2023年版 中小企業白書の概要(エグゼクティブ・サマリー)

第1部 令和4年度(2022年度)の中小企業の動向

第1章 中小企業・小規模事業者の動向

● 足下の業況について、感染症流行前の水準に戻りつつある一方で、宿泊や交通など、業種によっては引き続き厳しい状況が続いている。

● 経営環境について、物価高騰により、中小企業は収益減少等の影響を受けているほか、人手不足も深刻な状況にある。こうした中で、設備投資額は増加傾向にあり、中小企業は今後の投資に向けて、生産能力の拡大等を重視している。

第2章 激変する外部環境と中小企業の取組

● 感染症やカーボンニュートラルといった構造変化の中で、デジタル化や事業再構築に取り組む中小企業の割合が増えているとともに、カーボンニュートラルを好機と捉えてCO2排出量の把握やイノベーションに取り組んでいる中小企業が一定数存在している。

第3章 中小企業の実態に関する構造分析

● 中小企業・小規模事業者において、価格転嫁と賃上げには一定の関係があり、賃上げの原資を確保する上でも、価格転嫁が重要である。

● また、足下の賃上げに限らず、若者・女性が「稼げる仕事・豊かな暮らし」を享受できる地域社会を創ることは、実質可処分所得や可処分時間が少ない東京圏から地方へ若者・女性の人口移動を促し、少子化対策にも貢献し得る。

第4、5章 中小企業におけるイノベーション、地域内の企業立地

● 革新的なイノベーション活動に取り組んでいる企業においては、競合との差別化や販路拡大といった効果を得ている。

第2部 変革の好機を捉えて成長を遂げる中小企業

第1章 成長に向けた価値創出の実現

● 企業の中長期的な成長に向けて、競合他社と異なる価値を創出するための戦略を構想し、実行することが重要と示唆される中、価値創出のための「戦略」と、「戦略」の構想と実行の核である「経営者」に焦点を当てた。

-まず、戦略については、競合他社と異なる価値創出のあり方を反映した戦略の構想や実行を通じて差別化を図ることが、企業の成長につながる。こうした戦略の構想や実行に向けて、特徴ある顧客・ニーズ等の設定や価値創出を継続し、試行錯誤などに取り組むことが重要。

-経営者については、企業の戦略構想・実行力を支え、成長を促す外部プレーヤーの存在が重要な役割を担っている実例も存在し、経営者仲間との積極的な交流が企業の成長意欲を喚起している傾向にある。

● また、価値創出のための戦略を実現するためには、人材や資金といった経営者を支える内部資源(リソース)・体制の充実も重要な要素である。

特に、人材戦略の策定やエクイティ・ファイナンスの活用に向けたガバナンスの構築・強化は、こうした戦略実現に資する人材や資金の獲得を促す手段となる。

第2章 新たな担い手の創出

● 事業承継・M&Aは、経営資源の散逸を防ぐとともに、経営者の世代交代を通じた企業変革の好機でもあり、若い後継者ほど、新しい商品・サービスの提供といった事業再構築に取り組む傾向がある。

● また、後継者のうち、先代経営者から経営に関する意思決定などを任されているほど、新たな取組に挑戦する傾向にあり、従業員からの信認を得ることが業績向上につながっている。

● さらに、M&A成立前後の統合作業(PMI:Post Merger Integration)に早期に取り組むことが期待以上の成果につながる。

第3章 中小企業・小規模事業者の共通基盤

● 中小企業・小規模事業者の一層の価格転嫁を進めるためには、価格交渉促進月間のサイクルやフォローアップ調査の充実・公表、転嫁状況の芳しくない親事業者に対する指導・助言等の実施による受注側事業者の取引環境の整備といった取引適正化が必要である。

● 中小企業のデジタル化は、ビジョン・目標の設定や業務の棚卸しなどを戦略的に実施している企業ほど、進展している。デジタル化が進展している企業においては、経営者の積極的な関与に加え、組織的・戦略的な取組を行う傾向にある。また、必ずしも高度なスキルを持つデジタル人材がいなくても、デジタル化を進展させることは可能である。

● 中小企業支援機関においては、各々で支援件数や対応できる経営課題に違いが見られる。経営力再構築伴走支援は全国的に取組が進展しているが、より支援の効果を高めるためにも、支援ノウハウの蓄積や支援機関内の相談員の能力向上が必要である。

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