本章では、中小企業・小規模事業者のイノベーションの現状について確認していく。

第1節 中小企業におけるイノベーションの実態

まず、中小企業におけるイノベーションの実態について、確認していく。

1.中小企業における研究開発投資状況

第1-4-1図は、経済産業省「企業活動基本調査」を用いて、企業規模別・業種別に、研究開発費、及び売上高比研究開発費の推移を見たものである。これを見ると、中小企業では製造業において研究開発費が上昇傾向にあるものの、売上高比研究開発費については、大企業と比べて、製造業・非製造業共に低水準にとどまっている。

第1-4-1図 企業規模別・業種別に見た、研究開発費及び売上高比研究開発費の推移

2.中小企業におけるイノベーション活動の取組状況

第1-4-2図は、文部科学省科学技術・学術政策研究所「全国イノベーション調査2020年調査」1を用いて、従業員規模別に、2017年から2019年までの3年間におけるイノベーション活動2の実行状況を見たものである。これを見ると、中規模企業では約6割、小規模企業では約半数の企業がイノベーション活動に取り組む一方、大規模企業と比べると、イノベーション活動に取り組んでいる企業の割合は少ないことが分かる。

1 文部科学省科学技術・学術政策研究所「全国イノベーション調査2020年調査」:文部科学省科学技術・学術政策研究所が、2020年11月において、従業員数10人以上の企業(一部の産業を除く)の442,978社の企業を対象母集団とし、31,088社を標本抽出したアンケート調査を実施(有効回答12,534件、有効回答率40.3%)。なお、本調査におけるイノベーションとは、「新しい又は改善されたプロダクト又はプロセス(又はそれの組合せ)であって、当該単位の以前のプロダクト又はプロセスとはかなり異なり、かつ潜在的利用者に対して利用可能とされているもの(プロダクト)又は当該単位により利用に付されているもの(プロセス)」とされている。

2 ここでいう「イノベーション活動」とは、文部科学省科学技術・学術政策研究所(2021)によると、「企業によって着手された、当該企業にとってのイノベーションに帰着することが意図されている、あらゆる開発上、財務上、及び商業上の活動を含むもの」であるとされている。

第1-4-2図 従業員規模別に見た、イノベーション活動の実行状況(2017-2019年)

続いて第1-4-3図は、従業員規模別に、2017年から2019年までの3年間におけるイノベーションの実現状況を見たものである。これを見ると、従業員規模が大きい企業ほど、イノベーションを実現している企業が多い傾向にあり、特に、プロダクト・イノベーション実現3においては、大規模企業の割合に対して、中規模企業、小規模企業の割合が半分以下となっていることが分かる。

3 文部科学省科学技術・学術政策研究所(2021)によると、ここでいう「プロダクト・イノベーション」とは、「新しい又は改善された製品又はサービスであって、当該企業の以前の製品又はサービスとはかなり異なり、かつ市場に導入されているもの」を指し、「ビジネス・プロセス・イノベーション」とは、「1つ以上のビジネス機能についての新しい又は改善されたビジネス・プロセスであって,当該企業の以前のビジネス・プロセスとはかなり異なり、かつ当該企業内において利用に付されているもの」を指す。

第1-4-3図 従業員規模別に見た、イノベーション実現状況(2017-2019年)

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