第1節 我が国経済の動向と中小企業・小規模事業者の業況
第1部では、我が国経済の動向について概観するとともに、中小企業・小規模事業者1の動向及び中小企業・小規模事業者を取り巻く経営環境について確認する。
1 原則として、本白書における中小企業とは、中小企業基本法第2条第1項の規定に基づく「中小企業者」をいう。また、小規模事業者とは、同法同条第5項の規定に基づく「小規模企業者」をいう。さらに、中規模企業とは、「小規模企業者」以外の「中小企業者」をいう。集計・分析において具体的な定義を示している場合等は、その定義に準ずる。
始めに、我が国経済の動向について確認する。実質GDP成長率の推移(年間)を見ると、2024年の前年比成長率は0.1%となり、2023年の成長率を下回った。2024年の動きについて見ると、第1四半期は「輸出」の減少などによりマイナスであるものの、それ以降は、「民間最終消費支出」や「輸出」等の増加が寄与し、第2四半期から第4四半期にかけて3四半期連続で前期比プラスとなっている(第1-1-1図)。
経済産業省「鉱工業生産指数」を用いて、鉱工業の生産活動の状況を見ると、2020年4月には大幅な落ち込みとなった一方で、2020年9月頃に回復し、足下では緩やかな低下傾向にある(第1-1-2図)。
経済産業省「第3次産業活動指数」を用いて、非製造業や広義のサービス業などの第3次産業に属する対個人サービス・対事業所サービスの活動指数の推移を見ると、対個人を中心に2020年5月頃に大きく落ち込んだのち、2021年から緩やかに上昇しているが、2024年においてはおおむね横ばいとなっている(第1-1-3図)。
経済産業省「商業動態統計調査」を用いて、消費の動向を供給側から見ると、2020年3月から5月にかけて、卸売業、小売業共に大幅に低下したが、以降は足下にかけて緩やかな上昇傾向にある(第1-1-4図)。
財務省「貿易統計」を用いて、国・地域別の輸出入数量の推移を見ていく。輸出数量指数の推移を見ると、足下では「米国」、「EU」が大きく上昇していることが見て取れる(第1-1-5図)。
輸入数量指数の推移を見ると、「米国」は2020年の水準を下回る推移が続いているほか、「EU」は2024年1月及び11月に大きな落ち込みが見られた。2024年12月は、いずれの地域も回復している(第1-1-6図)。
次に、中小企業・小規模事業者の業況について確認する。
第1-1-7図は、「中小企業景況調査」(以下、「景況調査」という。)を用いて、企業規模別に業況判断DIの推移を見たものである。これを見ると、2020年は新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」という。)の感染拡大により大きく落ち込んだものの、2023年第2四半期における「中小企業」の景況認識は、1994年以降最高水準を記録した。一方で、足下では回復に足踏みの傾向が続いている。
第1-1-8図は、景況調査を用いて、業種別に業況判断DIの推移を見たものである。これを見ると、2020年第2四半期にいずれの業種も大きく業況判断が悪化したが、その後は回復傾向にあった。この傾向は2023年上半期においては継続していたものの、2024年以降は、いずれの業種も回復に足踏みの傾向が続いている。
第1-1-9図は、企業規模別に売上高・経常利益の推移を見たものである。これを見ると、「売上高(中小企業)」は、2021年第1四半期を底に増加傾向にあり、足下は増加幅に縮小が見られるものの、引き続き増加傾向が続いている。また、「経常利益(中小企業)」は、2020年第3四半期を底に増加傾向で推移しているが、大企業と比較して伸び悩んでおり、その差は拡大傾向にある。
また、中小企業における経常利益の推移を業種別に見ると傾向の違いが見て取れる。2010年からの推移を見ると、「建設業」などは上昇傾向で推移している一方、「宿泊業、飲食サービス業」などでは伸び悩んでいることが分かる(第1-1-10図)。
第1-1-11図を見ると、「小規模企業」では、売上高、経常利益共に足下において緩やかな増加傾向であることが見て取れる。