第1部 平成27年度(2015年度)の中小企業の動向

第2章 中小企業の動向

前章では、最近の我が国経済の動向をGDPと関連統計を通じて概観した。本章では、中小企業の現状と課題に焦点を当て、第1節で中小企業数、業況、資金繰りの状況等中小企業の現状を整理し、第2節で中小企業の収益構造を分解し、中小企業が抱える課題を明らかにする。

第1節 中小企業の現状

1 中小企業数の推移

中小企業の現状を見ていくにあたって、まず、中小企業の数の推移について、平成27年11月に公表となった「平成26年経済センサス-基礎調査」をもとに確認していく。

中小企業数の推移を見てみると、長期にわたり減少傾向にある(第1-2-1図)。足下の2012年から2014年にかけての推移についても、2年間で4.4万者の減少となったが、2009年7月から2012年2月にかけて、年平均で▲13.5万者であったのに対し、2012年2月から2014年7月にかけては年平均で▲1.8万者と、減少のペースは緩やかとなった。

第1-2-1図 中小企業数の推移
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規模別に見ると、2012年から2014年の2年間で、小規模企業の数は9.1万者減少しているものの、中規模企業の数は逆に4.7万者増加しており、合計で約4.4万者の減少となった。

次に、中規模、小規模企業それぞれについて、この推移が開業、廃業によるものなのか、規模間の移動(小規模企業から中規模企業、中規模企業から大企業への移動等)によるものなのか確認する。

まず、中規模企業について見ていくと、2012年から2014年の2年間で4.7万者の増加であったが、そのうち、開廃業については、開業が7.2万者、廃業が4.8万者で、開業が廃業を2.4万者上回った(第1-2-2図〔1〕)。また、規模間の移動については、小規模企業から中規模企業への移動が6.8万者で、中規模企業から小規模企業への移動が6.3万者で、中規模企業と小規模企業間での移動は+0.5万者であった。このことから、中規模企業の増加には、既に存続していた小規模企業からの成長よりも、開業がより大きく影響しているといえる。また、大企業への移動、大企業からの移動は共に0.1万者程度であった。

第1-2-2図〔1〕 中規模企業数 推移の内訳(2012年→2014年)
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2012年から2014年にかけての中規模企業の開業について、業種別に見てみると、特にサービス業1の開業が目立っており、宿泊業・飲食サービス業が1.5万者、医療・福祉が1.2万者と、高水準となっている(第1-2-2図〔2〕)。他方で、中規模企業となる要件に差があることもあり2、製造業の開業は0.2万者にとどまっている。また、同期間の中規模企業の廃業について業種別に見ると、全体の廃業に占める割合は、開業と同じくサービス業の占める割合が高いものの、製造業その他、商業(卸売業・小売業)が全体の廃業に占める割合が開業に比して大きくなっている。

1 ここでは、製造業、建設業、その他を「製造業その他」とし、卸売業、小売業を「商業」とし、医療・福祉、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、学術研究,専門・技術サービス業、その他サービス業を、「サービス業」とする。

2 おおよそ、「商業」「サービス業」は従業員6人以上から中規模企業となるのに対し、「製造業その他」は従業員21人以上から中規模企業となる。

第1-2-2図〔2〕 中規模企業 開廃業 業種内訳(2012年→2014年)
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次に、小規模企業数の推移の内訳を確認すると、2012年から2014年の2年間で9.1万者の減少であったが、そのうち、開廃業については、開業が28.6万者、廃業が45.7万者であり、開業から廃業を引いた数が▲17.1万者と廃業が大きく上回った(第1-2-3図〔1〕)。また、規模間移動については、中規模企業から小規模企業への移動が6.3万者であり、小規模企業から中規模企業への移動が6.8万者であった。中規模企業と小規模企業間での移動が▲0.5万者であることを考えると、小規模企業の減少のほとんどの要因が廃業であり、廃業数が開業数を大きく上回ったことが影響しているといえる3

第1-2-3図〔1〕 小規模企業数 推移の内訳(2012年→2014年)
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2012年から2014年にかけての小規模企業の開業数・廃業数については、実際の数より多く算出されている可能性があるため3、開業数から廃業数を引いた数を「純開廃業数」とし、この業種別内訳を確認していく(第1-2-3図〔2〕)。これによると、開業数が廃業数を上回った業種は医療・福祉(+0.5万者)のみで、他の業種は、製造業その他4(計▲5.2万者)、商業(計▲6.2万者)、サービス業(医療・福祉を含む)(計▲5.7万者)と、大くくり化した3業種全てで同程度廃業が開業を上回っている。

3 この集計方法では、単独事業所から成り立っている企業で、事業所移転を行った企業は、実際は開廃業を行っていないにも関わらず、廃業と開業の両方に集計されるため、単独事業所で成り立っている企業の多い小規模企業では、特に開廃業数が実際より多く算出されている可能性がある。

4 ここでは、製造業、建設業、その他を「製造業その他」とし、卸売業、小売業を「商業」とし、医療・福祉、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、不動産,物品賃貸業、その他サービス業を、「サービス業」とする。

第1-2-3図〔2〕 小規模企業純開廃業数(開業数-廃業数)業種内訳(2012年→2014年)
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次に、開廃業・規模間移動等の要因を合わせた2012年から2014年にかけての中小企業数の変化を業種別に見ると(第1-2-4図)、全体では4.3万者の減少となっているものの、医療・福祉、卸売業については増加しており、特に医療・福祉については1.5万者の増加と、かなり大きな幅での上昇となった。他方で、小売業をはじめ多くの業種では企業数が減少しているが、内訳を見ると、中規模企業については製造業以外の業種で増加しているものの、小規模企業が中規模企業の増加幅を上回って減少している。

第1-2-4図 中小企業数の業種別変化(2012年→2014年)
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また、都道府県別に2012年と2014年での中小企業数の増減数を算出すると、47都道府県のうち、中小企業数が増加した都道府県は5都県に留まった(第1-2-5図)。5都県の中でも増加数が最も大きかったのは東京都(+4,707者)で、宮城県(+2,120者)、沖縄県(+753者)と続いた。他方で、中小企業数の減少数が最も大きかったのは大阪府(▲5,388者)で、新潟県(▲3,010者)、愛知県(▲2,931者)と続いた。5

5 全都道府県の中小企業数の変化については、付注1-2-1を参照。

第1-2-5図 都道府県別規模別中小企業数の変化(2012年→2014年)
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更に、規模別の寄与度を見ると、上位5県のうち、宮城県・沖縄県の2県については、小規模企業数が増加しているものの(宮城県+877者、沖縄県+9者)、残りの3都県、またそれ以外の全都道府県では、小規模企業数は減少している(東京都▲5,445者、福岡県▲1,735者、奈良県▲139者)。

他方で、中小企業数の減少幅の大きかった大阪府や新潟県を含む全47都道府県において、中規模企業の数は増加している(大阪府+3,978者、新潟県+396者)。全国的に小規模企業の数は減少傾向にある一方で、中小企業数全体が増加している都県については、小規模企業についても増えているか、減少のペースが緩やかである。また、中規模企業については全国的に増加しており、中小企業数全体が大きく減少している県は、小規模企業の減少幅が大きいことが分かる。

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