14 中小企業・小規模事業者における交易条件の改善に向けた課題
続いて、仕入価格、販売価格の現状を踏まえ、中小企業が交易条件の改善に向けてどのような課題を意識しているかについて、アンケート調査結果に基づき確認する。
まず、中小製造業における課題について見ていく(第1-3-14〔1〕図)。仕入価格の現状を踏まえた課題としては、「国内の既存仕入先の見直し」と答えた企業が54.5%と最も多くなっており、続いて「国内の新規仕入先の開拓」が52.4%、「原材料等の共同購入等による仕入先に対する価格交渉力の確保」が20.5%、「輸入製品への切替え」が19.4%となっている。また、仕入価格の設定において自社が不利な立場にあるか否かで回答割合を比較すると、「国内の既存仕入先の見直し」、「原材料等の共同購入等による仕入先に対する価格交渉力の確保」、「輸入製品への切替え」で自社が不利な立場にあるとする企業の割合が高いことが分かる。
販売価格の現状を踏まえた課題としては、「自社で扱う製品またはサービスの付加価値向上」が71.5%と最も多く、続いて「国内の新規顧客・販売先の開拓」が68.6%、「国内の既存顧客・販売先の見直し」が33.8%、「海外需要の取り込み」が18.6%、「製品またはサービスの共同販売等による販売先に対する価格交渉力の確保」が11.3%となっている。また、販売価格の設定において自社が不利な立場にあるか否かで回答割合を比較すると、「国内の既存顧客・販売先の見直し」、「製品またはサービスの共同販売等による販売先に対する価格交渉力の確保」で自社が不利な立場にあるとする企業の割合が高いことが分かる。
次に、中小非製造業における課題について見ていく(第1-3-14〔2〕図)。仕入価格の改善に向けた課題としては、「国内の新規仕入先の開拓」と答えた企業が53.4%と最も多くなっており、続いて「国内の既存仕入先の見直し」が51.1%、「原材料等の共同購入等による仕入先に対する価格交渉力の確保」が15.8%、「輸入製品への切替え」が7.8%となっている。また、仕入価格の設定において自社が不利な立場にあるか否か別に回答割合を比較すると、製造業と同様に「国内の既存仕入先の見直し」、「原材料等の共同購入等による仕入先に対する価格交渉力の確保」、「輸入製品への切替え」で自社が不利な立場にあるとする企業の割合が高いことが分かる。
販売価格の改善に向けた課題としては、「自社で扱う製品またはサービスの付加価値向上」が67.5%と最も多く、続いて「国内の新規顧客・販売先の開拓」が64.9%、「国内の既存顧客・販売先の見直し」が36.6%、「製品またはサービスの共同販売等による販売先に対する価格交渉力の確保」が10.1%、「海外需要の取込み」が8.4%となっている。また、販売価格の設定において自社が不利な立場にあるか否か別に回答割合を比較すると、「国内の新規顧客・販売先の開拓」、「国内の既存顧客・販売先の見直し」、「製品またはサービスの共同販売等による販売先に対する価格交渉力の確保」で自社が不利な立場にあるとする企業の割合が高いことが分かる。
第1-3-14〔1〕、〔2〕図の結果を踏まえると、中小企業における交易条件の改善に向けた課題は、〔1〕既存の取引先を見直すと同時に新たな取引先を開拓することで取引の新陳代謝を高めること、〔2〕新たな需要を開拓することで製品またはサービスの付加価値を高めること、〔3〕国外も含め広く市場を捉えること、〔4〕組織化することで規模の制約を乗り越え、交渉力を得ることの4点に整理できる(第1-3-15図)。
そして上記の四つの課題は(1)成長のための取組と(2)制約克服のための取組の二つの類型に分けることができ、以下のように整理される。
(1)成長のための取組
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国内の新規の仕入・販売先の開拓
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製品またはサービスの付加価値向上
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海外需要の取込み
(2)制約克服のための取組
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国内の既存の仕入・販売先の見直し
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輸入製品への切替え
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共同仕入・受注による団体交渉力の確保
以上より、中小企業全体の交易条件の改善のためには、取引上不利な立場にない企業は、成長のための取組を行うことで更なる交易条件の改善に努め、取引上不利な立場にある企業は成長のための取組及び制約克服のための取組の双方に努めることで交易条件の悪化を食い止め、改善につなげていくことが求められるといえる。