第2章 新陳代謝の促進
<小規模企業振興基本計画における目標(2)>
(2)新陳代謝の促進
-多様な人材・新たな人材の活用による事業の展開・創出-
小規模企業は、経営者・従業員の高齢化、後継者不足等により、廃業が増加する傾向にある。他方で、女性・若者・シニアなど多様な人材に対して、小規模企業は、様々な価値観に基づく多様な働き方を提供している。また、我が国全体としての雇用拡大にも貢献している。
多様な働き方を提供し、自己実現、社会貢献等の生きがいを生み出す小規模企業の起業・創業や第二創業を促進する。また、事業承継により、本来我が国経済社会にとって有用な経営資源の散逸を防ぎ、地域の経済社会の発展に結びつけていく。事業の継続が見込まれない場合には、事業の廃止を円滑化することで、その生活の安定や再チャレンジに向けた環境を整備する。さらに、小規模企業の人材確保・育成を強化し、多様で新たな人材がその能力を発揮できる環境を整備することにより、誰もが小規模企業で働きやすい地域社会の実現を目指す。
第1節 創業・第二創業支援
1.創業・第二創業促進補助金【27年度予算:7.6億円の内数】
女性・若者等の創業者や、事業承継を契機に既存事業を廃業し、新分野に挑戦する第二創業者に対して、店舗借入費や設備費等(第二創業の場合、廃業コストを含む)に要する費用の一部の支援した。
2.新創業融資制度【財政投融資】
新たに事業を開始する者や事業を開始して間もない者に対し、無担保・無保証人で日本公庫が融資を行う制度。
3.女性、若者/シニア起業家支援資金【財政投融資】
多様な事業者による新規事業の創出を支援するため、女性や30歳未満の若者、55歳以上の高齢者のうち、開業して概ね7年以内の者を対象に、日本公庫(中小企業事業・国民生活事業)が優遇金利で融資する制度である。平成11年の制度創設から、平成27年12月末までに、135,455件、6,798億円の融資を実施している。
4.再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)【財政投融資】
日本公庫が、事業に失敗した起業家の経営者としての資質や事業の見込み等を評価することにより、再起を図る上で、困難な状況に直面している者に対して融資を実施した。
5.創業者向け保証
民間金融機関による創業者への融資を後押しするため、信用保証協会において、これから創業する者又は創業後5年未満の者等を対象とする保証制度を実施した。
6.起業・創業時に必要となるリスクマネーの供給強化
平成28年1月末までに、産業革新機構がベンチャー企業に対して、74件、1861億円の投資を実施した。また、株式会社日本政策投資銀行や商工中金の活用等により、起業・創業時及び事業化に必要となるリスクマネーの供給を図った。
7.ファンド出資事業(起業支援ファンド、中小企業成長支援ファンド)
民間の投資会社が運営する投資ファンドについて、中小機構が出資(ファンド総額の1/2以内)を行うことで、民間資金の呼び水としてファンドの組成を促進し、創業又は成長初期の段階にあるベンチャー企業(中小企業)や新事業展開等により成長を目指す中小企業への投資機会の拡大を図る事業である。起業支援ファンドについては、累積出資先ファンド数91件、出資約束総額1,508億円、累積投資先企業数2,381社に至った(平成27年3月末)。また、中小企業成長支援ファンドについては、累積出資先ファンド数75件、出資約束総額4,356億円、累積投資先企業数801社に至った(平成27年3月末)。
8.地域創業促進支援委託事業【27年度予算:4.4億円の内数】
全国で「創業スクール」を開催し、創業予備軍の掘り起こしをはじめ、創業希望者の基本的知識の習得からビジネスプランの策定までを支援した。また、大学等における起業家教育の普及や、小中学校を対象にした地元起業家等との交流などにより「起業家教育」の充実化を図り、創造性や積極性等からなる「起業家精神」を有する人材の裾野拡大を図った。
9.ベンチャー創造支援事業【27年度予算:3.4億円の内数】
