6 小規模事業者の開廃業と規模の拡大・縮小について
前項までで見てきたように、小規模事業者は、個人事業者を中心にその数を減少させているが、業種別に見れば減少した業種ばかりではではなく、増加した業種も一定数あることが明らかとなった。
しかしながら、小規模事業者の増減数のみを見るだけでは、小規模事業者として開業した場合や廃業した場合、また、従業員規模を拡大して小規模事業者から中規模事業者になった場合や規模を縮小して中規模事業者から小規模事業者になった場合などについては、その実態を捉えることはできない。
このため、本項では、経済センサスをより詳細に分析することにより、開廃業や企業規模の変化を含めた小規模事業者の動向について詳しく見ていくこととする。
2012年時点から2014年時点の間に、小規模事業者として開業した者と廃業した者、また、小規模事業者から中規模事業者へ規模を拡大した者と中規模事業者から小規模事業者へ規模を縮小した者の数について分析したものが第1-1-41図である。
これを見ると、小規模事業者数の増加要因は、新たに開業した者が約28.6万者、「2012年時点で中規模事業者」であった者が「2014年時点で小規模事業者」に規模を縮小した者が約6.3万者、その他が約8.6万者等であり、増加数は合わせて約43.5万者となっている。これに対し、小規模事業者数の減少要因は、廃業した者が約45.7万者、「2012年時点で小規模事業者」であった者が「2014年時点で中規模事業者」に規模を拡大した者が約6.8万者等であり、減少数は合わせて約52.5万者となっている。
このように、小規模事業者においては、その総数が減少する中でも、かなりの数の開業が行われているなど、新陳代謝が相当程度行われていることが分かる。
次に、小規模事業者の規模の拡大・縮小について業種別に示したものが第1-1-42図である。
「2012年時点で小規模事業者」であったが「2014年時点で中規模事業者」に規模を拡大した者約6.8万者の業種別内訳を見ると、「小売業」が約1.40万者で最も多く、次いで「宿泊業,飲食サービス業」が約1.30万者、「医療,福祉」が約0.88万者、「卸売業」が約0.76万者、「製造業」が約0.45万者と続き、この5業種で約4.8万者と約7割を占めている。
その反対に「2012年時点で中規模事業者」であったが「2014年時点で小規模事業者」に規模を縮小した者約6.3万者の業種別内訳を見ると、「宿泊業,飲食サービス業」が約1.26万者でもっとも多く、次いで「小売業」が約1.12万者、「医療,福祉」が約0.75万者、「製造業」が約0.58万者、「卸売業」が約0.56万者と続き、この5業種で約4.3万者と7割弱を占める。
なお、規模を拡大した事業者数と規模を縮小した事業者数を小規模事業者全体で比較すると、規模を拡大した事業者数の方が約0.55万者多くなっている。
また、第1-1-43図は、規模を拡大・縮小した事業者数それぞれを2012年の業種別事業者数に占める割合がどの程度あるのが示したものである。
これを見ると「医療,福祉」が規模拡大6.2%、規模縮小5.4%と最も高く、次いで、「卸売業」が規模拡大4.7%、規模縮小3.4%、「サービス業(他に分類されないもの)」が規模拡大4.1%、規模縮小3.1%、「情報通信業」が規模拡大3.1%、規模縮小3.6%、「宿泊業,飲食サービス業」が規模拡大2.7%、規模縮小2.6%となっている。
ここまで見てきたように、小規模事業者においては、業種による差異は見られるものの、事業活動の新陳代謝が相当程度行われていることが分かる。