第1部 小規模事業者の動向

2 経営指導員の属性

ここからは、アンケート調査12に基づき、経営指導員による経営指導の実態を分析していく。はじめに、経営指導員の属性を見ることとする。まず、経営指導員の年齢を階級別に見たものが第1-3-5図である。50代(33.7%)と40代(32.4%)がほぼ同数であり、併せて約7割(66.1%)を占める。一方、20代以下は8.4%、30代は21.2%となっており、20代から30代の経営指導員は約3割(29.6%)にとどまる。若手の経営指導員層がやや薄くなっており、今後、経営指導員世代間における、相談・指導に係る技術・ノウハウの承継、若手の経営指導員に向けた人材育成が一層重要になるものと考えられる。

12 「経営支援活動に関する実態把握調査」 中小企業庁の委託により、(株)日本アプライドリサーチ研究所が、2015年12月に、全国の商工会・商工会連合会、商工会議所に所属する経営指導員(含む補助員)を対象に実施し、2016年1月に取りまとめた、Webアンケート調査。有効回答数6,378名。

第1-3-5図 経営指導員の年齢
Excel形式のファイルは こちら

経営指導員の出身地と、所属する商工会又は商工会議所との関係を見たものが第1-3-6図である。回答の多い順に、「所属する商工会又は商工会議所と同一市区町村」(42.2%)、「所属する商工会又は商工会議所と近隣市区町」(34.1%)、「所属する商工会又は商工会議所と同一都道府県」(18.7%)となっている。「同一市区町」と「近隣市区町」を合わせて約8割(76.3%)となっており、経営指導員の大部分は、自身の出身地又は出身地周辺という、自らがよく知る地域で働いていることが分かる。

第1-3-6図 経営指導員の出身地
Excel形式のファイルは こちら

次に、経営指導員の配置状況を見ることとする。経営指導員一人当たりの〔1〕商工業者数13、〔2〕商工業者のうち小規模事業者数を、都市の人口14規模別に見たものが 第1-3-7図(商工会)及び第1-3-8図(商工会議所)である。

総じて、都市の人口規模が小さいほど、経営指導員一人当たりの事業者数が少ないことが分かる。このことから、人口規模が小さい地区では、個々の事業者に対する経営指導員の支援が行き届きやすくなるものと考えられる。

13 商工業者数とは、商工会・商工会議所地区の商工業者数(会員と非会員の合計)をいう。

14 人口とは、商工会・商工会議所地区の人口をいう。

第1-3-7図 商工会の経営指導員一人当たり事業者数(商工会地区の人口規模別)
Excel形式のファイルは こちら
第1-3-8図 商工会議所の経営指導員一人当たり事業者数(商工会議所地区の人口規模別)
Excel形式のファイルは こちら

ここから、経営指導員の実務経験について見ていくこととする。まず、商工会に入会又は商工会議所に入所する直前の職業と就業年数を見たものが、第1-3-9図である。すると、企業の役員・正社員又は個人事業主であったと回答した者が併せて43.2%を占めている。

また、職歴があると回答した者に対し、商工会に入会又は商工会議所に入所する直前の就業年数を聞いたところ、5年未満までとする回答が61.1%であった。他方で、5年以上の就業年数があるとする回答も38.9%あり、民間企業で一定期間の実務経験を培った上で経営指導員となった人材がいることが分かる。

第1-3-9図 商工会に入会又は商工会議所に入所する直前の職業と就業年数
Excel形式のファイルは こちら

次に、経営指導員が直前に就いていた業界について聞いたところ(第1-3-10図)、多い順に、小売業(14.2%)、製造業(13.9%)、金融業・保険業(11.7%)、卸売業(7.2%)、専門・技術サービス業(6.0%)、建設業(5.5%)であった。このように、経営指導員には様々な業界事情や実務に精通した多様な人材がいることが分かる。

第1-3-10図 商工会に入会又は商工会議所に入所する直前に就いていた業界
Excel形式のファイルは こちら

経営指導員に対し、経営指導の仕事の魅力(複数回答)を聞いたものが、第1-3-11図である。回答の上位3位までの合計で多いものは、順に「効果的な指導を行った時に達成感を得られる」(57.0%)、「事業者から感謝される」(47.1%)、「経営者と直接話ができる」(36.6%)、「経営に直接的、間接的に関われる」(30.4%)、「地域を活性化できる」(30.3%)となっている。

第1-3-11図 経営指導の仕事の魅力(複数回答)
Excel形式のファイルは こちら

経営指導員は、経営者が抱える様々な経営課題について、適時・適切な支援を行うため、自らの経営指導に関する知識や経験を日頃から維持・向上させていく必要がある。その具体的な方法(複数回答)を聞いたものが第1-3-12図である。

回答の上位3位までの合計で多いものは、順に、「相談・指導の実務」(83.7%)、「研修・セミナーの受講」(68.7%)、「他の商工会や商工会連合会、商工会議所との情報交換や見習い」(41.1%)となっている。このことから、経営指導員は、日々の実務経験を中心としつつ、研修・セミナーの受講、商工会・商工会議所内や他の支援機関との間における情報交換等を通じて、経営指導に関する知識や経験の向上に努めていることが分かる。

第1-3-12図 経営指導に関する知識や経験を維持・向上させる方法(複数回答)
Excel形式のファイルは こちら

また、第1-3-13図は、経営指導員の保有資格について聞いたものである。保有している資格としては、経営支援に必須となる簿記や会計に関する資格が多いことが分かる。

第1-3-13図 保有している資格(複数回答)
Excel形式のファイルは こちら

第1-3-14図は、経営指導員が相談・指導に対応する上で重要と考える資質は何か(複数回答)を聞いたものである。1位の回答として最も多いものは傾聴力であり、約75%を占めた。これは、経営者の経営に向き合い、適切なアドバイスを行うためには、相談者の話をしっかりと聴き、課題を捉えることがいかに大切かを示している。

第1-3-14図 相談・指導に対応する上で重要と考える資質(複数回答)
Excel形式のファイルは こちら
前の項目に戻る 次の項目に進む