起業家や、大企業等で新事業開拓を担う社内起業家の候補等を、世界をリードするベンチャー企業を輩出するシリコンバレー等に派遣して、グローバル市場への進出や社会課題の解決といった事業目線の高い新事業を創出する人材の育成を図った。また、起業家やベンチャー支援人材、大企業等からなる「ベンチャー創造協議会」において、ビジネスマッチングの開催や広範なネットワーク形成の場を提供するとともに、イノベーションの創出に大きく貢献したベンチャー企業を称える「内閣総理大臣賞」の授与等を行い、新事業創出のための基盤形成を図った。(新規)
10.エンジェル税制【税制】
創業後間もないベンチャー企業への個人投資家(エンジェル)による資金供給を促進するため、一定の要件を満たす中小企業に対して、個人投資家が投資を行った時点と、当該株式を譲渡した時点において所得税の優遇を受けることができる制度である。平成9年の制度創設から、平成28年1月末までに、635社に対し、約133億円の投資が行われた。
11.企業のベンチャー投資促進税制【税制】
企業が、産業競争力強化法に基づき経済産業大臣の認定を受けたベンチャーファンドを通じてベンチャー企業に出資した場合に、その出資額の8割を限度として損失準備金を積み立て、損金算入することができる制度である。
12.経営革新支援事業
新事業活動促進法に基づき、中小企業が新たな事業活動を行うことで経営の向上を図ることを目的として作成し、承認された経営革新計画に対し、低利の融資制度や信用保証の特例等の支援策を通じ、その事業活動を支援した。
13.地域における創業支援体制の構築
地域の創業を促進させるため、産業競争力強化法において、市区町村が民間の創業支援事業者と連携して創業支援事業計画を作成し、国の認定を受けた場合、計画に基づく創業支援を受けた創業者に対し、信用保証の拡充、税制(株式会社の設立登記に係る登録免許税の軽減)等の支援を行うとともに、創業支援事業者に対し信用保証等の支援を行った。
14.中小企業・小規模事業者経営力強化融資・保証事業【27年度予算:11.0億円の内数】
認定支援機関の支援を前提とした、日本公庫による創業又は経営多角化・事業転換等を行う中小企業・小規模事業者に対する低利融資(基準金利-0.4%、女性・若者・シニア創業者は基準金利-0.65%)等を整備することで、経営力の強化を図った。
15.地域経済循環創造事業交付金【27年度予算:23.1億円の内数】
産学金官地域ラウンドテーブルを構築し、地域の資源と資金(地域金融機関の融資等)を活用して、雇用吸収力の大きい地域密着型企業を立ち上げる「ローカル10,000プロジェクト」を推進するため、民間事業者が事業化段階で必要となる初期投資費用等について、地方自治体が助成する経費に対し、交付金を交付した。
第2節 事業承継支援
1.小規模企業共済制度の見直し
小規模企業の経営者に退職金を支給する小規模企業共済制度について、経営の新陳代謝の円滑化に係る機能を強化するため、親族内への事業譲渡に係る共済事由の引き上げを行った。
2.地域課題解決ビジネス普及事業【27年度予算:0.6億円の内数】
ソーシャルビジネス・コミュニティービジネスといった地域の課題をビジネスの手法により解決に取り組む事業者の事業活動を促進するために、資金面の環境整備を目的として金融機関向け手引き、事業者向け手引きを策定するとともに、その普及を後押しするため、全国10か所でシンポジウムを開催した。
3.事業引継ぎ支援事業【27年度予算:44.8億円の内数】
後継者不在等の問題を抱える中小企業・小規模事業者に対し、47都道府県の各認定支援機関に設置されている「事業引継ぎ相談窓口」において事業引継ぎ等に関する情報提供・助言等を行うとともに、支援体制が整った地域には、後継者問題に悩む経営者とその経営資源を活用し事業を拡大したい会社等のマッチング支援を手掛ける「事業引継ぎ支援センター」を設置した。
「事業引継ぎ支援センター」は、平成27年度に全国展開を行った。
4.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予・免除制度(事業承継税制)【税制】
事業承継税制は、後継者が経済産業大臣の認定を受けた非上場会社の株式等を先代経営者から相続、遺贈又は贈与により取得した場合において、その後継者が事業を継続することを前提に、相続税・贈与税の納税を猶予し、後継者の死亡等の一定の場合には猶予税額を免除する制度である。平成21年度より事業承継税制の適用の基礎となる認定を開始し、平成27年12月末までに、相続税に係る認定を827件、贈与税に係る認定を431件実施した。
