第1部 小規模事業者の構造分析

2 小規模事業者の現状

(1) 小規模事業者が我が国企業の全体に占める割合(事業者数、従業者数、売上高)

まずは我が国の企業の、事業者数、従業者数、売上高に占める小規模事業者の割合について見てみる。

企業数については、我が国の企業386.4万者のうち334.3万者、全体の約87%を占めている。従業者数は、総従業者数ベースで4,614万人のうち、1,192万人の約26%を占めており、我が国経済の中で非常に大きな割合を占めている(第1-1-2図)。

第1-1-2図 企業規模別の事業者数及び従業者数
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他方で、売上高を企業規模別にみると、大企業が56.1%、中規模企業が33.6%を占めているのに対し、小規模事業者は全体の10.3%にとどまる(第1-1-3図)。

第1-1-3図 企業規模別の売上高
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また、全産業数に占める小規模事業者の割合は86.5%であるが、業種(産業大分類)別にこれを見ると、「複合サービス事業(簡易郵便局、郵便局受託業、協同組合など)」において99.5%を占めているのを始め、「不動産業,物品賃貸業」、「建設業」、「金融業,保険業」、「生活関連サービス業,娯楽業」で高い割合を占めている。他方、「電気・ガス・熱供給・水道業」で59.9%であるのを始め、「情報通信業」、「医療,福祉」などでは、低い割合となっている(第1-1-4図)。

第1-1-4図 業種別の企業規模構成
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(2) 小規模事業者の業種別構成(産業大分類/事業者数、従業者数)

次に小規模事業者334万者の業種(産業大分類)の構成を見てみると、事業者数では、「卸売業,小売業」が約23%(卸売業4.9%、小売業17.6%)を占めているのを始め、「宿泊業,飲食サービス業」が約14%、「建設業」が約13%、「製造業」が約11%、「生活関連サービス業,娯楽業」が約11%、「不動産業,物品賃貸業」が約10%を占め、これらの6分野で全体の81.5%を占めている(第1-1-5図)。

第1-1-5図 小規模事業者数(業種構成)
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従業者数では、総従業者数ベースで「建設業」が約20%を占めているのを始め、「卸売業,小売業」が約18%、「製造業」が約18%、「宿泊業,飲食サービス業」が約13%、「生活関連サービス業,娯楽業」が7%、「不動産業,物品賃貸業」が約7%を占め、これらの6分野で全体の約82%を占めている(第1-1-6図)。事業者数と従業者数ともに上述の6分野の業種で全体の約82%を占めており、これらの業種で、特に小規模事業者が多いことを示している。

第1-1-6図 小規模事業者の従業者数(業種構成)
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第1-1-7図は業種別に1事業者あたりの従業者数を示したものである。これを見ると小規模事業者1事業者あたりの従業者数平均は3.6人である。 事業者数の特に多い6分野の業種で比較すると、事業者数で第3位であった「建設業」が1事業者あたり5.2人、事業者数で第4位であった「製造業」が1事業者あたり5.7人となっており、ほかの業種に比して1事業者あたりの従業者数が多い。

第1-1-7図 業種別1事業者あたりの従業者数
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他方で、事業者数で第1位であった「卸売業,小売業」は2.9人、第2位であった「宿泊業,飲食サービス業」は3.2人となっており、比較的規模の小さな事業者が多いことがうかがえる。

また、事業者数はそれほど多くはないものの、「運輸業,郵便業」は7.0人となっており1事業者あたりの雇用者数が多い分野といえる。「鉱業,採石業,砂利採取業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」は1事業者あたりの従業者数は多いものの、事業者数自体が少ないため、全体としての雇用者数は多くはない。

(3) 小規模事業者の業種別構成(産業大分類/売上高)

第1-1-8図は、小規模事業者の業種別の売上高を示したものである。これを見ると「卸売業,小売業」が約27%を占めているのを始め、「建設業」が約25%、「製造業」が約20%を占めている。

第1-1-8図 小規模事業者の売上高(業種構成)
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また、従業者1人あたりの売上高を業種別に見たものが第1-1-9図である。これを見ると小規模事業者の従業者1人あたりの売上高平均は1,021万円である。

第1-1-9図 従業者1人あたりの業種別売上高
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従業者数の特に多い6分野の業種で比較すると、従業者数で第4位であった「宿泊業,飲食サービス業」は、従業者1人あたり276万円と最も低く、従業者数で第2位であった「卸売業,小売業」は、従業者1人あたり1,494万円と最も高い水準となっている。

また、従業者数は少ないものの、「鉱業,採石業,砂利採取業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「情報通信業」は従業者1人あたりの売上高が高い。

コラム1-1-2

「小企業者」について

2014年6月20日に成立した「小規模企業振興基本法(小規模基本法)」において、新たに「小企業者」が定義された。小規模基本法第2条第2項において「おおむね常時使用する従業員の数が5人以下の事業者をいう。」と規定されて、業種にかかわらず一律、常用雇用者5人以下の企業を小企業者とすることとなった。

また、小規模基本法第4条において、「小規模企業の振興にあたっては、小企業者がその経営資源を有効に活用し、その活力の向上が図られ、その円滑かつ着実な事業の運営が確保されるよう考慮されなければならない。」としている。

