第6章 事業環境の整備
第1節 資金繰り支援、事業再生支援
1.きめ細かな資金繰り支援
平成28年1月20日に成立した平成27年度補正予算において、中小企業・小規模事業者の生産性を向上させるための様々な取組に対して、公的金融機関における貸付制度や保証制度の創設や拡充を実施した。具体的には、日本政策金融公庫において、地域の雇用を生み出すなど地域活性化に貢献する中小企業・小規模事業者が設備投資等を行う場合に、通常よりも低利で融資を行っている。また、信用保証協会において、返済条件緩和などの条件変更を実施しているものの、経営改善の可能性が高い中小企業・小規模事業者に対して複数債務を一本化し、新規融資を受けやすくするための保証(借換保証)を実施している。(継続)
2.セーフティネット貸付
セーフティネット貸付のうち経営環境変化対応資金は、社会的、経済的環境の変化の影響等により、一時的に売上高や利益が減少している等の影響を受けている中小企業・小規模事業者に対して、7億2,000万円(日本公庫(中小企業事業)、商工中金)、4,800万円(日本公庫(国民生活事業))の範囲内で融資を実施するものである。平成28年度は、資金繰りに困難を来たす中小企業・小規模事業者を支援するため厳しい業況にあり認定支援機関等の経営支援を受ける場合に金利の優遇措置を行う。(継続)
3.小規模事業者経営改善資金融資(マル経融資)【28年度予算:39.8億円】【財政投融資】
小規模事業者を金融面から支援するため、商工会、商工会議所、都道府県商工会連合会の経営指導を受けている小規模事業者に対して、日本公庫が無担保・無保証・低利で融資を行う。また、貸付期間の拡充(運転資金:5年→7年、設備資金:7年→10年)、据置期間の拡充(運転資金:6か月→1年、設備資金:6か月→2年)、貸付限度額の拡充(1,500万円→2,000万円)を引き続き実施する。(継続)
4.小規模事業者経営発達支援融資【28年度予算:0.2億円】【財政投融資】
事業の持続的発展に取り組む小規模事業者を支援するため、経営発達支援計画の認定を受けた商工会・商工会議所による経営指導を受ける小規模事業者に対し、日本政策金融公庫が低利で融資を行う。(継続)
5.資本性劣後ローンの推進【28年度予算:158億円の内数】
資本性劣後ローンとは、中小企業・小規模事業者に対して、リスクの高い長期・一括償還の資金(資本性資金)を供給し、財務基盤を強化することで、民間からの協調融資を呼び込み、中小企業・小規模事業者の資金繰りを安定化する日本公庫の融資制度である。平成28年度も引き続き実施していく。(継続)
(注)期限一括償還型の貸付であって、融資を受けた中小企業・小規模事業者が法的倒産となった場合に貸付金の償還順位を他の債権に劣後させる制度。毎期の決算の成功度合いに応じて金利を変更する等の制度設計とすることにより、当該劣後ローンは、金融検査上自己資本とみなすことが可能となっている。
6.中小企業・小規模事業者経営力強化融資・保証事業【28年度予算:16.0億円】
認定支援機関の支援を前提とした、日本公庫による創業または経営多角化・事業転換等を行う中小企業・小規模事業者に対する低利融資(女性・若者・シニア創業者は基準金利-0.4%)等を整備することで、経営力の強化を図る。(継続)
7.借換保証の推進【28年度予算:10.0億円】
従来の借換保証を継続するとともに、経営改善の可能性が高く、また、経営者に意欲があるにもかかわらず、条件変更の実施により前向きな金融支援を受けることができない中小企業・小規模事業者に対し、既住の保証付融資を新たな保証付融資に借換え、更に真水(ニューマネー)を追加することを可能とする新たな借換保証を推進する。(継続)
8.セーフティネット保証(4号及び5号)
セーフティネット保証4号は自然災害によって、セーフティネット保証5号は業種の構造的な不況によって、それぞれ経営の安定に支障が生じている中小企業・小規模事業者を対象として、信用保証協会が一般保証とは別枠で保証を実施するものである(100%保証。保証限度額は無担保8,000万円、最大2億8,000万円)。(継続)
9.認定支援機関による経営改善計画策定支援事業
自らでは経営改善計画の策定ができない中小企業・小規模事業者等の経営改善を促進するため、中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律に基づく認定支援機関(税理士・弁護士・地域金融機関等)が中小企業・小規模事業者等に対して行う経営改善計画の策定支援やフォローアップに要する費用の一部(2/3)を補助する。(継続)
10.中小企業再生支援協議会【28年度予算:58.4億円の内数】
各都道府県の商工会議所等に設置した中小企業再生支援協議会において、収益性のある事業を有しているが、財務上の問題を抱えている中小企業・小規模事業者等に対し、窓口相談による課題解決に向けたアドバイスや、関係金融機関等との調整も含めた再生計画の策定支援を行う。(継続)
11.中小企業承継事業再生計画(第二会社方式)
産業競争力強化法に基づき、中小企業承継事業再生計画の認定を行い、その計画に従った事業の承継を行う場合に、許認可承継の特例措置及び金融支援を実施する。(継続)
