第2章 需要を見据えた経営の促進
第1節 生産性向上・技術力の強化
1.戦略的基盤技術高度化・連携支援事業【R2年度当初予算:131億円】
中小企業・小規模事業者が大学、公設試等の研究機関等と連携して行う革新的な研究開発等に関する取組やIT利活用等による新しいサービスモデルの開発等を支援した。2020年度からは従来申請要件としていた法律による認定等を不要とし、申請負担の軽減を図った(採択件数:戦略的基盤技術高度化支援事業105件、商業・サービス競争力強化連携支援事業39件)。
2.中小企業のものづくり基盤技術の高度化に向けた総合支援
中小ものづくり高度化法に基づき、高度化指針に沿った特定研究開発等計画について認定を行い、計画が認定された中小企業・小規模事業者に対して戦略的基盤技術高度化支援事業や、融資、保証の特例等により総合的な支援を実施した。
3.生産性革命のための固定資産税の減免措置
新たに導入する設備が所在する市区町村の導入促進基本計画等に合致する先端設備等導入計画の認定を受けた中小企業者等が導入する先端設備等にかかる固定資産税を自治体の判断により最大3年間ゼロにできる措置を講じた。2020年12月31日時点で、固定資産税をゼロとする措置を実現した1,651自治体において49,826件の計画が認定され、認定を受けた計画に盛り込まれた設備等の数量は合計で144,692台あり、約1兆5,222億円の設備投資が見込まれている。
4.研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)【税制】
中小企業者等について、試験研究費の総額に応じて税額控除を認める「総額型」に、試験研究費の増加割合に応じた税額控除率(12%~17%)を適用する(大企業は6%~14%)とともに、特別試験研究費(大学、国の研究機関、企業等との共同・委託研究等の費用)の総額に係る税額控除制度、試験研究費の額が平均売上金額の10%相当額を超える場合の控除率の割増し措置等を引き続き講じた。
5.中小企業技術革新制度(SBIR制度)に基づく支援
新技術開発のための特定補助金等の指定、支出の目標額、特定補助金等を利用して開発した成果の事業化支援措置等の方針の作成等により、引き続き国の研究開発予算の中小企業・小規模事業者への提供拡大、及び技術開発成果の事業化を図った。さらに、技術開発成果の事業化を促進するため、特定補助金等の採択企業の技術力をPRするデータベースや日本政策金融公庫による低利融資等の事業化支援措置を中小企業・小規模事業者等に周知し、利用促進を図るとともに、特定補助金等への多段階選抜方式の導入拡大を図った(2020年度における支出目標額:463億円)。
6.企業活力強化資金(ものづくり法関連)
日本政策金融公庫が必要な資金の貸付の制度を運用した。
7.ものづくり・商業・サービス高度連携促進事業【R2年度当初予算:10.1億円】
複数の中小企業・小規模事業者等が、事業者間でデータ・情報を共有し、連携体全体として新
たな付加価値の創造や生産性の向上を図るプロジェクトを支援した(2020 年度採択者数:71者)。
8.中小企業等経営強化法
令和2年6月に成立した、中小企業の事業承継の促進のための中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律に基づき、外国法人等に対する日本政策金融公庫の直接融資制度の創設及び第三者承継を行う者が経営者保証なしでM&A資金等を調達できるよう信用保証制度を拡充するなどの措置を講じた。
また、中小企業者等が、経営力向上のための人材育成や財務管理、設備投資などの取組を記載した経営力向上計画を策定し、認定された企業に対し、税制面や日本政策金融公庫の融資制度等の金融面の支援を講じた。
なお、令和2年4月より、経営力向上計画の電子申請を開始した(経済産業省及び一部省庁)。
9.賃上げの促進に係る税制【税制】
持続的な賃上げや人材投資等に取り組む中小企業等を支援するため、給与等支給額を増加させた場合に、その増加額の一定割合の税額控除ができる措置を講じた。
10.中小企業経営強化税制【税制】
中小企業等経営強化法に基づき経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、その経営力向上計画に基づき経営力向上設備等を取得した場合に、即時償却又は10%の税額控除(資本金3000万円超の法人の税額控除は7%)ができる措置を講じた。2020年4月には新型コロナウイルス感染症対策として、デジタル化設備を対象に追加した。
