2 過去の起業関心者を除く起業無関心者の実態
続いて、過去の起業関心者を除く起業無関心者について、起業希望者・起業準備者と比較することで、過去の起業関心者を除く起業無関心者の実態を明らかにしていく。
〔1〕過去の起業関心者を除く起業無関心者の現在の職業
はじめに、第2-1-13図は、過去の起業関心者を除く起業無関心者の現在の職業の構成について、起業希望者・起業準備者と比較したものであるが、これを見ると、過去の起業関心者を除く起業無関心者は起業希望者・起業準備者に比べ、「専業主夫・主婦」、「パート・アルバイト」、「無職」の割合が高いことが分かる。
〔2〕過去の起業関心者を除く起業無関心者の個人年収分布
続いて、過去の起業関心者を除く起業無関心者の個人年収分布について見たものが第2-1-14図であるが、前掲の第2-1-13図で見たとおり、過去の起業関心者を除く起業無関心者には、起業希望者・起業準備者に比べて、専業主夫・主婦、パート・アルバイト、無職といった属性の人が多く含まれているため、過去の起業関心者を除く起業無関心者の約半数は年収200万円未満となっていることが分かる。
〔3〕起業に対するイメージ
第2-1-15図は、過去の起業関心者を除く起業無関心者と起業希望者・起業準備者のそれぞれが起業に対して持っているイメージを比較したものであるが、これを見ると、過去の起業関心者を除く起業無関心者は、「リスクが高い(失敗時の負債等)」、「所得・収入が不安定」の二つのマイナスイメージが突出しているのに対し、起業希望者・起業準備者は、「リスクが高い(失敗時の負債等)」、「所得・収入が不安定」の項目については過去の起業関心者を除く起業無関心者と共通しているが、そのほか、「労働時間が柔軟」、「仕事と家庭との両立が可能」、「所得・収入が高い」、「チャレンジしやすい」等のプラスのイメージも合わせて持っていることが分かる。このように、一度も起業に関心を持ったことのない起業無関心者は、起業に対してマイナスのイメージを持っている割合が高いため、起業のプラスの面を周知することで、今後こうした起業無関心者が起業に関心を持つきっかけとなると考えられる。
〔4〕過去の起業関心者を除く起業無関心者における周囲の環境
次に、過去の起業関心者を除く起業無関心者と起業希望者・起業準備者に対して、周囲に企業経営者がいるかを聞いたものが第2-1-16図であるが、起業希望者・起業準備者は「友人・知人」や「両親」をはじめとして、周囲に企業経営者がいる割合が過去の起業関心者を除く起業無関心者に比べて高いことが分かる。他方で、起業無関心者のうち約7割が「周囲にいない」と回答していることからも、起業無関心者が起業に関心を持たないのは、自分の身近に起業家や企業経営者がいないため、起業して経営者になることについての具体的なイメージができないことも理由の一つであると考えられる。
〔5〕起業家教育と起業への関心
起業に関連する教育が起業への関心の有無に影響するかについて確認するため、過去の起業関心者を除く起業無関心者と起業希望者・起業準備者それぞれが、これまでに受講したことのある各種経営、起業、就労等に係る教育やプログラム等(以下、「起業家教育」という。)の内容について見たものが第2-1-17図である。これを見ると、過去の起業関心者を除く起業無関心者は、起業希望者・起業準備者に比べて起業家教育の受講割合が極端に低いことが分かる。他方で、起業希望者・起業準備者は、様々な起業家教育を受講していることからも、起業家教育の受講は、起業に関心を持つきっかけの一つになっていることが推察される。
以上、過去の起業関心者を除く起業無関心者の実態について、過去の起業関心者を除く起業無関心者と起業希望者・起業準備者を比較することで明らかにしてきた。第1節で見てきたとおり、我が国において、一度起業に関心を持った人が、起業準備を行う割合は、国際的に見ても高い水準にある。このことから、起業に関心を持つ者を増やすことが、我が国全体の起業を増やす契機となると考えられる。また、第2-1-16図で見たように、周囲の環境が起業への関心に与える影響は大きい。身近に起業家や企業経営者が増えることで、起業についてのプラスのイメージが広がり、過去の起業関心者を除く起業無関心者が起業に対して関心を持つきっかけとなる可能性がある。そのためにも、まずは、起業希望者や起業準備者が円滑な起業を実現できる環境の整備や支援を行うことが重要である。
このような観点から、次項では、起業希望者と起業準備者に着目して分析を行っていく。