第4節 まとめ
本章では、感染症がもたらした人々の生活や企業業績への影響について、各種データを用いて確認するとともに、感染症下における事業再構築の実施状況について分析した。
第1節では、既存の統計に加えオルタナティブデータを用いて、感染症がもたらした人々の行動、企業業績、地域経済への影響について概観した。緊急事態宣言やまん延防止措置が発令された時期には、全国の主要地点の多くで人口変動率が2019年同月比で減少していたことを確認した。同時期には特に外食、宿泊などの消費支出が大きく減少している。また、多くの中小企業が感染症により企業活動に影響を受け、企業利益が減少したことも確認した。地域経済においては、感染症の拡大に伴って生産・設備投資の停滞が見られたが、足元で持ち直しの傾向を確認した。加えて、キャッシュレス化の進展など、人々の行動様式への影響も確認した。
第2節では、感染症下で実施された中小企業政策の実績について概観した。最初に感染症が流行した時期に講じられた資金繰り支援策について、感染症による影響の収束と共に終了した支援策がある一方、感染症の再流行と共に再び利用が増加する支援策もあることを確認した。また、売上高の減少や利益水準の低下への対応に限らず、将来の不確実性に備え、多くの中小企業が資金調達を実施していることを確認した。
第3節では、感染症下での事業再構築の実施状況について分析した。事業再構築を実施した企業の大半が売上面での効果が既にある又は見込まれるとしており、売上面以外でも、既存事業とのシナジー効果などを感じている企業も存在していることを確認し、事業環境が大きく変化する中で、事業再構築の実施を検討することの重要性について、事例を交えて示した。