第1部 平成26年度(2014年度)の中小企業・小規模事業者の動向

15 中小企業の収益力向上のための方策

以上までの分析を踏まえ、中小企業の収益力の特徴を整理すると以下のようになる(第1-3-16図)。

第1-3-16図 中小企業の収益力向上に向けた方策

〔0〕収益力

中小企業間で高収益企業と低収益企業の差が開いており、低収益企業の収益悪化が中小企業全体の収益率を押し下げている可能性がある。

〔1〕需要開拓

高収益企業、低収益企業ともに需要開拓への意識は強い。

〔2〕生産性の向上

中小企業間において、高収益企業と低収益企業の間の労働生産性の差が拡大しており、この背景には高収益企業の方が低収益企業と比べて、優秀な人材の確保や人材育成等への意識が強いことがあると考えられる。

〔3〕交易条件の改善

中小企業の多くは、自社より規模の大きい企業に対して取引上不利な立場にあると感じている。また、取引上不利な立場にある企業は、組織化による団体交渉力の確保等、制約からの克服を強く意識している。

さらに、上記で整理した中小企業における収益力の特徴に基づくと、中小企業の収益力向上に向けた方策について、以下のような示唆が得られる(第1-3-16図)。第一に、取引先の新陳代謝を高める、あるいは組織化により規模の制約を乗り越え取引上の団体交渉力を確保することで、交易条件の改善に努める((1)制約要因からの克服)。第二に、新たな需要を開拓することで、製品またはサービスの高付加価値化を図りつつ、売上を拡大させる((2)需要開拓)。第三に、優秀な人材を確保し、育成することで労働の質を高め、生産性の向上につなげる((3)優秀な人材の確保・育成)。第四に、技術開発等、イノベーションの実現に向けた取組を行うことで、生産性を向上させる((4)生産性の向上)。

また、上記の課題を個々に独立のものとして捉えるのではなく、課題同士の関連性を意識することが重要である。すなわち、(2)と(3)との関連性では「マーケティングを担う人材の確保・育成」が重要であり、(3)と(4)との関連性では「イノベーションを担う人材の確保・育成」が重要となる。また、(2)と(4)との関連性では「広域需要を意識したイノベーション実現に向けた取組」が重要となる。

詳細は第2部において分析を行うが、上記で示した観点に基づいた取組を行うことで、中小企業・小規模事業者の更なる成長と発展が期待される。

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