平成27年度税制改正(平成27年4月1日施行)において、以下のとおり事業承継税制の拡充を行った。
1代目→2代目→3代目と株式が贈与される場合において、〔1〕経営承継期間後に、2代目が3代目に株式を贈与した場合(3代目も納税猶予の適用を受けることが必要)、2代目の猶予税額は免除される。〔2〕経営承継期間内であっても、2代目がやむを得ない事情(※)で代表を辞して、3代目に株式を贈与した場合(3代目も納税猶予の適用を受けることが必要)、2代目の猶予税額は免除される。〔3〕上記〔1〕〔2〕の場合において、1代目が死亡すれば、3代目の猶予されている贈与税が相続税に切り替わる(2代目が死亡しても相続税には切り替わらない)。
※やむを得ない事情とは、主に以下のとおり。
- 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた(障害等級1級に限る)
- 身体障害者手帳の交付を受けた(身体上の障害の程度が1級又は2級に限る)
- 要介護認定を受けた(要介護状態区分が要介護5に限る)
5.経営承継円滑化法による総合的支援
経営承継円滑化法には、遺留分の制約を解決するための民法の特例をはじめとした総合的支援が盛り込まれており、平成27年12月末までに、民法特例の適用の基礎となる経済産業大臣の確認を108件実施した。
6.事業承継円滑化支援事業【中小機構交付金の内数】
全国各地で中小企業の事業承継を広範かつ高度にサポートするための事業承継支援ネットワーク体制の形成、中小企業支援者向けの研修や事業承継フォーラムによる中小企業経営者等への普及啓発を実施した。
第3節 資金繰り支援・事業再生支援
1.きめ細かな資金繰り支援・事業再生支援
平成27年2月3日に成立した平成26年度補正予算によって、日本公庫及び商工中金における貸付制度の創設や拡充を実施した。具体的には、原材料・エネルギーコスト高などの影響を受け、資金繰りに困難を来たす事業者や省エネ投資を促進する事業者に対して、経営支援を含む手厚い資金繰り支援を行うほか、女性等による創業や円滑な事業承継など地域における前向きな取組、また、NPO法人等の新たな事業・雇用の担い手に対応した融資を促進した。
また、信用保証制度については、同補正予算によって、各地の信用保証協会が、地域金融機関と連携した経営支援の取組を一層強化するとともに、経営力強化保証等による借換保証を推進することで、経営支援と一体となった資金繰り支援を行うこととした。また、自然災害に対応する信用保証制度である「セーフティネット保証4号」について、災害救助法が適用された時点で発動を決定するなど運用基準を弾力化し、被災中小企業・小規模事業者への支援に迅速かつ柔軟に対応した。
さらに、事業再生支援については、同補正予算によって、各地の中小企業再生支援協議会の支援体制を強化し、中小企業・小規模事業者に対する抜本的な再生計画の策定支援を加速していくこととした。
2.セーフティネット貸付
セーフティネット貸付のうち経営環境変化対応資金は、社会的、経済的環境の変化の影響等により、一時的に売上高や利益が減少している等の影響を受けている中小企業・小規模事業者に対して、7億2,000万円(日本公庫(中小企業事業)、商工中金)、4,800万円(日本公庫(国民生活事業))の範囲内で融資を実施するものである。平成26年度補正予算では原材料・エネルギーコスト高などの影響を受ける中、資金繰りに困難を来たす中小企業・小規模事業者を支援するため利益率が低下している場合や厳しい業況にあり認定支援機関等の経営支援を受ける場合に金利の優遇措置を行った。平成27年度の貸付実績は、15万件、3.1兆円となった(平成28年1月末時点)。
3.小規模事業者経営改善資金融資(マル経融資)【27年度予算:39.8億円】【財政投融資】
小規模事業者を金融面から支援するため、商工会、商工会議所、都道府県商工会連合会の経営指導を受けている小規模事業者に対して、日本公庫が無担保・無保証・低利で融資を行った。また、貸付期間の拡充(運転資金:5年→7年、設備資金:7年→10年)、据置期間の拡充(運転資金:6か月→1年、設備資金:6か月→2年)、貸付限度額の拡充(1,500万円→2,000万円)を引き続き実施した。平成27年4月から28年1月末までに、36,200件、2,078億円の融資を実施した。(再掲)
