第1部 平成26年度(2014年度)の中小企業・小規模事業者の動向

6 我が国地域の経済成長のために必要な視点

これまで、地域を経済成長の観点から類型化を行い、それぞれの地域ごとの特徴について確認してきたが、分析結果を踏まえ、我が国地域が、その地域の実情に応じて均衡の取れた経済成長を実現していくためには、以下のように製造業を中心とした広域需要の視点とサービス業を中心とした域内需要の視点が必要であると考えられる(第1-3-36図)。

第1-3-36図 我が国地域の経済成長のために必要な視点

(1) 広域需要の視点

経済成長が比較的緩やかな地域では、経済成長が比較的高い地域と比べて製造業の付加価値シェアが相対的に小さく、特に輸送機械や電気機械といった広域需要獲得型の業種のシェアが小さい傾向にある。こうした地域においては、広域需要の獲得を目指す産業を活性化させることで、経済成長率がより一層高まることが期待される。これに対して、経済成長率が中程度、あるいは高い地域においても、グローバル化に伴う輸入浸透度の上昇が製造業の雇用に与える影響に留意する必要がある。

(2) 域内需要の視点

経済成長が比較的緩やか、あるいは中程度の地域では、人口減少・高齢化が相対的に進んでおり、こうした社会構造の変化によって生じる需要の変化に対応していく必要がある。特に経済成長が緩やかな地域では人口減少・高齢化が進んでおり、こうした需要を満たすためのサービス業は相対的に多いことが確認されたが、経済成長が中程度の地域では、こうしたサービス業は相対的に少ないことが確認された。したがって、人口減少、高齢化によって生じている需要の変化に適切に対応していく必要がある。

また、人口減少を緩和させる取組も重要である。特に経済成長が緩やかな地域から高い地域への人口流出も確認されており、地域間で一人当たり所得に顕著な差があることから、こうした所得の差を埋めることで人口流出が緩和されるものと期待される。そのためには、地域の企業は商品・サービスの高付加価値化を図ることが必要である。また、人口制約の下で経済成長を維持し続けるためには、広域から需要を取り込んでいくことも重要である。以上を踏まえると、地域資源を掘り起こし、その価値を高め、広く市場に供給していくこともまた有効な取組の一つであるということができる。

他方、高い経済成長を実現している地域では、人口は成長を続けており、老年人口比率も相対的に低いという特徴がある。こうした地域では、人口の制約を乗り越え、広域から需要を取り込むことで更なる成長が実現されると期待される。

以上の視点から、それぞれの地域が実情に応じた成長への取組を実現していくことで、我が国地域全体が均衡の取れた経済成長を実現できるものと期待される。ただし、そのためには地域がそれぞれの実情をきめ細かく把握し、更なる成長のために何が必要かを適切に判断する必要がある。こうした視点については、第3部で詳細を確認していくこととする。

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