11.産業技術総合研究所における中堅・中小企業への橋渡しの取組【R2年度当初予算:産業技術総合研究所運営費交付金623.9(億円)の内数】
産総研の技術シーズと企業等のニーズを橋渡しするコーディネータを拡充し、209名配置(2020年6月末時点)。中小企業等を支援するコーディネータにより、適切な専門家を紹介し自社だけでは研究できないテーマについては、受託研究や共同研究などを実施した。
12.医工連携イノベーション推進事業【R2年度当初予算:21.4億円】
医療機器開発支援ネットワークを推進し、開発初期段階から事業化に至るまでの切れ目ない支援として、事業開始からの相談件数は約1,800件、このうち、専門家による助言(伴走コンサル)は約900件を実施した。また、ものづくり中小企業や医療機関等の連携による医療機器開発を促進するため、開発・事業化事業において本年度26件の医療機器実用化を支援した。
第2節 IT化の促進
1.IT活用促進資金【財政投融資】
中小企業の生産性向上に寄与するIT 活用を促進するため、日本政策金融公庫による融資を着実に実施した(2020年度の実績は13件、4.8億円(2020年12月末時点))。
2.共創型サービスIT連携支援事業【R2年度当初予算:5.0億円】
既存の複数のITツールを連携・組み合わせたシステムを中小サービス業等が導入する際にかかる費用を支援した。また、その際、ITベンダーと中小サービス業等が共同でITツールの機能改善を進め、当該ツールの汎用化による業種内・他地域への普及を目指す取組を支援した。
第3節 販路・需要開拓支援
1.小規模事業対策推進等事業【R2年度当初予算:59.2億円】
小規模事業者支援法第7条に基づき認定を受けた「経営発達支援計画」に沿って商工会・商工会議所が取り組む伴走型の小規模事業者支援を推進し、小規模事業者の需要を見据えた事業計画の策定や販路開拓等を支援(採択数:1,463件)した(伴走型小規模事業者支援推進事業)。また、全国商工会連合会、日本商工会議所が各地の商工会、商工会議所等と連携して行う地域産業の活性化や観光ルート開発など地域の経済活性化に向けた取組を支援した(地域力活用新事業創出支援事業)。さらに、新型コロナウイルスによる影響や働き方改革等の制度改正による諸課題に対し、小規模事業者が円滑に対応できるよう全国の商工会・商工会議所等が窓口相談や専門家派遣を行った(専門家派遣等事業)。
2.各種展示会や商談会等による販路開拓支援【財政投融資】
中小企業・小規模事業者が農商工連携や地域資源活用等により開発した商品・サービス等について、中小企業基盤整備機構を通じて、展示会や商談会等の開催を行い、販路開拓・拡大を支援した。
3.販路開拓コーディネート事業【財政投融資】
中小企業基盤整備機構に商社・メーカー等出身の販路開拓の専門家(販路開拓コーディネーター)を配置し、中小企業者等が新商品・新技術・新サービスについて、首都圏・近畿圏におけるテストマーケティング活動の実践を通じ、新たな市場への手掛かりをつかむとともに、販路開拓の力をつけることを支援した。
4.新事業創出支援事業【財政投融資】
中小企業基盤整備機構の全国10支部・事務所にマーケティング等に精通した専門家を配置し、中小企業等経営強化法、中小企業地域産業資源活用促進法、農商工等連携促進法に基づく事業計画の策定により、新事業に取り組む中小企業等に対して一貫してきめ細かな支援を行った。
5.J-GoodTech【財政投融資】
中小機構を通じて、ニッチトップやオンリーワンなどの優れた技術・製品を有する日本の中小企業の情報をウェブサイトに掲載し、国内大手メーカーや海外企業につなぐことで、中小企業の国内外販路開拓を支援した。
6.地方公共団体による小規模事業者支援推進事業【R2年度当初予算:12.0億円】
ビジネスプランに基づいた経営を推進していくため、地方公共団体が、小規模事業者の経営計画作成や販路開拓等を支援する場合に、国がその支援施策の実行に係る経費の一部を支援(交付決定数:33件)した。
7.小規模事業者持続的発展支援事業【R1年度補正予算:3,600億円の内数】
