第1部 平成26年度(2014年度)の中小企業・小規模事業者の動向

第2章 中小企業・小規模事業者の動向

前節では、最近の我が国経済の動向を概観した。本節では、とりわけ中小企業・小規模事業者の動向に焦点を当て、業況、仕入・売上単価、採算、生産、設備、雇用、資金繰り、倒産の順に見ていくこととする。

1 業況

まず、中小企業・小規模事業者の業況を、中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」1(以下、「景況調査」という。)の業況判断DI(前期に比べて業況が「好転」と答えた企業の割合(%)から、「悪化」と答えた企業の割合(%)を引いたもの)の推移により確認する(第1-2-1図)。中小企業・小規模事業者の業況判断DIは、アベノミクスの「三本の矢」の効果もあり、2013年1-3月期から2014年1-3月期にかけて、改善基調で推移した。とりわけ、2014年1-3月期には消費税率引上げに伴う駆け込み需要の影響もあり、前期から+2.6ポイント上昇の▲11.1まで改善したが、同年4-6月期には駆け込み需要の反動等もあり、前期から▲12.1ポイント低下の▲23.2となりマイナス幅が拡大した。その後、同年7-9月期には前期から+4.5ポイント上昇の▲18.7まで改善したが、同年10-12月期には前期から▲0.7ポイント低下の▲19.4となり、マイナス幅は若干拡大した。足下の2015年1-3月期には、前期から+1.6ポイント上昇の▲17.8となり、持ち直しの動きを示している。先行きの見通しについても、持ち直しの動きとなっている。

1 中小企業景況調査は、中小企業基本法に定義する全国の中小企業・小規模事業者1万9千社を対象に、全国の商工会、商工会議所の経営指導員及び中小企業団体中央会の調査員により行われる聴き取り調査。調査対象の約75%が小規模事業者で構成されており、日銀短観に比べると、小規模事業者の割合が高い。

第1-2-1図 企業規模別に見た中小企業・小規模事業者の業況判断DIの推移
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企業規模別に見ると、中規模企業は中小企業全体の動きより高い水準で推移しているのに対し、小規模事業者は全体より低い水準にあり、中規模企業と比べてより厳しい状況となっている。

続いて、先ほど見た景況調査による中小企業・小規模事業者の業況判断DIの推移を、地域別に見ていく。

第1-2-2図(1)によると、地域別の業況判断DIは、2013年1-3月期から2014年1-3月期までは、地域でばらつきが見られるものの、総じて改善基調で推移していた。しかし、同年4-6月期は消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動等もあり、全ての地域においてマイナス幅が拡大した。同年7-9月期以降については、地域ごとに水準の差はあるものの持ち直しの動きがみられる。

続いて、業種別に業況判断DIの推移を見ると、2014年1-3月期には全ての業種においてマイナス幅が縮小しており、特に建設業については1994年の統計開始以来、初めてプラス水準(+3.9)を記録するなどの改善を見せていたが、同年4-6月期には、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動等もあり、全業種においてマイナス幅が拡大した。同年7-9月期には、建設業以外の全業種でマイナス幅が縮小し、足下では持ち直しの動きを示しているが、建設業など一部の業種で足踏みがみられる(第1-2-2図(2))。

第1-2-2図 地域別・業種別に見た中小企業・小規模事業者の業況判断DIの推移
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