第2節 感染症流行による小規模事業者への影響
本節では、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が「令和2年度小規模事業者を取り巻く環境の変化と需要獲得に関する調査に係る委託事業」において実施した小規模事業者を対象としたアンケート調査2(以下、「事業者アンケート調査」)の結果を基に、小規模事業者への感染症流行による影響について、顧客属性別(BtoC型事業者3及びBtoB型事業者4)、業種別、地域別に分析を行う。
2 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「小規模事業者の環境変化への対応に関する調査」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が、2020年11~12月に商工会及び商工会議所の会員のうち、小規模事業者を対象に実施したWebアンケート調査(有効回答数:商工会の会員5,832者、商工会議所の会員307者)。
3 「事業者アンケート調査」において、主な販売先を「一般消費者(BtoC)」と回答した事業者を指す。
4 「事業者アンケート調査」において、主な販売先を「事業者(BtoB)」と回答した事業者を指す。
1.売上高への影響
〔1〕顧客属性別の影響
第2-1-5図は、顧客属性別に、2020年の年間の売上高を示したものである。BtoC型事業者の方が、前年と比べ「50以上75未満」又は「50未満」と回答している者の割合が高く、売上高が大きく落ち込んだ者が比較的多いことが分かる。

第2-1-6図は、BtoC型事業者の想定ターゲット別に、2020年の年間の売上高を示したものである。これを見ると、想定ターゲットが「主に観光客向け」の者は、前年と比べて「50以上75未満」又は「50未満」と回答している者の割合が高いことが分かる。

第2-1-7図は、顧客属性別に、2020年1月から10月のうち最も売上高が減少した月を示したものである。これを見ると、BtoC型事業者では緊急事態宣言が発令された4月、5月と回答する者の割合が6割超である一方、BtoB型事業者は7月以降と回答する者の割合が約3割と最も高く、影響に差が見られる。

〔2〕業種別の影響
第2-1-8図は、業種別に、2020年の年間の売上高を示したものである。これを見ると、宿泊業や飲食サービス業は、前年と比べて「50以上75未満」又は「50未満」と回答している者の割合が高く、売上高が大きく落ち込んだ者が比較的多いことが分かる。

2020年の年間の売上高を、小売業について更に細かく分類して示したものが第2-1-9図である。これを見ると、織物・衣類・身の回り品小売業は、前年同期と比べ「50以上75未満」又は「50未満」と回答している者の割合が高く、売上高が大きく落ち込んだ者が比較的多いことが分かる。

第2-1-10図は、業種別に、最も売上高が減少した月を示したものである。これを見ると、宿泊業や飲食サービス業では緊急事態宣言が発令された4月、5月と回答する者の割合が7割超である一方、製造業や建設業では7月以降と回答する者の割合が3割超と、最も高いことが分かる。

〔3〕地域別の影響
第2-1-11図は、三大都市圏と地方圏別に、2020年の年間の売上高を示したものである。これを見ると、両地域の間での差は余り見られない。

第2-1-12図は、三大都市圏と地方圏別に最も売上高が減少した月を示したものである。これを見ると、両地域の間での差は余り見られない。

2.感染症流行前の水準に戻る時期
〔1〕顧客属性別
第2-1-13図は、顧客属性別に、売上高が感染症流行前の水準に戻ると思う時期について聞いたものである。これを見ると、BtoC型事業者の方が、「既に戻っている」と回答する者の割合は低く、「戻ることはない」と回答する者の割合が高いことが分かる。

〔2〕業種別
第2-1-14図は、業種別に、売上高が感染症流行前の水準に戻ると思う時期について聞いたものである。これを見ると、小売業や宿泊業、飲食サービス業は他の業種と比較して、感染症流行前の水準に戻るまで長期を要すると考えている者の割合が高いことが分かる。

〔3〕地域別
第2-1-15図は、三大都市圏と地方圏別に、売上高が感染症流行前の水準に戻ると思う時期について聞いたものである。これを見ると、両地域の間での差は余り見られない。

3.感染症流行による廃業に対する意識・検討状況
ここでは、感染症流行の影響を踏まえ、小規模事業者の廃業に対する意識・検討状況について確認する。
第2-1-16図は、経営者年齢別に、感染症流行後の廃業に対する意識・検討状況を示したものである。これを見ると、経営者の年齢層が高いほど、廃業を意識した者の割合が比較的高いが、いずれの年齢層においても「廃業は意識しなかった」と回答している者が大半であることが分かる。

第2-1-17図は、顧客属性別に、感染症流行後の廃業への意識・検討の状況を示したものである。BtoC型事業者の方が、廃業を意識した者の割合が高いことが分かる。

第2-1-18図は、業種別に、感染症流行後の廃業への意識・検討の状況を示したものである。売上高が大きく落ち込んだ者の割合が高い宿泊業、飲食サービス業において、廃業を意識した者の割合が高いことが分かる。

第2-1-19図は、顧客属性別に、感染症流行後に廃業を意識・検討したが、廃業を思いとどまった理由を聞いたものである。これを見ると、持続化給付金や実質無利子無担保融資などの施策によって廃業を思いとどまった者が一定程度存在することがわかる。
また、上記以外の理由を顧客属性別に見ると、BtoC型、BtoB型事業者ともに、「自身の生計を維持するため」と回答する者の割合が最も高い。BtoC型事業者では、「自身の生きがいを失ってしまうため」と回答する者が次いで多いが、BtoB型事業者では「取引先企業や利用客に迷惑をかけてしまうため」や「役員や従業員の生計を維持するため」が多く、顧客属性により異なる傾向が見られた。