4.小規模事業者経営発達支援融資【27年度予算:0.2億円】【財政投融資】
事業の持続的発展に取り組む小規模事業者を支援するため、経営発達支援計画の認定を受けた商工会・商工会議所による経営指導を受ける小規模事業者に対し、日本公庫が低利で融資を行った。平成27年4月から28年1月末までに、34件、2.1億円の融資を実施した。(再掲)
5.資本性劣後ローンの推進【27年度予算:150億円の内数】
資本性劣後ローンとは、中小企業・小規模事業者に対して、リスクの高い長期・一括償還の資金(資本性資金)を供給し、財務基盤を強化することで、民間からの協調融資を呼び込み、中小企業・小規模事業者の資金繰りを安定化する日本公庫の融資制度である。平成26年度補正予算において、日本公庫で事業承継や海外展開を行う場合にも新たに貸付対象とする等の拡充を行った。平成27年度の貸付実績は、約1千件、約598億円となった(平成28年2月末時点)。
(注)期限一括償還型の貸付であって、融資を受けた中小企業・小規模事業者が法的倒産となった場合に貸付金の償還順位を他の債権に劣後させる制度。毎期の決算の成功度合いに応じて金利を変更する等の制度設計とすることにより、当該劣後ローンは、金融検査上自己資本とみなすことが可能となっている。
6.中小企業・小規模事業者経営力強化融資・保証事業【27年度予算:11.0億円の内数】
認定支援機関の支援を前提とした、日本公庫による創業又は経営多角化・事業転換等を行う中小企業・小規模事業者に対する低利融資(基準金利-0.4%、女性・若者・シニア創業者は基準金利-0.65%)等を整備することで、経営力の強化を図った。(再掲)
7.借換保証の推進【27年度補正予算:10.0億円の内数】
信用保証協会が、複数の借入債務を一本化し、足下の返済負担の軽減を図るための借換保証を推進。平成27年度の保証承諾実績は、161,831件、3兆円となった(平成28年2月末現在)。
8.セーフティネット保証(4号及び5号)
セーフティネット保証4号は自然災害によって、セーフティネット保証5号は業種の構造的な不況によって、それぞれ経営の安定に支障が生じている中小企業・小規模事業者を対象として、信用保証協会が一般保証とは別枠で保証を実施するものである(100%保証。保証限度額は無担保8,000万円、最大2億8,000万円)。
セーフティネット保証4号は、短期間強雨の発生回数が増加し被害が顕在化するなど、災害のリスクが変化してきていることを踏まえ、平成26年度に運用が大幅に柔軟化・迅速化された。セーフティネット保証4号の平成27年度の保証承諾実績は、288件、47億円であった(平成28年2月末時点)であった。
セーフティネット保証5号は、引き続き最近3か月間の月平均売上高等が前年同期比で一定割合以上減少等の基準を満たす業種を指定し、積極的に推進した。セーフティネット保証5号の平成27年度の保証承諾実績は、24,773件、5,792兆円であった(平成28年2月末現在)。
9.地域の経済や雇用を担うNPO法人への中小企業信用保険の拡大
NPO法人について、近年、地域を支える新たな雇用・事業の担い手として存在感を高め、地域の課題の解決を通じて地域の新たな需要を掘り起こし、地域経済の活性化を図る主体として認識されつつあり、その事業活動の実態が現行の中小企業者とほぼ異ならなくなってきていること等から、これまで対象ではなかった中小企業信用保険の対象とするため「中小企業信用保険法」を改正するなどの所要の措置を講じた。平成27年10月よりNPO法人が信用保険の対象になったことで、医療・福祉・保育事業等の事業活動を行うNPO法人の資金繰りの一層の円滑化が図られた。
10.認定支援機関による経営改善計画策定支援事業
自らでは経営改善計画の策定ができない中小企業・小規模事業者等に対して、中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律に基づく認定支援機関(税理士、弁護士、金融機関等)による経営改善計画策定支援や当該計画に係るフォローアップに要する費用の一部を負担(2/3)した。平成27年4月から平成28年2月末までの相談件数は9,283件、新規受付件数は3,097件となり、制度発足時(平成25年3月)から平成28年2月末までの実績は、相談件数31,211件、新規受付件数10,621件となった。