小規模事業者持続化補助金において、事業者が、商工会・商工会議所と一体となって経営計画を作成し、販路開拓に取り組む費用を支援(2021年1月時点の採択数:26,826件)した。また、共同・協業販路開拓支援補助金において、地域経済を支える小規模事業者等が互いに足りない経営資源を補いながら商品やサービスを展開していく取組を支援(2021年1月時点の採択数:137件)した。
第4節 海外展開支援
1.海外展開・事業再編資金【財政投融資】
日本政策金融公庫(中小企業事業、国民生活事業)を通じて、経済の構造的変化に適応するために海外展開又は海外展開事業の再編を行うことが経営上必要な中小企業、若しくは海外展開事業の業況悪化等により、本邦内における事業活動が影響を受けている中小企業の資金繰りを支援するための融資に加え、中小企業の海外子会社に対する直接融資の特例(クロスボーダーローン)を新設し、必要な融資を実施した。
2.(再掲)JAPANブランド育成支援等事業【R2年度当初予算:10.0億円/R2年度1次補正予算:15.0億円】
3.中小企業海外ビジネス人材育成支援事業(中小企業・小規模事業者人材対策事業)【R2年度当初予算:11.7億円】
中小企業の海外ビジネス担当者を対象に、海外の市場情報や制度情報の集め方、海外バイヤーとのコミュニケーション方法などの学習に加え、演習・グループワークをふんだんに織り交ぜ、海外ビジネス戦略の策定方法や、効果的な商談ツールの作成方法を指導した。さらに、海外駐在員や現地専門家による情報提供やアドバイスを実施し、最新の現地市場ニーズに基づいて戦略や商談ツールをブラッシュアップする機会を提供した。また、参加者と参加者の上長による事前評価と事後評価を行い、事業成果を測定・把握するとともに、参加者がプログラムへの参加報告を発表する場を設けて、他の中小企業の参考とした。
4.技術協力活用型・新興国市場開拓事業【R2年度当初予算:42.7億円の内数】
我が国企業の新興国市場獲得支援のため、以下の事業を実施した。
〔1〕経営・製造・オペレーション等に従事する開発途上国の管理者・技術者等に対し、日本への受入研修、専門家派遣による指導等を支援。令和2年度は76名の受入研修及び5名の専門家派遣を実施した(令和2年度12月末現在)。
〔2〕日本企業が高度外国人材の活用を進めることを通じて競争力を高める機会を提供するべく、日本企業による海外学生等を対象としたインターンシッププログラムを実施。
〔3〕中堅・中小企業が新興国の企業・大学等と共同で進める現地の社会課題の解決のための製品・サービスの開発や現地事業創出支援等への補助を実施。令和2年度は16案件の補助を行った。
5.中小企業の貿易保険利用における企業信用調査料の減免措置
中小企業の貿易保険を活用した輸出支援のため、貿易保険を利用する際の格付付与に必要な取引先の信用情報の提供について、日本貿易保険(NEXI)が代わって信用情報を取得し、その費用を負担する措置を引き続き講じた。2008年より3件としていた無料での信用調査を2015年度から8件に拡大。
6.中小企業による貿易保険の利用促進のための普及・広報活動(セミナー・相談会等)
中小企業による貿易保険の利用を促進するため、中小企業向けのホームページを刷新。日本政策金融公庫やJETRO等が全国で主催するセミナーや提携地方銀行等の行員勉強会等にNEXIから講師を派遣し、貿易保険の普及啓発を行った。説明会等では、中小企業向け商品である中小企業・農林水産業輸出代金保険を中心に、わかりやすい紹介動画や漫画冊子を活用し、貿易保険の一層の理解と普及に努めた。
7.貿易保険へのアクセス改善
中小企業の海外展開を支援するため、NEXIは、2011年12月に地方銀行11行との提携による「中小企業海外事業支援ネットワーク」を発足した。提携機関は年々拡大し、また、2016年には信用金庫とも提携を行うことで信金ネットワークを構築。現在では、全国111金融機関によるネットワークを構築している(2021年2月現在)。
8.民間損保企業との協業による海外投資保険の提供(NEXI再保険スキーム)
中堅・中小企業の海外展開を支援するため、貿易保険法の施行令を2019年7月に改正し、NEXIが、民間損保企業から海外投資保険の再保険を引き受けることを可能とした。大手損保企業を中心に、同年8月以降、全国の損保代理店を通じ、海外投資保険を提供開始。
9.安全保障貿易管理の支援【R2年度当初予算:16.0億円の内数】
外国為替及び外国貿易法に基づく安全保障貿易管理の実効性を向上させるため、企業の大多数を占める中小企業を対象に輸出管理の知識普及・啓発及び管理体制構築を支援した。
