第1節まとめ
本節では、企業の借入金に着目し、その増減の動向や、要因について分析を行った。大企業は海外を含む関係会社への投融資を増やす中で、足下では金融機関借入れを伸ばしている。他方で、中小企業は内部留保の範囲内での投資を行うにとどまっており、金融機関借入れは横ばいの状況が続いていることが分かった。
また、同一規模企業間を比較しても収益力の差があるため、高収益企業の一部は無借金企業となっていく一方で、低収益企業は借入条件の変更を行うなど資金繰りに窮している企業が少なくはないことも確認した。また、借入金を増加させる企業と減少させる企業の収益力の差を見ることで、金融機関によるリスク許容度合いも確認した。そこでは、1990年以降緩やかにリスク許容度合が低下していたが、足下では景気拡大期の影響もあいまって、リスク許容度合が高まりつつある様子が見られた。
企業の収益環境が改善する中で、企業の投資ニーズも高まりつつある。こうした投資意欲に対し、金融機関も企業の成長性を見極めた上で、積極的に資金供給を行うことが重要である。次節では、こうした金融機関から中小企業への成長投資資金の供給の実態について分析していく。