本コラムでは、小規模事業者における「小企業者」が、全体のどのくらいの割合を占めるのか、どのような業種構造になっているのか等について概観する。

●小企業者の規模感

小規模事業者334万者のうち、312万者が小企業者であり、小企業者は小規模事業者の93%を占める。また、個人事業者206万者のうち、205万者が小企業者であり、99%を占める。また、法人128万社のうち、107万社が小企業者であり、84%を占めている(コラム1-1-2〔1〕図)。

コラム1-1-2〔1〕図 小規模事業者数のうち、小企業者の占有率
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コラム1-1-2〔2〕図は、業種(産業大分類)別の「小規模事業者における小企業者の占有率」を示したものである。業種別に見ても「電気・ガス・熱供給・水道業」などの一部の業種を除き、業種を問わず、ほとんどが小企業者である。

コラム1-1-2〔2〕図 小規模事業者における小企業者の占有率(業種別)
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なお、「卸売業」、「小売業」、「サービス業」は、基本的には小規模事業者と小企業者の定義が同じであり、「小規模事業者」=「小企業者」である。

コラム1-1-2〔3〕図は、企業規模別に見た製造業の業種構成(産業中分類)を示したものである。

コラム1-1-2〔3〕図 企業規模別に見た製造業の業種構成(産業中分類)
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これを見ると、小企業者において、小規模事業者(小企業者を除く)・中規模事業者よりシェアの高い主な業種は、「金属製品製造業」、「繊維工業」、「印刷・同関連業」、「家具・装備品製造業」となっている。

その一方で、小企業者において、小規模事業者(小企業者を除く)・中規模事業者よりシェアの低い主な業種は、「食料品製造業」、「プラスチック製品製造業」、「輸送用機械器具製造業」、「電気機械器具製造業」となっている。

(4) 小規模事業者における常用雇用者について

第1-1-10図は、小規模事業者における常用雇用者の有無について示したものである。これを見ると小規模事業者334万者のうち、常用雇用者がいない小規模事業者は151万者であり、小規模事業者の45%を占める。

第1-1-10図 小規模事業者の常用雇用者の有無
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これを、業種(産業大分類)別に見てみると、小規模事業者の中で、常用雇用者がいない比率が高い業種は、「教育,学習支援業」で71%と最も高い。続いて、「不動産業,物品賃貸業」が66%、「生活関連サービス業,娯楽業」が59%、「小売業」52%、「宿泊業,飲食サービス業」48%であり、これらの5業種が平均値(45%)を上回っている(第1-1-11図)。

第1-1-11図 小規模事業者の常用雇用者の有無(業種別)
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常用雇用者の状況についてさらに細分化して見ていく。第1-1-12図は、小規模事業者のうち、常用雇用者がいない事業者の比率が60%以上の業種を産業小分類別に見たものである。

第1-1-12図 小規模事業者の常用雇用者なしの比率が60%以上の業種(産業小分類)
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これを見ると「自動販売機による小売業」、「宗教」、「駐車場業」、「教養・技能教授業」、「著述・芸術家業」が80%を超えているほか、「貸家業,貸間業」、「衣服縫製修理業」、「物品預り業」、「自転車小売業」、「商品先物取引業,商品投資業」が70%を超えている。

第1-1-13図は小規模事業者のうち、主な業種(産業大分類)の事業者数と常用雇用者の有無について見たものである。常用雇用者がいない小規模事業者の数について見ると、多い順に、「卸売業,小売業」35.7万者、「宿泊業,飲食サービス業」23.0万者、「生活関連サービス業,娯楽業」21.3万者、「不動産業,物品賃貸業」21.0万者などとなっている。

第1-1-13図 小規模事業者の主な業種別事業者数(常用雇用者の有無別)
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第1-1-13図において、小規模事業者のうち、主な業種の事業者数を産業大分類別に見たが、さらに細分化して見ていく。第1-1-14図は、身近な小規模事業者を産業小分類別に取り上げ、事業者数と常用雇用者の有無について見たものである。

第1-1-14図 身近な小規模事業者の業種別事業者数(常用雇用者の有無別)
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「卸売業,小売業」では「その他の飲食料品小売業(米穀類小売業、コンビニエンスストアなど)」、「自動車小売業」などが、「宿泊業,飲食サービス業」では、「専門料理店(ラーメン店,焼肉店など)」、「酒場,ビヤホール」などが多い。また、「生活関連サービス業,娯楽業」では「美容業」や「理容業」、「不動産業,物品賃貸業」では「貸家業,貸間業」、「医療,福祉」では「療術業」、「教育,学習支援業」では「教養・技能教授業」が多い。

これらのうち、常用雇用者がいない小規模事業者として数の多い業種は、「貸家業,貸間業」12.1万者、「美容業」9.2万者、「理容業」6.2万者、「酒場,ビヤホール」5.0万者、「教養・技能教授業」4.9万者などとなっている。

コラム1-1-3

「従業者」と「常用雇用者」

小規模事業で「働く人」の働き方は多様である。多くの経済統計では、そのような「働き方」を把握するための統計上の概念として「従業上の地位」という区分を採用している。この区分は統計法によって定められている統計基準ではないが、多くの統計でおおむね共通した区分となっている。

コラム1-1-3図を見ると「有給役員」や「個人業主」などは「従業者」に含まれる関係となっている。これに対して、中小企業基本法で規定されている中小企業者の範囲や小規模企業者の定義は「常時使用する従業員」に基準をおいている。常時使用する従業員(常用雇用者)には有給役員や個人業主自体が含まれないため、働く人を意味する従業者とは区別することに注意が必要である。

コラム1-1-3図 経済センサスにおける「従業上の地位」の区分名と定義
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