第5章 伴走支援・人材確保支援をはじめとする事業環境変化対策

第1節 人材・雇用対策

1.地域の中堅・中核企業の経営力向上支援事業(地域中小企業人材確保支援等事業)【令和6年度当初予算:21.3億円の内数】

地域の中核企業を始めとした中小企業・小規模事業者が、自社が抱える経営課題の解決に向け、多様な人材の確保・育成・活用や職場環境改善による人材の定着を図るため、人材戦略の検討・策定・実行のためのセミナー・マッチング等を推進する。

2.(再掲)中小企業連携組織対策推進事業【令和6年度当初予算:6.0億円】

3.中小企業基盤整備機構における人材育成事業【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】

中小企業経営者や経営幹部等に対し、中小企業の事例等を活用した座学による講義に加え、自社の経営データを用いた演習を通じて、自社が抱える経営課題の解決につながる実践的かつ現場に即した研修を実施する。

また、アクセス改善に向け、全国9か所の都市部で研修を提供する「地域本部キャンパス」、全国各地の自治体や支援機関等と連携した「サテライト・ゼミ」、オンラインで受講が可能な「WEBee Campus」を活用した研修を実施する。

4.魅力ある職場づくりに向けた雇用管理の改善の支援【令和6年度当初予算:50.8億円】

人材確保等支援助成金において、引き続き、魅力ある職場づくりのため労働環境の向上等に取り組み、従業員の職場定着の促進等を図る中小企業等の方々の支援を行う。また、人事評価制度と賃金制度の整備を通じて、従業員の生産性の向上、賃金アップ及び離職率の低下を図る事業主に対して助成する「人事評価改善等助成コース」の支給要件を見直して受付を再開する。

5.地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)【令和6年度当初予算:8.7億円】

地域における雇用の創出及び安定を図るため、雇用機会の不足している地域等において事業所の設置又は整備を行い、併せて地域の求職者等を雇い入れる事業主に対して、設置等の費用及び雇入れ人数に応じて助成を行う地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)を支給する。

6.早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)(仮称)【令和6年度当初予算:0.3億円】

東京一極集中の是正を図るとともに、人手不足に直面する地域の企業の人材確保を図るため、地方公共団体がデジタル田園都市国家構想交付金(地方創生推進タイプ(移住・起業・就業型))を活用して実施する移住支援事業により移住した者を雇い入れた事業主に対して、その採用活動に要した経費の一部を助成する。

7.地域活性化雇用創造プロジェクト【令和6年度当初予算:53.3億円】

地域における良質な雇用の実現を図るため、地域雇用の課題に対して、国や都道府県の施策との連携を図りつつ、成長分野や人材不足分野における魅力ある雇用の確保や就職促進等に取り組む都道府県に対して支援を実施する。

8.成長分野への人材移動の促進【令和6年度当初予算:169.7億円】

事業主にとってより分かりやすく、かつ、助成内容に沿った名称とするため、労働移動支援助成金及び中途採用等支援助成金を統合し、名称を早期再就職支援等助成金に変更する。

早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)により、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者(再就職援助計画対象者等)に対する再就職支援を民間職業紹介事業者への委託等により行う事業主に対して助成を行うとともに、離職前の訓練を実施する事業主の経費負担を軽減する観点から、職業訓練実施支援に実施助成を新設する。

また、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされた労働者及び特定受給資格者(雇用保険法第23条第2項に規定する特定受給資格者をいう。)等を早期に雇い入れた上で前職よりも賃金を5%以上上昇させた場合のほか、当該労働者への訓練(OJTを含む。)を行った事業主に対する早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)の支給を行う。

加えて、中途採用者の能力評価、賃金、処遇等の制度を整備した上で、中途採用率を拡大させた事業主に対して早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)の支給を行い、このうち、45歳以上の中高年齢者の中途採用率を拡大させるとともに、当該中高年齢者の賃金を前職よりも5%以上上昇させた事業主に対して支給額を加算する。

9.人材確保対策総合推進事業【令和6年度当初予算:48.2億円】

「人材確保対策コーナー」の拡充等を行い、人材不足分野におけるマッチング支援の強化を図る。

10.(欠番)

