付注2-2-1 因子分析について
第2部第2章第3節における因子分析について補足する。
因子分析とは、観測変数の背後にある直接測ることができない潜在的な概念を測定することを目的とした多変量解析の手法の一つである。複数の観測変数間の相関関係をもとにその共通性を明らかにすることができ、その結果から各観測変数に強く影響を与える因子を発見することができる(付図1)。
因子分析の概要は以下のとおり。
〔1〕 因子分析の種類
因子分析には、観測変数間の相関を説明する因子についての仮説を事前に設定し、実際のデータを用いてその検証を行う確証的因子分析と、因子についての仮説を事前に設定せず、観測されたデータを用いて因子を探索的に検討する探索的因子分析に大別される。
〔2〕 因子軸の回転
因子分析では各観測変数が共通因子に与える影響度合いを表す因子負荷量を用いて因子の解釈を行うが、解釈が容易になるように多くの場合で因子軸の回転が行われる。代表的な因子軸の回転方法として、共通因子間に相関関係を仮定する斜行回転と、共通因子間に相関関係を仮定しない直行回転がある。回転方法に関しては、分析する観測変数に相関関係を仮定するのが妥当かを吟味した上で分析者が回転方法を決定する。
〔3〕 因子の解釈
〔2〕で算出された因子負荷量をもとに、各共通因子への因子負荷量が大きい観測変数を参考に、それらの変数に共通して影響を与えている因子がどのようなものかを分析者が解釈する。
今回の分析では、「中小企業の経営力及び組織に関する調査」における35設問を観測変数として探索的因子分析を実施した(付図2)。また、調査趣旨である経営者の素質・能力には相関関係の存在が想定されるため、因子軸の回転には斜行回転を採用している。そのため、共通因子間にも正の相関関係が確認されている(付図3)。