第3節 まとめ
本章では、中小企業の成長に向けた投資意欲と、成長に向けた取組について確認し、成長につながり得る成長投資、及び成長投資の効果を高めることにつながる可能性のある取組について分析した。
第1節では、2020年から2023年にかけて、成長に向けた投資に意欲的な中小企業が増加していることを確認した。「新たな需要を獲得するための行動をするべき」、「付加価値を高めるための行動をするべき」と考える理由として最も多いのは「利益を上げるため」であったが、次いで「賃上げ等により従業員の生活を豊かにするため」となっており、こうした中小企業が成長と賃上げにより、日本経済を牽引していくことが期待される。他方、「損失を避けるために静観するべき(投資行動等は行わない)」と考える理由としては、近時の不確実性の高い経営環境や、経営資源の制約に関する内容が多く挙げられていた。
第2節では、中小企業の成長に向けた取組として、設備投資、M&A、イノベーション活動といった成長投資、また、海外展開に焦点を当て、その取組状況や効果について分析を行った。
設備投資は、感染症の感染拡大以降における、成長に向けた設備投資の実施状況を確認した。業種別で実施状況に違いはあるが、いずれの業種においても、設備投資の実施が売上高増加に寄与している可能性が示唆された。また、無形固定資産投資についても、実施企業と非実施企業を比較し、実施企業においてより売上高が増加しており、無形固定資産投資の実施が成長につながる可能性を示した。
M&Aは、特に中小企業において、実施件数が増加していることを確認した。また、M&A成立前後のPMIに係る取組については、相手先の従業員や経営者との相互理解を深めることが特に重要である可能性が示唆された。さらに、M&Aの実施による満足度を高めるための取組としては、相手先を積極的に探索することや、M&Aの実施回数を重ねることでノウハウを蓄積することの重要性も示した。
イノベーション活動は、ニーズの細分化・複雑化及び予測困難性の高まりにより、技術シーズを機動的に新規事業につなげる中小企業によるイノベーション活動の重要性が高まっていること、また、国として、リスク分散の観点からも、主として中小企業による多数のイノベーション活動が行われる必要があることから、その重要性は高く、足下ではその取組が拡大している状況が確認された。今後の更なる拡大が期待されるが、中小企業がイノベーション活動を実施するに当たって様々な課題があると見られており、これに対して外部の機関・人材の活用が有効である可能性を示唆した。
海外展開は、外需の獲得につながり日本経済の発展にも寄与する重要な取組である。一方で、業種や事業規模などによっては黒字化するまでに比較的長期を要している企業も存在すると見られ、そのような観点でも事前の準備を含めた支援機関の効果的な活用が期待される。