第5節 サプライチェーンの混乱と調達遅れの状況

本節では、世界的な半導体不足や感染症による都市のロックダウン、ロシアによるウクライナ侵略等によるサプライチェーンの混乱を通じた影響と、中小企業が行った対策の取組等を概観する。

第1-1-35図は、(株)東京商工リサーチ「原材料・資材の『調達難・コスト上昇に関するアンケート』調査」13を用いて、中小企業において、前年と比べた原材料や部品の調達遅れ状況を、2022年8月、10月、12月において見たものである。これを見ると、2022年8月時点では、約4割の中小企業が調達遅れが「生じており、昨年より悪化している」と回答しているが、2022年12月時点では約2割にまで減少していることが分かる。それに対して「現時点で生じていない」と回答した割合は4ポイント程度の増加となっていることから、サプライチェーンの混乱は続いているものの、2022年8月と比較すると改善していることが分かる。

13 (株)東京商工リサーチ「原材料・資材の『調達難・コスト上昇に関するアンケート』調査」:(株)東京商工リサーチが2022年8月、2022年10月、2022年12月において、企業を対象にインターネットによるアンケート調査を実施(有効回答6,375件(2022年8月)、5,214件(2022年10月)、4,889件(2022年12月))。

第1-1-35図 原材料や部品の調達遅れの影響(前年比)

続いて、第1-1-36図は、(株)東京商工リサーチが実施した「中小企業が直面する経営課題に関するアンケート調査」を用いて、世界的な原材料不足によるサプライチェーンへの影響について見たものである。これを見ると、「海外からの原材料・部品供給の遅れ・混乱」、「生産・製造量の減産や遅れ・混乱」が、そのほかの内容と比べて大きな影響として挙げられていることが分かる。

第1-1-36図 世界的な原材料不足によるサプライチェーンへの影響

第1-1-37図は、サプライチェーン強靱化に向けた対策の取組状況を2020年と現在で比較したものである。これを見ると、2020年時点と比べて、現在時点では「在庫管理の強化」「仕入調達先の分散化・多様化」をはじめ、各取組を進める企業の回答割合が増加しており、感染症下と比べて、サプライチェーンの強靱化に向けた取組が進展していることが分かる。

第1-1-37図 サプライチェーン内における対策の取組

第1-1-38図は、世界的に調達難が続いていた半導体関連素材の取引をしている企業による、半導体関連素材の供給見込みを見たものである。これを見ると、今後3年間では、半導体関連素材の供給が不足するという見込みが強いことが分かる。

第1-1-38図 今後3年間における、貴社が利用する半導体関連素材の供給見込み

第1-1-39図は、半導体関連素材の取引をしている企業による、半導体関連部品を安定的に供給するための取組状況を見たものである。これを見ると、「調達先の分散」や「在庫の積み増し」といった取組をしている企業が3割程度となっており、半導体関連部品の安定供給に向けた取組が、一定程度進められている状況であることが分かる。

第1-1-39図 半導体関連部品を安定的に供給するための取組

本章では、中小企業・小規模事業者の経営環境は、感染症流行後の水準からは回復しつつあるものの、足下の急激な為替や物価の変動、サプライチェーン混乱等の影響で引き続き厳しい状況にあることを示した。

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