11.若者雇用促進法に基づくユースエール認定制度【令和6年度当初予算:2.9億円の内数】

若者の雇用管理が優良な中小企業について、「青少年の雇用の促進等に関する法律」(昭和45年法律第98号)に基づき、厚生労働大臣が「ユースエール認定」企業として認定し、中小企業の情報発信を後押しすることにより、当該企業が求める人材の円滑な採用を支援する。

12.最低賃金の引上げに向けた中小企業・小規模事業者支援【令和6年度当初予算:110.6億円】

最低賃金・生産性向上による賃金の引上げに取り組む中小企業・小規模事業者への支援として、

〔1〕全国の中小企業・小規模事業者を対象として、生産性向上のための設備投資等を行い、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い時間給)を一定額以上引き上げた場合に、その設備投資などに要した費用の一部を「業務改善助成金」により助成する。

〔2〕働き方改革に関する相談等にワンストップで対応するため、「働き方改革推進支援センター」を全国(47か所)に設置し、無料の窓口相談・訪問コンサルティングを実施する。

〔3〕生産性を高めながら労働時間の削減等に取り組む中小企業・小規模事業者や、傘下企業の労働時間削減や賃上げに向けて生産性向上に資する取組を行った中小企業団体に対し、その取組に要した費用を助成する。

13.キャリアコンサルティングの普及促進

企業(人事管理・人材育成)、労働力需給調整機関(職業マッチング)、学校(キャリア教育)などにおいて、キャリアコンサルティングの普及を進める。また、2016年4月に国家資格化されたキャリアコンサルタントについて、引き続き養成と周知に取り組む。さらに、2020年度に運営開始したキャリア形成サポートセンターを拡充し、2024年度より全国のハローワークに設置するキャリア形成・リスキリング相談コーナーにおいて、労働者等に対するキャリアコンサルティング機会を提供するとともに、各都道府県に設置するキャリア形成・リスキリング支援センターにおいて、従業員のキャリア形成やリスキリングに取り組む企業に対して、ジョブ・カードを活用した採用活動、人材育成、評価やセルフ・キャリアドック(※)の導入に関する相談・助言等の支援を実施する。

(※)企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組、また、そのための企業内の「仕組み」。

14.中小企業向け賃上げ促進税制【税制】

30年ぶりの高い水準となった賃上げ率を一過性のものにせず、構造的・持続的な賃上げを実現するため、「中小企業向け賃上げ促進税制」について、適用期限を令和8年度末まで延長した上で、税額控除率を最大45%に引き上げるなどの拡充を行う。具体的には、〔1〕雇用者給与等支給額を前年度より1.5%以上増加させた場合には、雇用者給与等支給額の増加額の15%を税額控除、〔2〕雇用者給与等支給額を前年度より2.5%以上増加させた場合には、雇用者給与等支給額の増加額の30%を税額控除できることとし、〔3〕教育訓練費を前年度より5%以上増加させた場合には税額控除率を10%上乗せ、〔4〕子育てとの両立支援、女性活躍支援に積極的な企業として認定を受けた場合には税額控除率を5%上乗せすることとした上で、〔5〕赤字等により賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額については5年間繰越しできることとする。

15.(再掲)起業家教育事業【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】

16.(再掲))地域デジタル人材育成・確保推進事業【令和6年度当初予算:21.3億円の内数】

第2節 経営支援体制の強化

1.中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業【令和6年度当初予算:34.6億円】

中小企業・小規模事業者等が抱える様々な経営課題に対応するワンストップ相談窓口として各都道府県に「よろず支援拠点」を設置することで経営課題の解決に向けた支援を実施する。

また、中小企業庁が所管する補助金を始めとした中小企業等の申請データや各支援機関の中小企業相談データ等、官民の中小企業等に関するデータの連携基盤であるミラサポコネクトについて、データの蓄積を着実に進めるとともに、蓄積されたデータを活用した中小企業支援の新たな方法等について、支援機関等とも連携しながら検証を行いつつ、それらの検証結果も踏まえ、適切に機能の改修やリリースを行う。