※平成28年度の税制改正により、登録免許税に係る特例措置が終了。
12.中小企業再生ファンド
再生に取り組む中小企業の再生計画上、資金繰り支援、経営支援や必要な資金供給等を実施するため、中小機構と地域金融機関、信用保証協会等が一体となって、地域内の中小企業の再生を支援する地域型ファンドや広域的に中小企業の再生を支援する全国型ファンドの組成の促進・活用に取り組む。(継続)
13.「経営者保証に関するガイドライン」の利用促進等【28年度予算:1億円】
平成25年12月5日に公表された「経営者保証に関するガイドライン」の利用促進を図るため、平成25年度に中小機構地域本部等に設置した相談窓口と、ガイドラインの利用をご希望の方への専門家派遣窓口について、引き続き実施する。また、公的金融機関における経営者保証によらない融資・保証制度についても、引き続き実施する。また、融資慣行として浸透・定着を図る観点から、広く実践されることが望ましい取組事例を継続的に収集し、引き続き公表する。また、中小企業・小規模事業者等を主な対象としてガイドラインの説明会を引き続き開催する。(継続)
14.金融行政における中小企業に対する経営支援の強化等
金融行政方針に基づき、金融機関に対し、担保・保証に依存する融資姿勢を改め、取引先企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価(事業性評価)し、融資や本業支援等を通じて、地域産業・企業の生産性向上や円滑な新陳代謝の促進を図るよう促す。(継続)
15.貿易保険が付与された中小企業の輸出代金債権の流動化促進
中小企業に対する資金供給促進のため、NEXIは商工中金や3大メガバンクと連携し、中小企業から金融機関へ譲渡した貿易保険付保輸出代金債権について、中小企業から金融機関へ譲渡するスキームの活用促進を図る。(継続)
16.沖縄の中小企業金融対策
沖縄振興開発金融公庫を活用した沖縄の中小企業対策は、日本政策金融公庫が行う業務・取組について、同様に行うとともに、沖縄の特殊事情を踏まえ独自の貸付制度の拡充を実施する。(継続)
17.「中小企業の会計に関する基本要領」の普及・活用
中小企業の経営状況の明確化、経営者自身による事業の説明能力の向上、資金調達力の強化を促す観点から、「中小企業の会計に関する基本要領」の普及・活用を推進する。その普及策として、平成27年度においても、「中小企業の会計に関する基本要領」を会計ルールとして採用する中小企業・小規模事業者に対して、信用保証料率を0.1%割り引く制度を実施する。(継続)
第2節 財政基盤の強化
1.中小軽減税率の引下げ【税制】
年所得800万円以下の部分に係る法人税率(19%)を15%に引き下げる措置を講じる。(継続)
2.中小企業投資促進税制【税制】
機械装置等を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(資本金3,000万円超の法人を除く)ができる措置。なお、機械装置等のうち、生産性の向上に資する一定の設備を導入した場合には、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超の法人の税額控除は7%)ができる。(継続)
3.中小企業者等の小額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例【税制】
取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、年間300万円を限度に、全額損金算入することができる措置。平成28年度税制改正で、適用対象から従業員1,000人超の法人を除いた上で、適用期限を2年延長することとされた。(継続)
4.欠損金の繰越控除・繰戻還付【税制】
欠損金の繰越控除は、当期の事業年度に生じた欠損金を繰り越して翌期以降の事業年度の所得金額から控除することができる措置。平成28年度税制改正で、平成30年度から繰越期間を10年(現行:9年)にすることとされた。また、当期の事業年度に生じた欠損金を1年繰戻し、法人税額の還付を請求することができる措置。平成28年度税制改正で、適用期限を2年延長することとされた。(継続)
5.商業・サービス業・農林水産業活性化税制【税制】
商業・サービス業等を営む中小企業が商工会議所等の経営改善指導に基づき設備を取得した場合、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円超の法人を除く)ができる措置。(継続)
6.交際費等の損金不算入の特例【税制】
交際費等を支出した場合、〔1〕定額控除限度額(800万円)までの損金算入と〔2〕支出した接待飲食費の50%までの損金算入を選択適用できる措置。平成28年度税制改正で、適用期限を2年延長することとされた。(継続)
7.中小企業投資育成株式会社による支援
中小企業投資育成株式会社において、中小企業の自己資本の充実を促進し、その健全な成長発展を図るため、株式、新株予約権、新株予約権付社債等の引受けによる投資事業及び経営相談、事業承継支援等の育成事業を実施する。(継続)
8.新たに取得する機械装置の固定資産税の軽減
