第1部 小規模事業者の動向

第2節 地域区分別に見た小規模事業者の事業活動

本節では、「小規模事業者の事業活動の実態把握調査」1から得られたアンケート調査結果を基に、小規模事業者の事業活動の様々な活動状況について地域区分別に見ていく。

1 中小企業庁の委託により、(株)日本アプライドリサーチ研究所が、2016年1月に、全国商工会連合会、日本商工会議所の会員のうち、小規模事業者を対象に実施したWebアンケート調査。有効回答件数4,857者。

1 地域区分別に見た小規模事業者の事業活動

第1-4-17図は、直近3年間における小規模事業者の商圏の拡大・縮小傾向について、地域区分別に示したものである。

これを見ると、商圏が「拡大」又は「やや拡大」したとする者の割合は、「東京特別区+政令指定都市」が34.5%、「県庁所在市及び30万人以上都市」が29.1%、「地方都市」が31.6%、「郡部の町村」が29.3%となっており、各地域区分における商圏の拡大傾向について大きな差異はないことが分かる。

第1-4-17図 地域区分別の商圏の拡大・縮小傾向(直近3年間)
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次に、小規模事業者の直近3年間における地域区分別の売上高の傾向を示したものが、第1-4-18図である。

これを見ると、「郡部の町村」、「地方都市」及び「県庁所在市及び30万以上都市」ともに売上高の増加傾向は3割弱とほぼ同じ水準であり、差異は見られない。

その一方、「東京特別区+政令指定都市」では、売上高が増加傾向であるとする者の割合が約4割と、他の地域区分に比して高い水準となっている。

また、今後3年間の売上高の見通しを示したものが、第1-4-19図である。

これを見ると、第1-4-18図で見た直近3年間の売上高については、「郡部の町村」において、増加傾向との回答は26.0%だったものが、今後3年間の売上の見通しでは20.6%と増加傾向とする者の割合が低下している。また、「東京特別区+政令指定都市」でも同様に、38.2%だったものが、33.0%と割合が低下している。「郡部の町村」及び「東京特別区+政令指定都市」に所在する小規模事業者は、これまでの実績に比べ、今後の見通しにはやや弱気になっている傾向がうかがえる。

第1-4-18図 地域区分別の売上高の傾向(直近3年間)
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第1-4-19図 地域区分別の売上高の見通し(今後3年間)
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次に、地域区分別に、小規模事業者のIT機器(情報通信機器)の保有状況を示したものが第1-4-20図、情報管理面におけるIT活用の有無を示したものが第1-4-21図、宣伝面におけるIT活用の有無を示したものが第1-4-22図である。これを見ると、「宣伝面におけるIT活用の有無」についてのみ「郡部の町村」における活用割合がやや低いものの、ほかの地域区分ではいずれもほぼ同水準となっており、地域間で差異は見られない。

第1-4-20図 地域区分別のIT機器(情報通信機器)の保有状況
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第1-4-21図 地域区分別の情報管理面におけるIT活用の有無
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第1-4-22図 地域区分別の宣伝面におけるIT活用の有無
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次に、地域区分別に小規模事業者の「知的資産の保有状況」を示したものが、第1-4-23図である。

これを見ると、知的資産の保有については、「郡部の町村」が20.2%と、それ以外の地域よりも低くなっている。

第1-4-23図 地域区分別の「知的資産」の保有状況
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次に、地域区分別に小規模事業者の「経営計画の作成の有無」について示したものが、第1-4-24図である。これを見ると、経営計画を作成したとする割合は「郡部の町村」が51.2%、「地方都市」が54.1%、「県庁所在市及び30万以上都市」が50.6%となっており大きな差異は見られない。その一方、「東京特別区+政令指定都市」では、経営計画を作成した者の割合が59.2%と他の地域区分に比して、やや高い水準となっている。

また、他組織と連携して新商品や新サービスを開発した経緯の有無を示したものが、第1-4-25図である。これを見ると、新商品や新サービスの開発における他組織との連携では、いずれの地域区分においても1割強と総じて低い水準となっており、地域区分間で差異は見られない。

第1-4-24図 地域区分別の経営計画の作成の有無
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第1-4-25図 地域区分別の他組織との連携の有無
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次に、地域区分別に小規模事業者の「人材育成の取組の有無(直近3年以内)」を示したものが第1-4-26図、「人材の確保(直近3年以内)」を示したものが第1-4-27図である。

これを見ると、「人材育成の取組」については、「東京特別区+政令指定都市」では取り組んでいる者が45.5%であるのに対し、他の地域区分ではいずれも3割台後半と、「東京特別区+政令指定都市」よりも、やや低い水準となっている。

また、「人材の確保」では、いずれの地域区分においても2割強の水準となっており、地域区分間で差異は見られない。

第1-4-26図 地域区分別の人材育成の取組の有無(直近3年以内)
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第1-4-27図 地域区分別の人材の確保(直近3年以内)
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以上、小規模事業者の事業活動の様々な活動状況等について、地域区分別に見てきた。その結果、地域区分毎に多少の違いは見られたものの、特段の大きな差異は見られなかった。

このことから、事業活動面における地域間の格差は思いのほか少なく、小規模事業者の置かれた地域的な制約よりも、小規模事業者が様々な事業活動に取り組んでいるか否かの方が、小規模事業者の発展を左右する重要な要素であるということができよう。

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