2.事業環境変化対応型支援事業

インボイス制度の導入やエネルギー価格・物価の高騰、最低賃金引き上げ等の様々な事業環境変化の影響を受ける中小企業・小規模事業者への相談や各種支援施策の活用を促すべく、中小企業団体等と連携した支援体制を強化することを目的とする。

(1)経営相談体制強化事業

外部環境の変化に伴う経営課題に対応するため、支援機関に対する専門家派遣や指導員向けの講習等を通じて、相談体制強化を図る。

(2)よろず支援拠点事業

外部環境の変化に伴う経営課題に対応するため、よろず支援拠点におけるコーディネーターの増員等を通じて、相談体制強化を図る。

(3)インボイス相談窓口事業

中小・小規模事業者がインボイス制度への対応を円滑に実施できるように、相談内容に応じた各種窓口への案内や相談体制の構築等を行う。

3.ローカルベンチマーク活用促進

ローカルベンチマークを活用した企業の事業性評価に基づく、経営改善や生産性向上に向けた取り組みを引き続き推進する。具体的には、中小企業・小規模事業者支援施策との効果的な連携を検討するほか、各支援機関などのローカルベンチマーク活用に関する取組のフォローアップ等を行う。

4.(再掲)中小企業連携組織対策推進事業【令和6年度当初予算:6.0億円】

第3節 経営安定対策

1.社会環境の変化等における中小企業対策

中小企業への影響が大きい社会環境の変化等において、中小企業・小規模事業者に対して、関係機関に相談窓口を設置し中小企業者等からの経営・金融相談等にきめ細かく対応する等、各種措置を講じる。

2.中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済制度)【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】

取引先企業の倒産により売掛金債権の回収が困難となった場合に、積み立てた掛金の額に応じて無利子、無担保、無保証人で共済金の貸付けを行う制度である、中小企業倒産防止共済制度について、引き続き、制度への加入促進と共済金等の支給を着実に実施する。

3.経営安定特別相談事業

経営の危機に直面した中小企業の経営上の様々な問題の解決に資するため、全国の主要な商工会議所及び都道府県商工会連合会に「経営安定特別相談室」を設置し、本相談室において、経営安定に関する幅広い分野の経営相談が円滑に実施されるよう日本商工会議所及び全国商工会連合会の実施する指導事業等の支援を実施する。

4.ダンピング輸入品による被害の救済【令和6年度当初予算:17億円の内数】

貿易救済措置のうちアンチダンピング措置は、他国企業から我が国に対するダンピング輸入により、国内産業が損害を受けた際に、国内産業からの申請に基づき政府が調査を実施した上で関税を賦課することにより、公正な市場競争環境を確保する措置である。2024年度も、国内産業からの申請を受け、国際ルール及び国内法令に基づき公正かつ適切に調査を進めていく。また、WTO協定整合的に調査を行うための調査研究を実施する。

第4節 財務基盤の強化

1.法人税の軽減税率【税制】

中小企業の年間800万円以下の所得金額に対する法人税率を、19%から15%に引き下げる措置を引き続き講じる。

2.中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例制度【税制】

取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、年間300万円を限度に、全額損金算入することができる措置(通算法人及び従業員500人超の法人を除く)を講じる。なお、令和6年度税制改正において、一定の見直しを行った上でその適用期限を2年延長(令和8年3月末まで)することとされた。

3.欠損金の繰越控除・繰戻還付【税制】

欠損金の繰越控除について、当期の事業年度に生じた欠損金を繰り越して翌期以降の事業年度(繰越期間:10年間)の所得金額から控除することができる措置を講じる。また、欠損金の繰戻還付について、当期の事業年度に生じた欠損金を1年繰戻して法人税の還付を請求することができる措置を講じる。

4.交際費等の損金不算入の特例措置の延長【税制】

交際費等を支出した場合、〔1〕定額控除限度額(800万円)までの損金算入または〔2〕支出した接待飲食費の50%までの損金算入のいずれかを選択適用できる措置を講じる。なお、令和6年度税制改正において、交際費等から除外される飲食費に係る基準を1人あたり1万円へ引き上げた上で、適用期限を3年延長(令和9年3月末まで)することとされた。

5.中小企業投資育成株式会社による支援

中小企業投資育成株式会社において、中小企業の自己資本の充実を促進し、その健全な成長発展を図るため、株式、新株予約権、新株予約権付社債等の引受けによる投資事業及び経営相談、事業承継支援等の育成事業を実施する。

