3 人材確保と企業経営
これまで、中小企業・小規模事業者の人材不足の実態について、その要因を含めて見てきたが、人材不足は企業経営にどのような影響を与えているのだろうか。
第2-2-17図は事業を維持・拡大する意向がある企業の事業活動全般に関する経営課題を示したものだが、「求める質の人材がいない」(22.1%)、「人材の人数が足りない」(18.6%)と人材確保に関する課題を挙げる企業の割合が高い。次いで、「社内人材の教育・育成」が15.3%を占め、人材の確保に加えて育成も大きな課題であることが分かる。ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源の中で、中小企業・小規模事業者がとりわけヒト(人材)をかくも重要な課題として認識していることが確認できる。
次に、経営資源の中で人材に関する課題が多く挙げられている中で、実際に中小企業・小規模事業者が十分に人材を確保できているかを第2-2-18図から見ると、「十分確保できている」は1割に満たず、また、「十分ではないが確保できている」が4割弱となっており、中小企業・小規模事業者が人材を十分に確保できていないことが分かる。他方で、「確保できていない」を選択した企業が36.3%を占めるが、人材が「確保できていない」理由を見ていくと、「人材の応募がないため」、「人材の応募はあるが、よい人材がいないため」といった理由が大半であり、人材不足が質的にも量的にも深刻化していることが改めて確認できる。
こうした状況を踏まえて、第2-2-19図から、中小企業・小規模事業者の人材不足が事業の維持・拡大に悪影響を与えているかを見ると、4割弱の企業が人材の不足が事業の維持・成長を阻害していると回答し、「いいえ」と回答した企業はわずか2割程度にとどまることが分かった。このように、人材確保及び質の高い人材の育成は企業経営に直結する課題であり、中小企業・小規模事業者の健全な事業の維持・拡大のために、中小企業・小規模事業者が求める人材を確保・育成しやすい事業環境を整備することが求められる。そのためには、まず、中小企業・小規模事業者の人材確保・育成に関する実態を詳細に踏まえる必要がある。そこで、第2節では、中小企業・小規模事業者の人材確保・定着について、アンケート調査結果に基づき詳細な分析を行うことで、その実態を明らかにしていく。