11.中小企業再生支援協議会【27年度予算:44.8億円の内数+26年度補正繰越し18.0億円】
各都道府県の商工会議所等に設置した中小企業再生支援協議会において、収益性のある事業を有しているが、財務上の問題を抱えている中小企業・小規模事業者等に対し、窓口相談による課題解決に向けたアドバイスや、関係金融機関等との調整も含めた再生計画の策定支援を行った。平成27年4月から平成27年12月末までの実績は、相談件数1,374件、再生計画の策定完了件数786件となり、制度発足時から平成27年12月末までの実績は、相談件数36,516件、再生計画の策定完了件数10,518件となった。
また、各協議会の支援体制を強化し、中小企業・小規模事業者等に対する抜本的な再生計画の策定支援を加速するため、補助事業を実施した。
12.中小企業承継事業再生計画(第二会社方式)
産業競争力強化法に基づき、中小企業承継事業再生計画の認定を行い、その計画に従った事業の承継を行う場合に、許認可承継の特例措置、金融支援及び税負担の軽減措置を実施した。計画認定件数は、平成27年度4月から平成28年2月末までの実績は8件、産業活力再生特別措置法に基づき措置された制度創設時(平成21年6月)から合計すると31件となった。
13.中小企業再生ファンド
再生に取り組む中小企業の再生計画上、資金繰り支援、経営支援や必要な資金供給等を実施するため、中小機構と地域金融機関、信用保証協会等が一体となって、地域内の中小企業の再生を支援する地域型ファンドや広域的に中小企業の再生を支援する全国型ファンドの組成・活用を促進する取組を行った。平成28年2月末までに43件のファンドが創設され、ファンドの総額は約1,364億円に上った。また、当該再生ファンドによる投資実績は平成28年1月末までに332社、約686億円に上った。
14.「経営者保証に関するガイドライン」の利用促進等【27年度予算:1億円の内数】
平成25年12月5日に公表された「経営者保証に関するガイドライン」の利用促進を図るため、平成25年度に中小機構地域本部等に設置した相談窓口と、ガイドラインの利用をご希望の方への専門家派遣窓口について、引き続き実施した。また、平成25年度に拡充・創設した公的金融機関における経営者保証によらない融資・保証制度についても、引き続き実施した。また、融資慣行として浸透・定着を図る観点から、広く実践されることが望ましい取組みを事例集として取りまとめ、参考事例集として公表した。また、中小企業・小規模事業者等を主な対象として平成27年9月から平成27年12月にかけて全国50箇所にてガイドラインの説明会を開催した。
15.金融行政における小規模事業者に対する経営支援の強化等
金融行政を通じた金融機関による企業や産業への成長支援及び小規模企業の経営改善・生産性向上・体質強化の支援等を促進するため、金融モニタリング基本方針に基づき、金融機関に対して、担保・保証に必要以上に依存しない、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価(「事業性評価」)した融資や、コンサルティング機能の発揮による小規模企業の経営改善等の支援などを促した。
16.貿易保険が付保された中小企業の輸出代金債権の流動化促進
中小企業に対する資金供給促進のため、NEXIは商工中金や3大メガバンクと連携し、貿易保険付保輸出代金債権について、中小企業から金融機関へ譲渡スキームを構築し、中小企業の活用促進を図っているところ。
17.沖縄の中小企業金融対策
沖縄振興開発金融公庫を活用した沖縄の中小企業対策は、日本公庫が行う業務・取組について、同様に行うとともに、沖縄の特殊事情を踏まえ独自の貸付制度の拡充を実施した。
18.「中小企業の会計に関する基本要領」の普及・活用
中小企業の経営状況の明確化、経営者自身による事業の説明能力の向上、資金調達力の強化を促す観点から、「中小企業の会計に関する基本要領」の普及・活用を推進した。その普及策として、平成27年度においても、「中小企業の会計に関する基本要領」を会計ルールとして採用する中小企業・小規模事業者に対して、信用保証料率を0.1%割り引く制度を実施した。
