第1部 小規模事業者の動向

第2章 小規模事業者の活動実態と取組

本章では、「小規模事業者の事業活動の実態把握調査」1から得られたアンケート調査結果を基に小規模事業者の事業活動について、商圏や売上高、IT活用、効率的な経営、人材の確保・育成、事業承継など、様々な観点から、その実態を見ていくこととする。

1 中小企業庁の委託により、(株)日本アプライドリサーチ研究所が、2016年1月に、全国商工会連合会及び日本商工会議所の会員のうち、小規模事業者を対象に実施したWebアンケート調査。有効回答件数4,857者。

第1節 商圏や売上高等の現状

本節では、小規模事業者の商圏や売上高等の現状について分析していくこととする。

1 小規模事業者の商圏とその拡大・縮小傾向について

第1-2-1図は、小規模事業者の直近決算時における1年間の売上高について、その販売先である商圏区分別に構成比率を示したものである。

これを見ると、小規模事業者の売上高の約6割が「同一市町村」を販売先としており、「近隣市町村」向けの約2割と併せ約8割を占めている。さらに、「同一都道府県」まで含めると9割弱となっており、小規模事業者の売上高のほとんどが同一都道府県内にとどまっていることが分かる。

さらに、商圏区分別の売上高構成比率を業種別に示したものが、第1-2-2図である。

これを見ると、「同一市町村」における売上高割合が最も高い業種は「生活関連サービス業」で79.4%、次いで「小売業」が74.6%、「飲食サービス業」が72.7%となっている。その一方、「建設業」は58.5%、「卸売業」は42.8%、「製造業」は35.6%、「宿泊業」は17.4%となっており、業種によって大きく異なっていることが分かる。

「卸売業」や「製造業」、「宿泊業」は業種特性上、より広域的な商圏を販路としているのに対し、理美容を中心とする「生活関連サービス業」や「小売業」、「飲食サービス業」は、狭い商圏で活動している傾向がうかがえる。

第1-2-1図 直近決算における商圏区分別の売上高構成比率
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第1-2-2図 直近決算における商圏区分別の売上高構成比率(業種別)
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次に、小規模事業者の商圏の変化について見てみる。

第1-2-3図は、小規模事業者の直近3年間における商圏の拡大・縮小傾向について示したものである。

これを見ると、商圏が「拡大」が6.5%、「やや拡大」が24.2%と商圏が拡大傾向にある者が計30.7%となっている。他方、「やや縮小」が10.5%、「縮小」が4.5%と商圏が縮小傾向にある者は計15.0%となっており、小規模事業者全体で見ると、商圏が拡大傾向とする者の割合が、縮小傾向とする者の割合を上回る結果となった。

これを業種別に示したものが第1-2-4図である。

これを見ると、商圏が拡大傾向であると回答した者の割合が高かった上位3業種は、「宿泊業」(39.1%)、次いで「製造業」(38.9%)、「卸売業」(38.0%)となっている。また、商圏が拡大傾向であると回答した者の割合が低かった下位3業種は、「生活関連サービス業」(23.1%)、次いで「小売業」(24.1%)、「建設業」(29.2%)となっている。

業種特性上、より広域的な商圏を販路としている「宿泊業」や「製造業」、「卸売業」などの方が、より商圏を拡大する傾向が強いことがうかがえる。

その一方、理美容を中心とする「生活関連サービス業」や「小売業」など生活に密着する業種は、商圏を拡大する傾向が弱いことがうかがえる。

第1-2-3図 直近3年間の商圏の拡大・縮小傾向
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第1-2-4図 直近3年間の商圏の拡大・縮小傾向(業種別)
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第1-2-5図は、直近3年間の売上高の傾向と商圏の拡大・縮小傾向についての相関を示したものである。

これを見ると、売上高が増加傾向にある者の約7割において、商圏が拡大傾向となっている。逆に、売上高が増加傾向で商圏が現状維持又は減少傾向にある者は約3割に過ぎない。このことから、売上高を増加させるためには、商圏の拡大に向けた取組が重要であることが分かる。

続いて、「売上高が増加傾向の者」の商圏の拡大・縮小傾向について、業種別に示したものが第1-2-6図である。

これを見ると、いずれの業種においても商圏が拡大傾向となっている割合が約6割から約7割と総じて高い水準であり、同様の傾向にあることが分かる。

第1-2-5図 売上高の傾向と商圏の拡大・縮小傾向
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第1-2-6図 「売上高が増加傾向の者」の商圏の拡大・縮小傾向(業種別)
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