商工会議所や業界団体等と連携し、中小企業等を対象とした安全保障貿易管理に係る説明会及び相談会を開催した。機微技術や貨物を保有する中小企業等を調査し輸出管理体制の構築を促すとともに、輸出管理体制構築を検討する中小企業等に対して専門家による相談対応や派遣を通じて輸出管理体制の構築を支援した。
また、日本商工会議所及び商工会議所と連携し、東京・名古屋・大阪の各商工会議所に輸出管理の専門相談窓口を配置した。
(実績)
- 2021年1月までに、Web会議システムによる説明会を38回開催した。
- 2021年1月までに、個別相談会を55社に対し実施した。
- 2021年1月までに、専門家による輸出管理体制構築支援を前年度からの継続も含め66社に対し実施した。
10.新輸出大国コンソーシアム【R2年度当初予算:253.9億円の内数】
JETRO、中小企業基盤整備機構、商工会議所、商工会、金融機関等の支援機関を結集するとともに、幅広い分野における267 名の専門家を確保(2021年1月25日時点)し、海外展開を図る中堅・中小企業に対して、事業計画の策定から販路開拓、現地での商談サポートに至るまで、総合的な支援をきめ細かに実施した。
11.越境EC等利活用促進事業【R2年度当初予算:253.9億円の内数】
海外の60以上の連携先がもつ主要EC サイトにJETRO が「ジャパンモール」を設置し、海外EC サイトにおける食品や日用品等の日本商品の販売支援を実施した。
12.中堅・中小企業輸出ビジネスモデル調査・実証事業【令和2年度当初予算:2.9億円】
中堅・中小企業の自律的な輸出拡大を目指し、輸出を支援する8事業者の新たなビジネスモデルの実証を支援した。
13.現地進出支援強化事業【R2年度当初予算:14.2億円】
情報提供、海外展示会や商談会等のオンライン化を図り販路拡大を支援、商談後のフォローアップ、現地進出後の事業安定・拡大支援(プラットフォーム事業)など、段階に応じた支援を提供し、海外進出、また発展させるまでを一貫して支援した。また、中小企業が多く進出している国の税制等について、セミナーや、各国税制等や税務に係る留意事項を記載したパンフレットの配布等により、海外展開を行う中小企業の税務に係る体制整備を支援した。
14.JICA海外協力隊(民間連携)(旧民間連携ボランティア制度)の活用及び帰国隊員とのマッチング【R2年度当初予算:1,511億円の内数】
国際協力機構(以下「JICA」という。)においては各企業のニーズに合わせ、社員をJICA海外協力隊として途上国に派遣する民間連携の制度を活用し、グローバル社会で活躍できる人材の育成に努めた。また、帰国したJICA海外協力隊の進路開拓支援の一環として、特定の途上国を熟知した人材(協力隊員)の採用を希望する企業の情報を帰国隊員に国際キャリア総合情報サイト(Partner)を通じて提供することや、これら企業と帰国隊員とが直接対話できる交流会や帰国報告会等をオンラインで開催した。
15.基礎調査、案件化調査、普及・実証・ビジネス化事業【R2年度当初予算:1,511億円の内数】
中小企業等が有する優れた技術や製品、アイデアを用いて、途上国が抱える課題の解決と企業の海外展開、ひいては各地の地域経済活性化も兼ねて実現することを目指すもの。
様々な事業ステージに対応する支援メニューとして、「基礎調査」、「案件化調査」及び「普及・実証・ビジネス化事業」を通じ、途上国の開発ニーズと中小企業の製品・技術のマッチングを支援した。
2020年度第2回公示から、提案企業と地域金融機関が連携して海外展開を検討・調査することで、途上国の課題を解決するSDGsビジネスの実現性を高めるとともに、地域活性化に一層資することを目的とする「地域金融機関連携案件」を募集した。
2020年度第2回公示において、感染症流行下での渡航制限を受け、海外での調査等実施を前提とする従来通りの「一般型」と、渡航を前提とせず、基本的に日本国内でのみ作業を行う「遠隔実施型」のどちらかを企業が選択できる方式を採用した。
16.中小企業等の海外展開支援(中小企業製品を活用した機材供与)【R2年度当初予算:1,632億円の内数】
途上国政府の要望や開発ニーズに基づき、日本の中小企業等の製品を供与することを通じ、その途上国の開発を支援するのみならず、中小企業等の製品に対する認知度の向上等を図るもの。