第3章 創業・事業承継等を通じた挑戦・自己変革の推進
第1節 創業支援
1.ファンド出資事業(起業支援ファンド、中小企業成長支援ファンド)
民間の投資会社が運営する投資ファンドについて、中小企業基盤整備機構が出資(ファンド総額の1/2以内又は4/5以内)を行うことで、民間資金の呼び水としてファンドの組成を促進し、創業又は成長初期の段階にあるベンチャー企業(中小企業)、新事業展開等により成長を目指す中小企業への投資機会の拡大を図る。
2.起業家教育事業【中小企業基盤整備機構運営費交付金の内数】
将来的に創業者となる人材を輩出し、開業率向上につなげるため、高等学校等による起業家教育の導入を推進し、創業への関心や起業家に必要とされるマインドの向上を図る。
3.ローカルスタートアップ支援制度【令和6年度当初予算:6.0億円の内数】
ローカル10,000プロジェクトの地方自治体独自の取組への支援を強化するなど支援を拡充した「ローカルスタートアップ支援制度」を通じて、引き続き地域でのスタートアップを幅広く支援する。
4.新規開業支援資金【財政投融資】
株式会社日本政策金融公庫が、新たに事業を開始する者または、新規開業しておおむね7年以内の者を対象に優遇金利を適用し、多様な事業者による新規事業の創出を支援する。
5.女性、若者/シニア起業家支援資金【財政投融資】
株式会社日本政策金融公庫が、新たに事業を開始する者又は新規開業しておおむね7年以内の者で、女性や35歳未満の若者、55歳以上の高齢者を対象に優遇金利を適用し、多様な事業者による新規事業の創出を支援する。
6.再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)【財政投融資】
株式会社日本政策金融公庫が、新たに事業を開始する者又は新規開業しておおむね7年以内の者で、事業に失敗した起業家の経営者としての資質や事業の見込み等を評価することにより、再起を図る上で、困難な状況に直面している者に対して融資を実施する。
7.中小企業・小規模事業者経営力強化融資【財政投融資】
株式会社日本政策金融公庫が、認定経営革新等支援機関による指導及び助言を通じ経営革新又は異分野の中小企業と連携して新分野の開拓等を行う中小企業の経営力や資金調達力の強化を支援するため、必要な資金の貸付を行う。令和6年度制度改正により、中小企業基盤整備機構によるハンズオン支援を受けて経営課題の解決に取り組む者を追加する。
8.創業支援貸付利率特例制度【財政投融資】
株式会社日本政策金融公庫が、新たに事業を開始する者又は新規開業後税務申告を2期終えていない者への貸付利率を引下げ、創業前・後の円滑な資金調達を支援し、創業しやすい環境の創出や創業機運の醸成を図る。
9.経営革新支援事業
中小企業等経営強化法に基づき、中小企業が新たな事業活動を行うことで経営の向上を図ることを目的として作成し、承認された経営革新計画に対し、低利の融資制度や信用保証の特例等の支援策を通じ、その事業活動を支援する。
また、引き続き都道府県とも密に連携しながら電子申請システムの更なる機能向上に取り組むとともに、都道府県に対して、同システムを用いた電子申請の導入を働きかけ、令和6年度末時点で累計10都道府県の導入を目指す。
10.オープンイノベーション促進税制【税制】
事業会社とスタートアップのオープンイノベーション促進やスタートアップの出口戦略の多様化の観点から、イノベーションの担い手となるスタートアップ企業の株式を取得する事業会社に対し税制措置(法人税の所得控除)を講じる。なお、令和6年度税制改正において、適用期限を2年間延長することとされた。
11.地域における創業支援体制の構築
地域の創業を促進させるため、産業競争力強化法において、市区町村が民間の創業支援等事業者と連携して創業支援等事業計画を作成し、国の認定を受けた場合、計画に基づく特定創業支援等事業による支援を受けた創業者に対し、信用保証の特例、税制(登録免許税軽減)等の支援を行うとともに、創業支援等事業者に対し信用保証等の支援を行う。
12.わたしの起業応援団【令和6年度当初予算:7.3億円の内数】
2020年に設立した「わたしの起業応援団」において、引き続き女性起業家の支援事例や支援手法・関係省庁の施策情報の共有を行う。また、スタートアップの起業家に占める女性の割合は少なく、女性起業家特有の課題も存在することから、女性起業家支援を総合的に推進するため、2023年5月に公表した「女性起業家支援パッケージ」に基づき、「わたしの起業応援団」を地域ごとに一貫して女性起業家支援が行える体制に拡充し、女性起業家の支援プログラム等を行っていく。
13.エンジェル税制【税制】
スタートアップに対する個人からの資金供給を一層促す観点から、一定の新株予約権の取得金額も本税制の対象である株式の取得金額に算入可能とするほか、信託を通じたスタートアップ投資を対象化する。また、引き続き本税制の普及啓発を実施し、スタートアップの起業と資金供給の環境整備を図る。
第2節 事業再生の支援
1.中小企業活性化・事業承継総合支援事業(中小企業活性化事業)【令和5年度補正予算:52億円の内数、令和6年度当初予算:146億円の内数】
