2024年版「小規模企業白書」 第1節 感染症の感染拡大と中小企業・小規模事業者への対応 | 中小企業庁

本章では、2023年5月に新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」という。)が5類感染症へ移行したことを受けて、感染拡大がこれまでの日本経済や中小企業・小規模事業者に与えた一連の影響について見ていく。

第1節 感染症の感染拡大と中小企業・小規模事業者への対応

はじめに、感染症の感染拡大の状況と、中小企業・小規模事業者への対応について見ていく。

1.新規陽性者数の推移

第1-2-1図は、厚生労働省による公表データを用いて、2020年1月から2023年5月までの感染症の新規陽性者数の推移を地域ごとに示したものである3。これを見ると、2020年1月に国内初の感染者が確認され、同年4月には国内で緊急事態宣言が発出、外出自粛要請や休業・時短営業の要請が出された。また、2021年においては、デルタ株を始めとする新たな変異株の流行等を背景に、感染者数の増大に対してまん延防止等重点措置・緊急事態宣言が発出された。

3 ここでいう「地域」は、下記の地域区分で設定している。
【北海道】北海道【東北】青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島【関東】茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野、静岡【中部】富山、石川、岐阜、愛知、三重【近畿】福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山【中国】鳥取、島根、岡山、広島、山口【四国】徳島、香川、愛媛、高知【九州・沖縄】福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

その後、2022年は、経済社会活動と感染症との両立をはかる「ウィズコロナ」を模索する中で、感染力が高いオミクロン株が主流となり、断続的に新規陽性者数が増大した。

第1-2-1図 新規陽性者数の推移

2.中小企業・小規模事業者への対応

第1-2-2図は、感染拡大期における2020年の経済産業省の対応状況を整理したものである4。これを見ると、緊急事態宣言発出前の1月から3月までの期間においては、感染症による中小企業・小規模事業者の経営面への影響に対応するため、経営支援の相談体制を整備したほか、一時的な売上げの減少等の業況悪化が見られた企業を対象に、セーフティネット貸付等、資金繰り支援を整備した。緊急事態宣言発出以降は、民間金融機関での実質無利子・無担保融資を開始し、持続化給付金や家賃支援給付金を開始するなど、資金繰り支援を一層強化した。

4 第1-2-2図、第1-2-3図、第1-2-4図で用いている内容は、内閣官房「新型コロナウイルスに関連した感染症について~関係省庁における対応状況一覧~(令和5年10月31日現在)」を参照している。

第1-2-2図 感染症の感染拡大による政府の主な対応(2020年)

2021年は、年初に再度の感染拡大を受けて、緊急事態宣言が再び発出されたほか、その後、2021年4月以降に急速に感染が拡大した感染症の変異株(デルタ株)の影響もあり、緊急事態宣言の延長、まん延防止等重点措置が相次いで発出された。

第1-2-3図は、2021年における経済産業省の対応状況を見たものである。これを見ると、2021年には、2020年より開始した資金繰り支援を継続したほか、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業、不要不急の外出自粛等の影響から、売上げが減少した中小企業・小規模事業者の事業継続を目的とする「一時支援金」の給付や、経営計画に基づく、小規模事業者等の販路開拓や業務効率化の取組を支援する「小規模事業者持続化補助金」など、深刻な影響を受けた中小企業・小規模事業者に対する経済的支援が継続して行われた。そのほか、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」や「事業再構築補助金」など、事業継続だけでなく、新たな需要の獲得や生産性向上に向けた中小企業・小規模事業者の設備投資等の取組を促進する支援策も実施されたことが分かる。

第1-2-3図 感染症の感染拡大による政府の主な対応(2021年)

第1-2-4図は、2022年の経済産業省における対応状況を見たものである。これを見ると、特に2022年3月には「中小企業活性化パッケージ」が策定され、コロナ資金繰り支援の継続のほか、債務が増大した中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促す総合的な支援策を展開したことが特徴的な施策として挙げられる。2022年1月から3月にかけて発出されたまん延防止等重点措置以降、時短営業や外出自粛等の動きが緩和されていく中で、「アフターコロナ」を見据えた施策が実行されたことがうかがえる。

第1-2-4図 感染症の感染拡大による政府の主な対応(2022年)

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