中小企業等経営強化法に基づいて中小企業が策定し、認定された経営力向上計画に記載されている新規の機械装置(経営力向上設備)(160万円以上で、生産性が1%向上(10年以内に販売開始)等)を取得した場合に課される固定資産税の課税標準を、3年間に渡り1/2に軽減する措置を講じる。(新規)
第3節 消費税転嫁対策
1.消費税転嫁状況監視・検査体制強化等事業【28年度予算:32.1億円】
消費税の円滑かつ適正な転嫁を行うため、全国に474名の転嫁対策調査官を配置。併せて、消費税の転嫁拒否等の行為に関する情報を収集するため、公正取引委員会と合同で中小企業・小規模事業者全体に対して大規模な書面調査を実施するなど、転嫁拒否行為等の監視・取締りを行う。(継続)
第4節 消費税軽減税率対策
1.中小の小売事業者等に対するレジの導入・システム改修等支援【27年度予備費:995.8億円】
消費税軽減税率制度の導入・運用に当たり混乱が生じないよう、事業者の準備が円滑に進むよう取り組む。具体的には、〔1〕中小小売事業者等に対して、複数税率に対応したレジの導入等の支援を行うとともに、〔2〕複数税率への対応ができない電子的な受発注システムを用いている中小小売事業者・卸売事業者等に対して、システム改修の支援を行う。(新規)
2.消費税軽減税率対応窓口相談等事業【27年度補正予算:170.0億円】
消費税軽減税率制度を円滑に実施するため、中小企業団体等と連携して、講習会・フォーラムの開催、相談窓口の設置や巡回指導型専門家派遣を通じたきめ細かいサポート、パンフレット等による周知等を行う。また、税制抜本改革法(平成24年法律第68号)において、消費税率の引上げが規定されているため、転嫁対策窓口相談等も併せて実施する。(新規)
第5節 経営安定対策
1.中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済制度)【中小機構交付金の内数】
取引先企業の倒産に伴う連鎖倒産を防止するための共済金の貸付を行う倒産防止共済制度について、引き続き、制度への加入促進や共済金の貸付けを着実に実施する。(継続)
2.経営安定特別相談事業【28年度予算:0.37億円】
全国の主要な商工会議所及び都道府県商工会連合会に設置されている「経営安定特別相談室」による相談事業を円滑に実施するため、日本商工会議所及び全国商工会連合会の実施する指導事業等を引き続き支援する。(継続)
3.中小企業BCP(事業継続計画)普及の促進【財政投融資】
中小企業・小規模事業者の緊急時の事業継続力の強化と企業価値の向上を図るため、BCPの普及・定着の促進に係る取組を引き続き実施する。また、中小企業・小規模事業者自らが策定したBCPに基づき防災施設等の整備を行う者に対して、日本公庫において低利融資を引き続き実施する。(継続)
4.ダンピング輸入品による被害の救済【28年度予算:0.5億円】
貿易救済措置のうちAD措置は、他国企業から我が国に対するダンピング輸入により、国内産業が損害を受けた際に、国内産業からの申請を受けて政府が調査を実施した上で関税の賦課により、公正な市場競争環境を確保する措置である。平成27年度5月に開始した韓国及び中国産水酸化カリウムに対するAD調査について、国際ルール及び国内法令に基づき公正且つ適切に進めていく。また、企業等への説明会やWTO協定整合的に調査を行うための調査研究を実施する。(継続)
第6節 官公需対策
1.「平成28年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」の策定及び周知徹底【28年度予算:9.9億円の内数】
国等の新規中小企業者をはじめとする中小企業向け契約目標、中小企業者の受注の機会の増大のために実施する措置等を閣議決定する。
また、基本方針を周知徹底するために以下の取組を実施する。
(1)経済産業大臣から各府省等の長、都道府県知事、全市町村の長及び東京特別区の長に対し、「中小企業者に関する国等の基本方針」の閣議決定に係る要請を行うとともに、中小企業・小規模事業者の受注機会の増大に努める。
(2)地方における「基本方針」の周知徹底を図るための全国説明会(官公需確保対策地方推進協議会)を全都道府県で開催する。
(3)地方において新規中小企業者からの調達を推進するための取組に関する情報の共有や連携方策を協議する会議(新規中小企業者調達推進協議会)を開催する。
(4)「官公需契約の手引き」を作成し、国等の機関、地方公共団体等の機関及び商工関係団体等に配布する。 (継続)
2.中小企業・小規模事業者の受注機械増大のための「官公需情報ポータルサイト」【28年度予算:9.9億円の内数】
中小企業・小規模事業者が官公需に関する受発注情報を入手しやすくするため、国等や地方公共団体がホームページで提供している発注情報等を中小企業・小規模事業者が一括して入手できる「官公需情報ポータルサイト」を運営する。(継続)
第7節 人権啓発の推進
1.人権啓発【28年度予算:1.9億円】
健全な経済活動の振興を促進するため、事業者を対象とした人権啓発のためのセミナー等の啓発事業を実施する。また、小規模事業者等が多く、特に重点的な支援が必要な地域又は業種に係る小規模事業者等の活性化のため、経営等の巡回相談事業及び研修事業を実施する。(継続)