第4節 人材・雇用対策
1.中小企業・小規模事業者人材対策事業【27年度予算:16.1億円の内数】
経営資源の乏しい中小企業・小規模事業者の人材の確保を支援することを目的に、地域の中小企業・小規模事業者のニーズを把握して、地域内外の若者・女性・シニア等の多様な人材から地域事業者が必要とする人材を発掘し、紹介・定着まで支援を行った。
2.中小企業大学校における人材育成事業【中小機構交付金の内数】
全国9か所にある中小企業大学校において、中小企業支援人材の能力向上のための研修を実施するとともに、中小企業の経営者、管理者等を対象に経営課題に直接結びつくような研修を実施した。
3.ふるさとプロデューサー育成事業【27年度補正予算:30.0億円の内数】
地域の関係者を巻き込み、地域資源を活かした魅力ある産品を「地域ブランド化」し、海外市場を見据えて販路開拓を行う取組の中心的担い手となることができる人材育成の取組を支援した。
4.労働者の雇用維持対策【27年度予算:192.7億円の内数】
景気の変動等に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業、教育訓練又は出向により、労働者の雇用の維持を図った場合に、雇用調整助成金を支給した。また、本助成金については、不正受給防止対策にも積極的に取り組んでおり、不正受給を行った事業主名等の公表、実地調査の実施等、本助成金のより一層の適正な支給に努めた。
5.魅力ある雇用創出に向けた雇用管理の改善の支援【27年度予算:48.4億円の内数】
企業の雇用管理改善の取組を支援し、魅力ある雇用創出を図るため、中小労確法に基づき各都道府県知事に改善計画の認定を受けた重点分野等の中小企業団体(事業協同組合等)が、労働環境向上事業を行った場合に助成金を支給した。また、重点分野等の中小企業・小規模事業者等が労働協約・就業規則等を変更し、雇用管理制度を新たに導入した場合及び従業員の離職率を低下させた場合に助成金を支給した。
6.人材不足分野における人材確保のための雇用管理改善促進事業【27年度予算:10.1億円の内数】
人材不足分野の事業を営む事業主が、人材確保のために従業員の処遇や職場環境の改善などの雇用管理改善を行う場合に、雇用管理制度の導入支援等を実施し、「魅力ある職場づくり」を支援した。
〔1〕モデル調査コース
事業主が取り組むべき雇用管理の内容が明確となっていない分野を対象として、雇用管理上の課題を抱える事業主に対し、その課題の解消に資する様々な雇用管理制度をモデル的に導入・運用するためのきめ細かなコンサルティングを実施した。
〔2〕啓発実践コース
人材不足分野のうち、今後ますます需要の拡大が見込まれる介護分野や建設分野について、雇用管理改善の実践段階に課題を抱える事業主に対し相談支援を行い、業界ぐるみでの雇用管理改善の実践や、雇用管理改善に積極的に取り組む事業主を中心とした地域ネットワーク・コミュニティによる地域ぐるみでの雇用管理改善の実践を促進した。
7.地域雇用開発奨励金【27年度予算:50.4億円の内数】
地域における雇用の創出及び安定を図るため、雇用機会の不足している地域等において事業所の設置又は整備を行い、併せて地域求職者を雇い入れる事業主に対して、設置等の費用及び雇入れ人数に応じて助成を行う地域雇用開発奨励金を支給した。
8.戦略産業雇用創造プロジェクト【27年度予算:92.1億円の内数】
良質かつ安定的な雇用機会の創出に向けた取組みを推進するため、製造業などの戦略産業を対象として、産業施策と一体となって実施する地域の自主的な雇用創造プロジェクトを支援する戦略産業雇用創造プロジェクトを実施した。
9.雇用促進税制の延長【税制】
平成23年4月1日から平成28年3月31日までの期間内に始まる各事業年度において、雇用保険一般被保険者が5人(中小企業は2人)以上かつ10%以上増加等の要件を満たす企業に対し、増加した雇用保険一般被保険者一人当たり40万円の税額控除することができる税制措置を実施した。
10.失業なき労働移動の促進【27年度予算:349.4億円の内数】
