても相談された者だけでは解決が難しい。小規模事業者が抱える課題は様々であるが、特に相談者が事業承継や事業の一部だけでも他者に譲渡・売却・統合(M&A)を希望するのであれば、相談相手は、事業の立て直しに必要な助言を与える、あるいは解決につながる支援機関を紹介するといった重要な役割が期待される。

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