第2部 中小企業の稼ぐ力

第3節 海外展開投資に係る課題と高収益企業の取組

本節では、中小企業における海外展開投資の課題及び海外展開投資により業績を向上させている企業の成功要因について明らかにしていく。

また、本節においても、第2章第3節と同様に、「稼ぐ力」を強化するために必要な「売上高経常利益率」に注目し、中小企業を高収益企業と低収益企業に分類し、売上高経常利益率の比較を通して、投資により高収益体質になっている企業とそうではない企業の海外展開投資の効果・取組の違いを分析していく。

1 海外展開投資を行わない理由

■海外展開投資未実施企業が海外展開を行わない理由

ここからは、海外展開投資を行っていない企業について見ていく。第2-3-19図は、海外展開投資を重要視しているものの、現在海外展開投資を行っていない企業について、海外展開を行わない理由について尋ねたものである。これを見ると、「国際業務の知識・情報・ノウハウがない」と回答した企業が最も多くなっており、次いで「国際業務に対応できる人材を確保できない」、「現地パートナー、商社等が確保できない」、「国内業務が手一杯で考えられない」の順になっている。この結果から、海外展開投資を重要視している企業でも、海外展開に係る情報・ノウハウ不足や、人材・パートナー不足、国内業務の多忙といった制約要因のために海外展開投資を行えていないことが考えられる。

第2-3-19図 海外展開投資未実施企業が海外展開投資を行わない理由
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■海外展開投資の課題

次に、第2-3-20図は、輸出を行っている企業が抱えている課題を見たものであるが、「現地パートナー企業・商社等の確保」の課題を挙げる企業が最も多く、次いで「為替変動のリスク」、「現地の法制度・商慣習への対応」、「コスト管理・代金回収リスク」の順になっていることが分かる。

第2-3-20図 輸出における課題
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また、次に直接投資を行っている企業が抱えている課題を見たものが第2-3-21図である。これを見ると、直接投資については、生産拠点、販売・サービス拠点を設けている企業共に「外国人人材の確保・労務管理」、「現地の法制度・商慣習への対応」を挙げる企業が多い。これは、生産拠点、販売・サービス拠点を設けている企業共に現地法人を設立するため、現地で活用するための外国人人材を確保し、商取引に係る現地の法制度や商慣習に対応する必要があるためと考えられる。さらに、生産拠点を設けている企業は、「品質管理・納期管理」、「為替変動のリスク」、「海外展開を主導する日本人人材の確保・育成」の割合が高いことが分かる。これは、現地生産を行うために品質管理・納期管理が必要になり、販売・仕入を行う際に為替の問題に注視しなければならないためと考えられる。また、販売・サービス拠点を設けている企業は、「現地パートナー企業・商社等の確保」、「海外展開を主導する日本人人材の確保・育成」、「コスト管理・代金回収リスク」の割合が高いことが分かる。これは、現地の販売先を確保するために、現地のパートナー企業を探す必要があり、また現地の営業所をサポートするために海外での勤務経験や語学力に長けた日本人人材を雇用する必要があるためと考えられる。

第2-3-21図 直接投資における課題
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最後に、インバウンド対応を行っている企業が抱えている課題を見たものが第2-3-22図である。インバウンド対応については、輸出や直接投資に比べて投資を行っている企業数そのものが少ないが、これを見ると、「販売先・訪日外国人の確保」の課題が最も多く、次いで「海外市場動向についての情報・ニーズの把握」、「不規則な需要への対応」、「自社の製品・サービスの良さを伝えるのが困難」の順になっている。

第2-3-22図 インバウンド対応における課題
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