労働移動支援助成金(再就職支援奨励金)により、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者等に対して、その再就職を実現するための支援を民間職業紹介事業者に委託等して行う事業主に対して助成を行った。また、労働移動支援助成金(受入れ人材育成支援奨励金(人材育成支援))により、再就職援助計画等の対象となった労働者を雇入れ、又は移籍等により労働者を受入れ、その労働者に対して訓練を行った事業主に対して助成を行った。さらに、平成27年度より、労働移動支援助成金(受入れ人材育成支援奨励金(早期雇入れ支援))により、再就職援助計画等の対象者を離職後3か月以内に期間の定めのない労働者として雇い入れた事業主に対して助成を行った。
11.地域人づくり事業
女性や若者、高齢者の活躍推進等を通じた雇用の拡大を図るとともに、賃金引上げ等の処遇改善を推進し、地域の実情に応じた「人づくり」を支援するための事業を実施した。
12.福祉人材確保重点プロジェクト【27年度予算:14.6億円の内数】
福祉(介護・医療・保育)分野におけるサービスを担う質の高い人材の安定的な確保のため、全国の主要なハローワークに設置する「福祉人材コーナー」を中心に、きめ細かな職業相談・職業紹介、求人者への助言・指導等を実施した。
13.若者応援宣言事業の促進【27年度予算:5.1億円の内数】
若者の採用・育成に積極的で、企業情報等を積極的に公表する中小企業については、「若者応援宣言企業」として情報発信の後押しを行った。
14.若者雇用促進法に基づくユースエール認定制度【27年度予算:5.1億円の内数】
若者の雇用管理が優良な中小企業について、「青少年の雇用の促進等に関する法律」(昭和45年法律第98号)に基づき、厚生労働大臣が「ユースエール認定」企業として認定する制度を創設し、中小企業の情報発信を後押しすることにより、当該企業が求める人材の円滑な採用を支援した。
15.三年以内既卒者等採用定着奨励金
既卒者や中退者の新規学卒枠での応募機会の拡大及び定着・促進を図るため、既卒者等が応募可能な新卒求人の申込み又は募集を新たに行い、一定期間定着させた事業主に対して「三年以内既卒者等採用定着奨励金」を支給した。
16.最低賃金の引き上げに向けた中小企業・小規模事業者支援【27年度予算:24.1億円の内数】
最低賃金の引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援として、〔1〕経営改善と労働条件管理の相談等にワンストップで対応するための「最低賃金総合相談支援センター」を全国(47カ所)に設置し、無料の相談対応・専門家派遣を行うとともに、〔2〕業種別全国中小企業団体が行う賃金の引上げに向けた取組に対する助成(業種別団体助成金、上限2000万円)及び〔3〕労働能率増進のための設備投資等を行い、事業場内の時間給800円未満の労働者の賃金を引き上げた中小企業・小規模事業者に対する取組経費の助成(業務改善助成金、上限100万円、助成率1/2(企業規模30人以下の小規模事業者は3/4))を実施した。
なお、平成27年度は、〔1〕について利用者の利便性向上のため、電話やメールによる相談を実施する「全国最低賃金総合電話相談センター」を設置した。
17.地域若者サポートステーション事業【27年度予算:37.2億円の内数】
ニート等の若者の職業的自立を支援するため地域若者サポートステーションを設置し、キャリアコンサルタントなどによる専門的な相談や各種プログラムの実施など、多様な就労支援メニューを実施する予算を措置した。平成27年度においては、引き続き本事業を全国で実施するとともに、就労後の定着やより安定した就労へのステップアップに向けた支援の実施を全国に拡大し、職業的自立に向けた就労支援の強化を図った。
18.キャリア教育専門人材養成事業(大学等)(キャリア教育等の推進)【27年度予算:0.1億円の内数】
大学等のキャリアセンターの中核人材やキャリアコンサルタント等を対象に、厚生労働省が有する雇用・労働に関する知見やキャリア教育や就職支援に資するツール、キャリアコンサルティングやその担い手であるキャリアコンサルタントに係る知識及びその活用方法等についての理解を深める講習を実施し、大学等におけるキャリア教育を推進するとともに、大学等におけるキャリアコンサルタントの活用促進を図る。