第5節 人権啓発の促進

1.人権教育・啓発活動支援事業【令和6年度当初予算:2億円】

健全な経済活動の振興を促進するため、事業者を対象とした人権啓発のためのセミナー等の啓発事業を実施する。また、小規模事業者等が多く、特に重点的な支援が必要な地域又は業種に係る小規模事業者等の活性化のため、経営等の巡回相談事業及び研修事業を実施する。加えて、北海道や東京等での展示・販売事業や、アイヌ民工芸品の木彫事業者等の技術の向上や新商品開発のための研修等の実施を支援する。

第6節 官公需対策

1.中小企業・小規模事業者の受注機会増大のための取組【令和6年度当初予算:28億円の内数】

(1)「令和6年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」の策定及び周知

毎年度策定する「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」において、国等の中小企業者向け契約目標、中小企業者の受注機会の増大のために実施する措置等を閣議決定する。また、同基本方針を周知徹底するため以下の取組を実施する。

〔1〕経済産業大臣から各府省等の長、都道府県知事、全市町村の長及び東京特別区の長に対し、文書により基本方針の趣旨を説明するとともに、中小企業・小規模事業者の受注機会の増大に努めるよう要請する。

〔2〕地方自治体に対し基本方針の周知徹底を図るため、説明会(官公需確保対策地方推進協議会)を全国各地で開催する。

〔3〕基本方針をはじめとした国の施策や調達に関する取組事例などの情報共有を行い、国と地方自治体との連携方策を協議するための会議(都道府県中小企業者調達推進協議会)を開催する。

(2)「官公需情報ポータルサイト」の運用

中小企業・小規模事業者が官公需に関する発注情報を入手しやすくするため、国等や地方公共団体がホームページで提供している発注情報等を中小企業・小規模事業者が一括して入手できる「官公需情報ポータルサイト」を運営する。

第7節 資金繰り支援

1.セーフティネット貸付【財政投融資】

株式会社日本政策金融公庫が、社会的、経済的環境の変化等外的要因により、一時的に売上の減少等業況悪化を来たしている中小企業・小規模事業者等の資金繰りを支援する。

2.資本性劣後ローンの推進【財政投融資】

株式会社日本政策金融公庫が、新事業展開や経営改善に取り組む中小企業・小規模事業者に対し、財務体質を強化するとともに、民間金融機関からの資金調達の円滑化を図るため、金融機関の資産査定上自己資本とみなし得る一括償還の資金(資本性資金)を供給することで、中小企業・小規模事業者の資金繰りを支援する。

3.沖縄の中小企業金融対策【財政投融資】

沖縄振興開発金融公庫を活用した沖縄の中小企業対策は、日本政策金融公庫が行う業務・取組について同様に行うとともに、沖縄の特殊事情を踏まえ独自の貸付制度を拡充する。

4.(再掲)小規模事業者経営改善資金融資事業(マル経融資)【財政投融資】

5.(再掲)民間金融機関を通じた資金繰り支援(信用保証制度)【令和6年度当初予算:14億円】

6.(再掲)中小企業・小規模事業者経営力強化融資【財政投融資】

7.(再掲)中小企業活性化・事業承継総合支援事業(中小企業活性化事業)【令和5年度補正予算:52億円の内数、令和6年度当初予算:146億円の内数】

8.経営支援と一体となった高度化事業による設備資金の支援

工場団地・卸団地等の整備(集団化事業)、ショッピングセンター等の整備(施設集約化事業)、物流センター等の整備(共同施設事業)、商店街等の整備(集積区域整備事業)等を行う中小企業組合等に対して、都道府県と中小企業基盤整備機構が一体となってその設備資金を長期・低利(又は無利子)で融資する。また、融資に際しては、事前に事業計画について専門的な立場から診断・助言を行う。

9.金融行政における中小企業・小規模事業者に対する経営支援の強化等

金融機関において、不動産担保や経営者保証等に過度に依存することなく、取引先企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価(事業性評価)すること等を通して、ファイナンスを含めたきめ細かな支援が行われるよう促す。

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