各都道府県の商工会議所等に設置した中小企業活性化協議会において、事業の収益性はあるが、増大する債務等により経営状況が悪化した中小企業・小規模事業者に対し、資金繰り管理や採算管理などの早期の収益力改善、経営改善から抜本的な事業再生に向けた支援等を行うとともに、経営改善計画策定支援事業を活用し、民間専門家との連携を図ることで、同協議会がハブとなり、中小企業・小規模事業者の収益力改善・事業再生・再チャレンジを地域全体で推進していく。また、2023年度に、関係省庁が連携してとりまとめた再生支援の総合的対策を踏まえて、官民金融機関や信用保証協会等と連携し、挑戦意欲がある事業者の計画策定等を通じた経営改善や再生を加速する。
2.中小企業再生ファンド
事業再生に取り組む中小企業への経営支援や資金供給等を実施するため、中小企業基盤整備機構と地域金融機関、信用保証協会等が一体となって、中小企業の再生を地域内で支援する地域型ファンドや広域的に支援する全国型ファンドの組成・活用の促進に取り組み、民間金融機関による実質無利子・無担保融資の返済開始の最後のピークを迎えることに伴い高まっている中小企業の再生支援のニーズに万全を期す。
第3節 事業承継・引継ぎ等への支援
1.中小企業活性化・事業承継総合支援事業(事業承継総合支援事業)【令和5年度補正予算:52億円の内数、令和6年度当初予算:146億円の内数】
全国の認定支援機関等に設置された事業承継・引継ぎ支援センターにおいて、後継者不在の中小企業・小規模事業者と事業等の譲受を希望する事業者とのマッチング支援や、プッシュ型の事業承継診断・事業承継計画の策定支援等を実施する。また、事業承継・引継ぎの機運醸成に向けた普及啓発や、M&A機関の登録制度といった事業承継・引継ぎ推進に係る基盤整備を実施する。
2.後継者支援ネットワーク事業【令和6年度当初予算:4.4億円】
後継者による既存事業及び経営資源の活用を踏まえた新規事業等の企画・実行に向けた具体的な行動を引き出すため、後継者向けのピッチイベントを開催する。ピッチイベントを通じた、後継者の掘り起こし並びに後継者同士、先輩経営者とのつながり強化も図る。さらに、ピッチイベント出場者には先輩経営者等を派遣して、事業計画の磨き上げ等を実施する。
3.中小グループ化・事業再構築支援ファンド出資事業【令和5年度補正予算:120億円】
独立行政法人中小企業基盤整備機構の出資によりファンドを組成し、「グループ化」・「事業再構築」への取組を通じた成長を目指す中小企業に対する、リスクマネーの供給、ハンズオン支援を実施する。
4.中小企業経営力強化支援ファンド
長期化する新型コロナウイルス感染症の影響により業況が悪化した、地域経済の中核となる中小企業等の経営力強化と成長を支援する。具体的には、中小企業基盤整備機構からの出資も呼び水に、官民連携の全国ファンド等を組成した上で、資本性資金の投入ときめ細やかなハンズオン支援を行うことで、経営力の強化と成長を図り、事業再構築や事業再編を促進する。
5.事業承継円滑化支援事業
全国各地で中小企業の事業承継を広範かつ高度にサポートするため、中小企業支援者向けの研修や事業承継フォーラムによる中小企業経営者等への普及啓発を実施する。
6.中小企業事業再編投資損失準備金【税制】
経営資源の集約化によって生産性向上等を目指す計画の認定を受けた中小企業が、計画に基づくM&Aを実施した場合に、準備金の積立を認める措置を講じる。なお、令和6年度税制改正において、成長意欲のある中堅・中小企業による中小企業の複数回M&Aを集中的に後押しするため、積立率を大幅に引き上げ(2回目のM&Aは90%、3回目以降は100%)、準備金積立の据置期間を長期化(10年間)した上で、適用期限を3年間延長(令和9年3月末まで)することとされた。
7.法人版事業承継税制(特例措置)【税制】
特例承継計画を提出し、10年以内(2027年12月末まで)に実際に承継を行う者を対象に、非上場株式に係る贈与税・相続税の納税を猶予・免除する特例措置を講じる。なお、令和6年度税制改正において特例承継計画の提出期限を2年間延長(令和8年3月末まで)することとされた。
8.個人版事業承継税制【税制】
平成31年度税制改正において、「個人版事業承継税制」を創設し、個人事業承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象に、事業用資産に係る贈与税・相続税の納税を猶予・免除する特例措置を講じる。なお、令和6年度税制改正において、個人事業承継計画の提出期限を2年間延長(令和8年3月末まで)することとされた。
9.中小企業・小規模事業者の事業再編等に係る税負担の軽減措置【税制】
M&Aにより経営資源や事業の再編・統合を通じて事業の継続・技術の伝承等を図る事業者を支援するため、中小企業等経営強化法上の認定を受けた経営力向上計画に基づいて再編・統合を行った際にかかる不動産取得税を軽減する措置を講じる。なお、令和6年度税制改正において、その適用期限を2年延長(令和8年3月末まで)することとされた。
10.経営承継円滑化法による総合的支援
経営承継円滑化法に基づき、相続人間の一定の合意により、遺留分に伴う相続紛争を防止するため、民法の特例措置を講じる。また、事業承継に伴う各種資金ニーズに対応するための金融支援措置を講じる。さらに、事業承継(M&Aを含む)に伴う株式の集約を円滑化するため、所在不明株主からの株式買取り等の手続きに必要な期間を5年から1年に短縮する会社法の特例措置を講じる。
11.小規模企業共済制度
小規模企業者である個人事業主や会社等の役員が掛金を積み立て、廃業や引退をした際に共済金を受け取れる制度であり、いわば小規模企業の経営者のための退職金制度である小規模企業共済制度について、引き続き、制度への加入促進と共済金等の支給を着実に実施する。